突然だが、ポチの口臭はドブのような匂いがする

いやマジで

幼少時、同居していた親族に「歯を磨け」と言われたことがなく、なおかつ周りの人間に口臭のきつい人間がいなかったので、歯磨きの必要性を実感できなかった

思春期くらいに覚えた歯磨きの文化も、やべーんだろな、と思いつつはじめたもので、夜の入浴中に「ついで」として済ます習慣を随分長いこと変えることが出来なかった

腋臭などについてもだが、こういうものは近しい人間の指摘が大変ありがたい

ただ、これらについて指摘すると、俗にいう『キレる』という感情表現をする御仁が少なくない

仮に午前中に感付いても指摘せずにいれば、相手は誰かに指摘されるまで一日中、事柄によってはもっと長い期間、会う人会う人に「うわ~…」と思われて過ごさねばならない

ならば指摘することは親切以外の何物でもないような気がするのだが、「それは失礼だからできない」という方が多いのが、どうにもこうにも理解できない

たしかに、分ったところで対処の仕様のない、または事情があって対処を遅らせている、とかであるならば「大きなお世話」になってしまうところが、この話の難しいところなのかもしれない

 

ある日のパチンコ店で、コーヒーを頼もうと、巡回しているスタッフさんを呼び止める

騒音のため、顔を近づけて

「アイスコーヒーをお願いします」

と注文すると

「はい、砂糖とガムシ…ロはいかが…ッング、グ、グルッポ」

と、その少し年齢のいったギャル風味のお姉さんをえづかせてしまった

ポチの口臭が、お姉さんの鼻先を強襲したのである

そして、翌日、以前書いたコラムのよっちゃん(齢70過ぎの親友)との病院デートでの会話中、昨日の娘さんのようによっちゃんも体をびくりと震わせる

そして「お、おにーちゃん、今日やべーな…」とうっぷうっぷ言いながら、指摘してくれたことにより、確信を得ることができたのだ

「まじか、ごめんごめん、あとでコンビニで口臭予防のなんか買ってくるよ!!」

自分の呼気で青黒くなっているよっちゃんを見て、おもわず笑ってしまっていたが、あの世に旅立ってしまいそうなよっちゃんを見て、さすがにまずいな、と必要性を実感できた

 

後日、歯医者に行き

「あの虫歯の治療もそうなのですが、わたくし口臭がヤバいそうなので、何か出来ることがあれば、おなしゃす!」

と治療を受け、自宅での手入れも以前に比べれば格段に時間をかけることができるようになってきた

よっちゃんの決死の指摘のおかげで、ポチと会話してグルッポする人間を軽減できたはずだが、もし指摘がなければ、無差別口臭テロリストとして、まだまだ、多数の方々にご迷惑をおかけしていたかもしれない

今後はポチも、相手に嫌われようと、勇気あるよっちゃんのように、指摘できる部分があれば指摘してあげよう、と心に決める

 

それから数日後、パチンコ店でちょいちょい仲良くしてもらっている店員さんが、呼び出しランプを消して箱を降ろす作業をしてくれている際、店員さんのぱくぱくするワキから、酸味の強い匂いが、ふっとポチの鼻についた瞬間、ブツりと意識が飛び、2秒いかない程度のブラックアウト体験をする

なるほどなるほど、ぽちが他人様に与えてきたのはこれかと、親近感を抱きつつ、さあと、よっちゃんを思い出しながら彼を呼び止める

「あ、〇〇くん、あのさ…」

「ん、なんすかポチさん??」

相変わらず愛嬌のある爽やかな笑顔だ

「んとね…、あ、あ~、…いや大丈夫みたい」

玉が詰まったけど、なおっちゃった系の身振りで苦笑いしてごまかす

なるほどなるほど、

無理、言えない

この手の指摘は相手のためになるのだから「失礼だから言えない」という人を理解できないと冒頭で非難しました

ごめんなさい、全面的にポチが間違っておりました

他人様のためどうこう言う暇があったら、少しでも自分の口臭がマシになるよう、努力いたします

さーせんした

 

余談

30年前から月に数度、遊びつづけている地元の友人にこの話をしたところ

「だから、前から言ってんじゃん。おたくの口臭本当にヤバいって。というか、友人知人はともかく、ぽちと付き合っていた女の人がよく我慢できたな、とつぐつぐおもうよ」

とのご感想

たしかに

以前ポチと縁のあった皆さま、齢40を過ぎて、やっと少しだけ自覚することができました

いまは、以前と比べ、いくらかはマシになっていると思います

たまに青い顔をしているあなたを、病弱なのかなと、心配しておりましたが、まさかわたくしの激しい口臭で臨死体験をしていたとは夢にも思いませんでした

本当に、お口臭くてすいませんでした

そして、そんな自分と遊んでくれてありがとうございました