平成10年の12月中旬、オリンピアの「ビーナスライン」を巡る大騒動が起きました。

この機種はビッグ確率が195分の1~256分の1という、ごくありふれたスペックの7ライン機だったのですが、普通ではなかったのが通常時&ビッグ中の小役確率。通常時は常にDDT打法を駆使して全ての小役を揃え、ビッグ中に正しい手順でリプレイハズシを実践するだけで、メーカー発表値の機械割に対して20~50%も出玉率が跳ね上がりました。フル攻略時における設定1の機械割は、驚くことに128.4%。これはもう、「設定1でも負けない」といったレベルではなく、「いついかなる場合でも大勝ちが約束される」という驚異的なものだったのです。

果たしてこれは単純な設計ミスだったのか、それとも開発者がプレイヤーの技量を見誤ったのか…今となっては真相は闇の中ですが、設置店では新装直後からお祭りになりました。

 

まず最初に気づいたのはプロ連中。彼らは「順押しでは全ての小役を引き込めない」ことを知り、逆押し小役狙い手順を編み出しました。そして、それを見た一般客が見よう見まねで逆押しを始め、手順は瞬く間に広がっていったのです。また、ビッグ中のリプレイハズシに関しても、その効果はとんでもなく高かった。この当時、7ライン機はハズシ効果がない機種が普通でしたが、ビーナスラインの場合には設定1の平均獲得枚数が427.6枚にもなったのです(理論値)。

結果、ホールは深刻なダメージを受けました。何しろ、10台設置していれば、オール設定1で動かしても1日平均で100万円に近い赤字が出てしまいます(等価交換の場合)。変則打ちを禁止すれば攻略法の効果をある程度まで封じることも出来ましたが、オール順押しで消化したとしても設定1の機械割が113.2%(理論値)となってしまい、店側としては完全にお手上げ状態。最終的に、台の電源を落として「シマ封鎖」をする以外に道はなかったのです。

 

ほぼ全てのホールからビーナスラインがハズされたのが、平成11年の1月中旬。デビューからわずか1ヶ月で「失敗作」のレッテルを貼られ、美の女神様は歴史の闇に静かに消えて行きました。

この間、本気でぶっこ抜きにかかったプロは一財産を築いたようですが、各地の設置店ではいろんなトラブルが多発したようです。たとえば、朝イチの台取りで客どうしの喧嘩になり、警察を呼ばざるを得なくなったとか、徒党を組んだプロが数に物を言わせて逆押し禁止の店で逆押しをして、それを注意した店員さんを店の外に引きずり出してボコったとか…。特に等価交換の店では収支が半端じゃないですから、トラブルが日常茶飯事でした。

 

でまぁ、私はそういうのに巻き込まれたくなかったので、コワモテのプロが見向きもしない7枚交換のホールで何日か打ったのですが、それでも結構なプラスになりました。

ただ、決して「お金が目当てで打った」のではありません。いや、確かにお金は好きですよ。だけど私が惚れ込んだのはビーナスラインのゲーム性。攻略効果の影に隠れてほとんど語られることはありませんが、ビーナスの出目演出&チャンスナビは絶品でした。レバーを叩いた瞬間にトップパネルが消灯すればナビ発動の合図で、後はランプの点灯or点滅パターンによってリプレイ・プラム・5枚役を示唆し、対応役がハズれればボーナス確定…と、ただそれだけの演出ですが、当時はそうしたチャンスナビを搭載した機種が存在しておらず、ある意味でビーナスのチャンスナビは「演出の革命」だったんです。

そして、このゲーム性が埋もれるのは惜しいと思っていたところ、平成11年の春先になって通常時とビッグ中の小役確率&リール制御を変更した対策機「ビーナスセブン」がリリースされました。もちろん、ゲーム性に惚れた私は喜んで打ちまくったのですが、攻略効果が大幅にダウンした二代目・女神様は一般プレイヤーに受け入れられませんでした。そして、最期は闇の商人に「元気の出るエキス」を注入され(代償に攻略効果を全カット)、局地的に爆裂化…。

うーん、勿体ない。最初からこの仕様でリリースしていれば、名機として歴史に名を残したかも知れないのになぁ…。

 

平成11年のトータル

  1月    +446,500円

  2月  +224,500円

  3月   -103,500円

  4月  +453,200円

  5月   -141,200円

  6月  +588,000円

  7月    +20,500円

  8月       -60,500円

  9月    +187,000円

10月       -16,500円

11月   -130,000円

12月  +251,500円

合計 プラス 1,719,500円

 

この年の私のメイン機種は以下の通りです。

カゲツ(山佐)、スノーキー(平和)、アレックス(アルゼ)、アステカ(エレクトロコインジャパン)、ビーナス7(オリンピア)、ダイナマイト(IGT)、バイオメサイア(アルゼ)、フライングアイズVCT(ネット)、ワードオブライツ(瑞穂製作所)、シーマスター(山佐)、ゴング7A(ネット)、大花火(アルゼ)、バンバン(大都技研)。

私が特に打ち込んだのは、ダイナマイト・ゴング7A・バンバンの3機種ですかね。ダイナマイトはお馴染みの「中押しババメ」が激アツの機種(ボーナスorチェリー)、ゴングは私が最も好きな大量獲得タイプ、バンバンは史上初の「シフト持ち越し機能」の搭載機。どれも出目演出が素晴らしく、技術介入機でもあったので収支的に大変お世話になりました。

いやはや、本当に「良き時代」でした。