二人目の話です。この人もパチプロで、パチンコの腕は自分とどっこいどっこいだったと思う。
自分はメディアの仕事をしていたので、自然とパチンコ以外の世界を知り、金銭感覚も世間のそれに近い物を身につけていたのが違いか。

対して、彼は甘えん坊で刹那的過ぎた。「タネ銭は残しておいた方がいいよ」とは、その前後から多くの打ち手に言ってきたものだが、根本が違う人もいるとわかったのも、彼との一件があったからだ。

パチンコにはプライドを持っていた。自分と同じく不正の類いは一切やらなかったし。
ただ、波の荒い機種の普及で収支を数カ月単位で見る時代が来たのが、彼の不幸だったんだと思う。
それまで「銀行はお金を預けに行くところだ」と嘯いていた自分ですら、三日で18万負けてATMに行き、唇を噛み締めながらお金を下ろすことがあったから。

最初は20万と稼ぎの紹介、次も20万を貸した。それは前回のジグマ氏より濃い関係だったのもあるし、彼が弱さを晒け出す前で、非情になれなかった自分の性分もあったろう。

でも、よかれと思ってしたことが、かえって悪い結果を招くのはありがちなこと。
彼は立ち直るきっかけを見いだせず、それまでは身の上と打開策を語っていたのに、三度目は直球で「貸してください」だったもの。

ある程度の年齢の方は、似たような経験をした人は多いだろう。
・友人を見捨てる感情と戦う
・自分のしたことが無為どころか真逆の結果になったことへの、何とも言えぬ自責の念
ガキの頃に母に「金の貸し借りだけはするな」と厳しく言われたことまで頭の中をグルグルと駆け抜けたのは、今だから書ける話だ。

断腸の思いで無心を断り、恨み言を受け止めて、その時は終わった。
後年、別の友人と彼の債務を何とかするために動くことになったのだが、その最中にも「俺が最初に貸したせいなのか」との自問は続いたのでした。

環境もあるだろうけど、多くは心が弱いからパチンコへ流される。でも、弱いだけでは自分の足で立ち続けるのは難しい。
以前にコラムにした迷いや自問での精神の不安定もある。
パチプロとはなんと危ういバランスの上を綱渡りしている状態か…。