「今日、ドラゴンボールNM16が出る日だな」 今年40歳になる広仲蓮は、2048年5月のカレンダーを眺めながら呟いた。

既に各家電メーカー大手が参入し、収拾が付かなくなった後、国の管理下となったパチンコ業界。街角のパチ屋は既に無くなり、パチンコはゲーム感覚で家でするものとなっていた。

個人で専用のパチンコモニターCRSを購入。父親専用機に次いで2台目である。専用ヘッドホンが別売りというのが嫌らしいし、1台40万、値引き一切なしとはさすが国営である。

目に負担がほとんどかからない光質の、セイバースクリーンに映し出される映像内のパチンコ玉は本物かと見間違えるほど。手認証機能のあるハンドルを操作して発射されるAI搭載の玉の跳ね方に違和感は全くない。

サブスクリーンで、本日発売されたNEC製ドラゴンボールNM16の仕様を確認、デモ操作を行って購入することに。新作発売は金曜であり、基本金土日休みのサラリーマンには支持を得た。

購入を選ぶと、自動インストール。購入費用は25%の消費税別1万円とは、さすが国営である。

ドラゴンボールNM16はシリーズ16作目、羽根物とセブンの複合機。スクリーンに映し出される盤面のあちこちに可動役物があり、左、中、右いずれかの飛び込みに入れば羽根が開放。羽根に拾われた玉が迷路を通過し、Vに到達すればバトル開始。

バトルトータル勝利確率10%。悟空の相手がフリーザならアツい。ピッコロなら期待薄だが、なんか逆だろ、いつも思ってしまう。

遊技可能時間は9時~22時。広仲蓮はその日の遊戯中に、5つの可動役物に1~5のNOを付け、2と4が交差した後5が左から右に戻ろうとした時に落ちてきた玉が右飛び込みに入りやすいことを把握。2回開放の2回目の方がVに到達しやすい特徴も考慮してテクニックを磨いた。

まあ、ココまでしても貸し玉1個1円に25%の消費税がかかっている上、交換時にもかかる。また、同機種差玉で累計10万発に達すると使用できなくなるとは、さすが国営である。

既に換金制度は消えてなくなっており、スクリーンカタログによる景品交換制。新作機ソフトの購入に充てることはできた。

そして、遊戯5日目には1日差玉で1万発に達した。全国順位で3785人中68位、上出来だった。

この全国順位から得られるPポイントはP選手権の参加資格に反映。P選手権とは、資格が与えられたポイント上位者らがまず地方大会に参加。そこでの上位者が、晴れてTV中継もされる全国大会に繋がるのである。ちなみに、年1回行われる全国大会の優勝賞金は1千万である。

今回のPポイントの加算320Pにより、次回の地方大会(鳥取大会)の参加資格獲得が確実になった。

そして迎えた鳥取大会。当日発表される機種は2つ、各3時間計6時間の差玉勝負。参加者43名。

過去の傾向により1番人気のシーマスターファインN505が選ばれることが多く、このシーマスターは本物の魚にしか見えない魚群がアツい、運の要素が比較的高く自分は打たない機種だったが、やはり最初はこれ、オリジナルストロークでなんとか凌いだ。

次にに選ばれたのが、得意機種の清宮ジャパン4TSだったのはラッキーだった。この機種は、発射された玉が1塁2塁3塁の落とし穴をかいくぐり、最後のホームベースに到達すれば権利獲得というシンプルなもの。可動役物の変則的な動きで3塁の所ではかなりのイレギュラーを必要としたが、打ち込んだことで打ち出しタイミングには慣れていた。

結果、トータル2位で個人初の予選通過を果たすことができた。賞金10万ゲットできたのも嬉しかった。

1か月後に行われる全国大会には、東京大会で1位通過を決めたFが出場することが話題になっていた。モデルでもあり過去に優勝経験もあるFは、スポンサーも付き、そのしなやかなハンドルさばきはTVで紹介もされていた。

しかし、なりたい職業の1位がプロゲーマーの時代、国営のパチンコ専用スクリーンの世界より、世界のゲーマーを相手にするXゲームに人気が出るのは当たり前。とうに消えてなくなったカジノ同様、パチンコ文化なんて風前の灯に感じていた。

 

■じゃじゃ流パチンコ川柳

「国営化 パチンコ文化が 終わる時」