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パチプロ、スロプロ。

そんな言葉の定義などありはしないのだけれど、今から10年くらい前は、パチンコを打つ人はパチンコだけ。パチスロを打つ人はパチスロだけ。そんな空気感が少なからず残っていた時代だと思います。

そういう意味では、自分は元々パチンコではなくパチスロ。一番最初はパチンコから入った口ですが、〇校生の頃は右も左も分からずギャンブルを楽しんでいただけ。ちょっとだけボーダー理論は理解していたものの、期待収支とか仕事量なんてのも分かっていない時期でした。

そこから、少しづつ詳しくなっていき、勝つ事を真剣に追い求め始めたパチスロで、期待収支の意味を学んでいきます。

ただ、当初はVol.1でも書いた通り、時代に恵まれて食えていた時期があっただけのなんちゃって。それでも、無意味な自信みたいなものはあったものですから、サラリーマン→スロプーへと舞い戻ってしまったわけです。

新鬼武者

そんな2010年の頃、エウレカや緑ドン万里などでARTのセット数が続くシシテムに「ゲーム数上乗せ」の気持ち良さを取り入れヒットを飛ばしたのがこちらの新・鬼武者。

前身機は4号機の大量獲得機。5号機でも再臨、3と後継機が出ましたが、鬼武者と言えばコレ、という方も多いのではないでしょうか。

全面液晶という派手さ、ART中の紫ガッチャ、そして

蒼剣RUSH中に100G以上の上乗せで発生する浜崎あゆみのstartin`。あの浜崎あゆみがパチスロの曲に使われるなんてねぇ、という驚きもありました。初代吉宗に「あまさきまゆみ」なんてソックリさんがいましたが、まさか本物が降臨するとは。

ノリノリになれるサウンドとゲーム性も非常にマッチしていて、純増1.4枚とは思えない荒波が人気を博しました。

同じく2010年には

新鬼武者の流れを組んだボーナス+ART+G数上乗せというシステムの台が次々登場していきます。

そして、この頃から再び5号機でも「1万枚」という単語が飛び交うようになりました。

勿論、鬼武者以前にも初代リングにかけろやガッチャマン、緑ドン万里など、運が良ければ万枚に届く高スペック5号機もありましたが、それらはあくまで高設定を掴んでの話。

新鬼武者の大きな違いは「低設定でも1万枚出ちゃう時がある」という点で、何せART継続率、上乗せ当選率、上乗せゲーム数、ボーナス、といった出玉に直結する部分にそれほど設定差が無く、一度ARTに入れてしまえば……という期待感はこれまでにないものでした。

そして、5号機時代に、新鬼武者が切り開いた荒波化、今風に言えば高射幸性化は、ここからどんどん加速していきます。

しかし、一撃性があれば、当然それに見合うリスクもある。翌年登場する番長2もそうでしたが、設定もクソもなく開始2時間で4万がスコーンと溶ける、なんて事がまぁまぁの頻度でありました。

勿論、そういった話は4号機時代はいくらでもありました。ただ決定的に違うのがそこから取り戻すまでにかかる時間。

スロプー的にも非常に厄介な台で、ARTが時間を無駄に食うわ、天井が強いだけに一定ライン超えたら当たるまでは打たなきゃならないわ……そうしてヤメ時に縛られる時間が伸びた結果、移動できるタイミングには二の矢が消えて手詰まりに、なんて事も。

この辺りは勿論、ボクの読みの甘さという点も多々ありますが、設定不問の爆裂性というのは、スロプーには足かせでしかなかったんですね。

また、119%はともかくとして110%ちょいのミドルスペック5号機の場合、設定差が無いところでヒキ負けして「設定6でも負ける」というのは正直シンドイもんです。かなり安定型と言われていたギラギラ爺サマーの設定6でも負けた事があります。

そもそも万枚出たところで、それがどうしたって話で、そうやってヒキ勝ちしたら結局ヒキ負けして均されるって考えるのがスロプーの思考。「一撃万枚」なんて全く魅力を感じないし、そんな事よりも「リスクは4号機並、リターンは所詮5号機」という点について

「こんなのあんまお金持ってない学生さんとか、時間が限られるサラリーマン層がついていけるわけないって……」

と常に思っていました。結果はご覧の通り。

出典:日本遊技関連事業協会、レジャー白書2017

新鬼武者が登場した2010年(平成22年)から翌年にかけて、遊技人口が大幅に減少しています。一方、遊技回数は増えている。つまり、ライト層がいなくなり、パチンコ・パチスロがヘビーユーザーだけの世界へなっていった転換点である事を明確に示しています。

翌年2011年は、あの忌まわしき東日本大震災があった年ですから、人口減少の要因を一概に語る事はできません。しかし、ハイリスク・ローリターンと揶揄された爆裂ART機に対して聞かれた

「こんなのやってらんねぇよ」

という声は、現場で実際に身銭を切っていた人間として頷ける話であり、ライトユーザーが辞めていくキッカケの一つであった事は間違いないと確信しています。

鬼武者のゲーム性の完成度は素直に賞賛したい一方で、業界視点では功罪の「罪」の方が大きい台だと思っています。

ひぐらしのなく頃に祭

そんな爆裂ART機全盛となっていく中、ひっそりと登場したのが「ひぐらしのなく頃に祭」。大元は同人ゲーム。そこからラノベ、漫画、実写映画へと展開していった……と書くと大ヒットコンテンツのようにも思えますが、ヲタの中でも相当ディープな世界でメディア展開していたにすぎません。

なにせこの原作、かなりホラータッチなミステリーと思いきや、ラストで一転、B級感丸出しの青春ズッコケドラマになるという、「うん、そらマイナーの域出ないわなw」という版権です。

それを知るキッカケはパチスロが最初で、まず演出面で度肝を抜かれました。

・レインボーが外れる

・セリフ演出がいきなり途切れる

・セリフ演出を見ていても全く原作イメージが湧かない。

・液晶でボーナス察知が当然になっていた時代に、ボーナス告知までがやたら長い

・萌えっぽい絵面なのに全く萌え感がない

・従来のお約束的な小役ナビの使い方を完全に無視した法則性

という完全な珍台でした。

しかし、RT分岐のビタ押しは勿論、通常時から液晶が動いてようが動いてまいが無関係に要求される目押しのハードさは、多くの硬派系スロッターを魅了したと思います。

4号機でもここまで面倒くさいのは中々無かった。だがそれがいい。

ペイアウトの低さや消化の面倒さ、何よりしばらくの間ビタ押しどころか目押しすらいらないなんて台が増えていた中、打ち手を選ぶと言う点で見向きもしなかったスロプロも多かったと思いますが、ボクにとっては癒し的存在でした。

大して増えもしないRTを「you」を聴きながら消化する時間がホント大好きでした。連チャンしてせいぜい1000枚。「パチスロなんてそんな程度でいいんだって」と心の中で思いつつ。

 

ひぐらしは設定推測要素も地味に充実していて、抽選負けしてハイスペに座れない時に打ちたい候補一番手でしたね。

設定の偶奇はかなり早い段階で分かる。そして、上か下かもハッキリする。爆裂性なんてハナからいらない、という人間ですから、ひぐらしが出た頃には

「メインとは言わないまでもこういう台が増えてくれ!!」

と心から思ったものです。

結果は残念ながらお察しの通りですが。

スマホアプリはまだないものの、カチカチ君が当たり前になりつつあった時代、エヴァ魂とともにひぐらしに逃げていたスロッターも多かったのではないでしょうか。

 

vol.3につづく