けして、春の陽気に浮かれていたわけでもなく、桜の木の下で痛飲していたわけでもなく。

ほんま、すみません。更新が2日も遅れてしまいまして。
言い訳は、しません。ただ単に、忙ーっとしてただけです。ほんとに、申し訳ありません。

そんなわけで、さっそく本題に入りましょう。
前回は、換…じゃなくて交換所に関する「ところ変われば」話をしたわけですが、今回も交換所に関する、昔の苦い思い出を。

時代はちょっぴり進んで、1991年初旬。中東で戦争が起こるのと時を同じくして私は、生まれ育った関西を離れて東京に移住をしました。

住んだのは、沢庵色の電車の沿線。ま、具体的に言うと、西武池袋線なんですけどね。練馬区の桜台という、ちっぽけな駅から徒歩3分のアパートです。ロフト付きの、最近まぁまぁ世間を騒がせているなんちゃらパレスでした。

余談はさておき。パチンコもパチスロも、「連チャンしてなんぼや!!」な、イケイケドンドンな時代だったんですが、近所のしょぼくれた2軒の店には、パチンコの連チャン機はあってもパチスロの連チャン機はありませんでした。なのでよく、当時のパチスロ必勝ガイドの誌面を賑わせていたイキのいいパチスロを打ちに、隣の練馬駅や江古田駅まで歩いて行ってました。

でも、やっぱ近場の店は、色んな意味でパンチが足りない。…というわけで、電車に乗ってターミナルである大繁華街の池袋へ足を運ぶことも多々でした。

そんなある日のこと、西口ロマンス通りを奥に進んだ角の店に行った時のことです。
…ええ、そうです。田山さんがネグラにしていた聖地・S会館です。

練馬に移住する前から、東京に来た時には必勝ガイドのお膝元である高田馬場のT会館とともに、ちょいちょいS会館には足を運んでいました。地下フロアで「じっ」と玉を追いながらハンドルを握る田山さんの姿はあまりにも神々しくて、一度も声をかけることはできなかったんですけど、その日もシマの端からそっと田山さんの横顔を確認し、私は1階のパチスロコーナーに戻りました。

何機種かあったと思うんですが、リバティベルIVに座りました。「5G間隔で連チャンする」と誌面を賑わしていたマシンで、在阪時代にもよく打ちました。東京に移住した頃にはもう、ほとんどが後継のコンチネンタルに入れ替わっていたので、「久々に、あの連チャンを」と思ったわけです。

ところが。S会館のベルIVは、期待を見事に裏切ってくれました。時に早いゲーム数で連チャンすることもありましたが、規則性はなく、たぶんノーマルだったのでしょう。

期待は裏切られましたが、安くで食い付き、さくさくと出て夕方には大きなドル箱(パチンコでいう4千発箱)が山盛りになりました。

「そろそろ、田山さんは仕事を終えて呑みに行く頃かな。ひと仕事を終えて『ほっ』とついた頃なら、声をかけてもいいかな」

そう思い地下に降りると、すでに田山さんの姿はありませんでした。

必勝ガイドの日記をあれこれと思い出しながら、大量のパイプだかボールペンだかを両手に抱え、裏口を出ました。

当時のS会館の交換所は、絵に描いたような路地裏のいかがわしい雑居ビルの2階だか3階にありました。

1階は、確か大人玩具店だったかな。とにかくビル全体が、池袋西口のいかがわしさをぎゅっと濃縮した感じで、色んな意味で興奮することしきりでした。

でも、この日は残念ながら、ビルの階段を上ることは、ありませんでした。

「お兄さん、出たねーっ」

ネズミ色のジャンパーを羽織ったおっちゃんが、ニコニコしながら話しかけてきました。まぁ、こういうロケーションで笑顔で近付いてくる人はたいてい偽善者であることは、関西にいた頃にいやというほど知らしめられたで、とっさに景品を両手で「ぎゅっ」と抱え込んだんですけどね。

そしたら、そのおっちゃんは、こう続けました。

「違うよ、違う。えと…さ。ここの者なんだけど、上が今日、ちょっとアレでさ。もう1軒の買場を、みんなに案内してんだよ」

階段の方に目をやると、数段上に人が並んでるのが見えました。みんな、なんだか怪訝そうな顔をしてました。

「ひょっとしたら、上の方にあるいかがわしい店で、なんかあったのかな」

早いところ換…じゃなくて交換して、なんか美味しいものでも食べて帰ろうと焦っていた私は、ほいほいとおっちゃんについて行きました。

3分ほど歩くと、わりかし人通りの激しい通りに面したビルの前で、おっちゃんは立ち止まりました。

人通りの多いところだったから安心したのが、そもそもの間違いでした。

「ここの2階だから」

いわれるがままに2階に上がり、両手に抱えていた景品を、窓口のカゴに「どさっ」と入れました。窓を隔てた向こう側には、仏頂面をした小太りのおばさん。面倒臭そうに大量の景品を数え、面倒臭そうに引き出しを開け、面倒臭そうに「対価」を数え、ぞんざいにそれをカゴに入れ、こちらに戻しました。

渡された「対価」がパッと見、「だいたい、これくらいはあるだろう」なボリュームだったので、「ぎゅっ」と握りしめて階段をいそいそと降りていったんですが。

その場で、ちゃんと確かめておくべきでしたね。

「…えっ、少なっ!?」

確か、S会館は7枚交換。なのに流した枚数を思い出しつつ勘定をすると、あろうことか9枚交換だったんです。

「…くそっ、ハメやがったな。おっさん、シバいたる。マジで、シバいたる!!」

ネズミ色のナビゲータの姿は当然のことながらそこにはなく、私はただただ、雑踏の中で千円札多めの束と拳を、渾身の力で握りしめるほかなかったのです。

だいたい、私と同年代の人たちと話すと、この手のハメられた話が、そこかしこから出てきて、面白いですね。

そんな感じで、今回はこのへんで。

来月は、忘ーっとしないよう気をつけますね。

では…再見!!