まっきゃんさんからリクエストを頂いてしまったので、書かないわけにはいかなくなりました。

ワタクシ、NHKの大河ドラマのファンでして。昨年は別のサイトで「西郷どん」の感想を書いたのです。それをまっきゃんさんが読んでくださって、ハードルを上げられて……という流れです。昨年と同じところで書けよ? そちらは今書いていないものでして(汗)。先にお詫びしておきますが、今回パチスロの話はございません。

 

ちなみに、昨年はこのようなことを書いておりました。

西南戦争で大激戦だった田原坂が高速消化とかふざけんな。代わりにじっくり描かれた大久保利通の本妻と妾の争いなんて心底どうでもいい。はっ? 徳川慶喜がフランスに日本を渡そうとしたから倒幕だって? 史実を曲げて陥れるのはどうなの? 「八重の桜」では会津の主張を丁寧に描いていたから勝った側の主張も聞きたかったのに、会津戦争すら秒でスルーとは舐めとるのかっ。

思い出しただけでイライラしてきました。クソ台本でしたが、役者さんの演技は良かったですよ……というフォローも書いたか(笑)。昨年はこんな感じとなりましたが、よほどでなければディスりが勝ることはありません。ちなみに、ここ最近で好きな大河は「真田丸」「女城主直虎」「八重の桜」です。

史実と違うとか、厳密には気にしていません。より面白くするための改編はアリだと思っています。「真田丸」もラストは自刃となっていました。史実では討ち取られていますが、1年一緒に旅をした視聴者の気持ちを考えれば、あのラストであるべきだったでしょう。

 

ってね、こういった説明から書かねばならないので、長文必至なんですよ。まだ説明不足な気もしますが、文字量も気になってきたので「いだてん」を始めさせていただきます。30日には総集編も放送されます。それで初見となる方には、ネタバレとなってしまうことをご了承くださいませ。

 

 

 

===以下、ネタバレ注意===

 

 

 

○最低視聴率を更新した分かりにくい大河

大河ドラマ史上初めて平均視聴率が10%を割り込んだとニュースになっていましたが「分かりにくい」という論評が多かったように思えます。

前半は、日本初のオリンピック選手となった金栗四三が主人公。後半は、東京五輪招致に尽力した田畑政治が主人公。それを昭和39年の東京五輪を目前に控えている時期の視点で、落語家の古今亭志ん生が半生を振り返りながら語るというもの。一人の主人公の周りだけで時が進んで行く……○ボタンを押していればゴールに辿り着く一本道のRPGのような従来の大河とは一線を画しておりました。

特に金栗四三が幼少だった明治期は、故郷の熊本。東京でのスポーツ黎明期と、その頃の古今亭志ん生。さらに、戦後の志ん生の周りのシーン。入れ乱れる展開となって、どこがどこだか分からないとなってしまったのも確かでしょう。序盤だけに、俳優さんを見てすぐピンとくるような慣れもありませんでしたし。

そんな見せ方よりも分かりにくかったのは、物語の軸だったかもしれません。主人公の一生をともに旅する普通の大河ではありません。前半は金栗で後半は田畑の2人制。彼らや周辺の人物を通して見る“日本スポーツ近代化の流れ”がストーリーの中心なんです。そこに落語の“富久(とみきゅう)”が絡んでくるのですから、そりゃややこしくもなりますね。

 

全体のストーリー展開で重要な存在となっていたのが、架空のオリジナルキャラです。明治期の金栗パートでは、女がスポーツをやるなんて……と白い目で見られた前時代を生きたシマ。昭和の古今亭志ん生の落語パートは、父の形見の「志ん生の富久は絶品」と書かれた絵はがきを持って弟子入りしてきた五りんと彼女の知恵でした。

ノンフィクションの中にわざわざフィクションで作るのですから。大きな使命を帯びていると考えるのが自然でしょう。国語のテストなら、彼らの周りから設問が作られます(笑)。

シマは、女子スポーツ黎明期の名もなき多くの人の努力や想いをまとめた象徴でした。人見絹枝や前畑秀子のような優秀な女性選手がいきなり出てくるわけではありません。日本人女性が世界で羽ばたくまでの土台を作れたのは、陸上選手を志し女学校の教員となったシマのような存在があってこそ。

関東大震災で亡くなりますが、夢や希望を持っていた若者たちの無念の象徴とも受け取れます。そのシマの忘れ形見であるリクの夫となったのは、昭和15年に開催される予定だった幻の東京五輪を目指していたマラソンランナーで、金栗四三の弟子という設定でした。こちらも夢が叶わずに戦争で若くして命を落とした人たちの象徴として描かれました。

さて、もう一方のオリジナルキャラの五りん。そのリクとランナーの間にできた子(シマの孫)だったんですね。五りんが担ったのは象徴ではなく、五輪パートと落語パートの繋ぎ役。志ん生に弟子入りして、ストーリーテラーの一翼を担っていきます。最後に陸上の血筋が落語とドッキング

 

ふう。疲れました。落語の“富久”は、ググって欲しい。めんどい(笑)。「いだてん」のストーリーに絡む中盤までを超ザックリ書きますと。不義理をした知人のいる日本橋で火事が起こり、それを心配して浅草から走って駆けつけた結果、許してもらえたという話です。

実際の志ん生の演目では、浅草から日本橋を走るのではなく、距離がもう少しある芝という設定にしていたそうです。「いだてん」の中では、慰問落語で満州に渡った志ん生が、出兵させられた“リクの夫”からマラソンランナー目線のアドバイスを受けて、芝へと距離を伸ばしたというエピソードにしていました。そして、リクの夫は「志ん生の富久は絶品」と絵はがきに書いて投函します。そう繋げるかっ。

富久は、関東大震災の際に金栗が救援物資を持って東京を走るところと重ね合わせられました。ラストでは五りんが、芝で落語をしていた志ん生の元に詫びに行って、不義理の許しを得られます。“とつけむにゃ〜(現代語では「とんでもなく凄い・ヤバい」かな)”凝った台本ですね。

 

一回一回の放送で取り上げられるテーマは、金栗と田畑が中心である程度時系列に沿っています。その中で、この一族のストーリーも展開されていくのです。私は、このシマ一族を中心に見ていたほうが楽しめたかな。表の主人公の2人は大きなことを成し遂げる人物らしく、最初からハイテンションでバイタリティはありましたが、ちっとも成長しなかったように思えたりして。

ちなみに、シマ一族に並ぶ重要人物は、嘉納治五郎でした。金栗と田畑の両名に深く関わるだけでなく、オリンピックの理念の象徴として描かれていました。うん、これ以上長くするわけにはいかないので割愛させてください(笑)。

歴史上の有名人物を扱ったわけではないので、これくらい説明しないと伝わらない題材だったのは確か。そして、凝ったストーリー(システム)だったのも確かです。脚本を書いたクドカンこと宮藤官九郎さんが、このような感想を読んだら“そう、違う!”と言いそうですが。

 

 

○良作だと思います

製作サイドの誤算(?)と思うのは、ブームを作れなかったことですかな。金栗四三がよく発した“とつけむにゃ〜”も、田畑政治の“そう、違う!”も流行らなかった“じゃんね〜”。あまちゃんの“じぇじぇじぇ”のような現象を仕掛けたのに動かず。発せられた回数が多いだけに、むしろ暑苦しさだけ残った気がします。

あと、うーん。クドカン信者がSNSで書きまくった“神回”という言葉は……。伏線は丁寧に回収していましたが、それは当然であって。なので、そこまで神と思った回はなかったかな。一部のサプライズを除いて想定の範囲内。回収できないなら、こんな凝ったツクリにはしないでしょう。

というか、満足しなかった人は脱落するだけですから。SNSなどでは高評価になって当然です。でんでん現象です。まあ、そもそも。クドカンという時点で「読み取れた俺、凄い!」という違うドラマの楽しみ方をしちゃう人が多いのかもしれません。構えて見なければいけない気がして、疲れるから嫌という気持ちも分かります。どちらかといえば、私もそうだったり。気力のあるときに録画を見る感じでしたね。

まあ、アレですわ。ベテランが“アクロスの機種は神台”とか持ち上げすぎて、ノーマル主流の時代を知らない若手が逆に敬遠したくなったような雰囲気を感じたのは事実です。私も気をつけよう(笑)。

 

普通以上には面白かったです。戦争を挟む時期など描きにくかったかと思いますが、無難にやり過ごしながら“今も変わっていませんな”とか言いたくなる皮肉も散りばめられていました。

何回か落語とバッチリ重なる回があって、そこは流石と唸らされました。それ以外の伏線回収としては、昭和39年の東京五輪を前にして、田畑が政治家に失脚させられたところ。戦前、高橋是清に「お金を出して、口も出せば良いのでは」と言った提案がブーメランとなって何話も先の戦後に帰ってくる。この展開は予想できませんでした。あと、金栗・三島と重なるコンゴの選手2人か。これは見た方だけとの共有ということで割愛します。

 

クドカンファミリーの出演が多かったのも特徴でした。視聴率が悪いんだからテコ入れとして、のん(能年玲奈)ちゃんを出してくれ。それが叶わず見なかったという人もいることでしょう。最終回の1つ前かな。出奔した五りんに真意を聞き出しに行った古今亭志ん生の娘の美津子(小泉今日子さん)。「五りんは、どうしたいの?」とか、その語り口がどう聞いてもアキと話す天野春子だったんですわ。私はグッときました(笑)。

MVPは、若き日の古今亭志ん生を演じた森山未來さんですかね。落語を始めたら聴きに行きたいと思うレベル。落語パートがピリッと締まったのは、彼の存在感のおかげ。あと、その妻りん役の夏帆さん。後年を演じたのは池波志乃さんでしたが、かなり寄せていました。そうそう、りんは池波さんの祖母というのも話題になりました。

とまあ、見所はいろいろあったんです。クドカン信者が言うように“見ていない人は損している”とまでは思えませんが、凝った良いホンを読ませていただいたというのが率直な感想です。朝ドラならまだしも、大河向きの題材・書き方だったとは今でも思いません。それでも、完走して良かったと思う読後感(?)でございました。

 

昨年と比べたら緩い? 金栗四三が初のオリンピック選手となったストックホルム大会では、その結果の電報が届くのを待つ東京高等師範学校が描かれました。その後のアントワープ大会では、選手が帰国してからの報告会で結果を知る手抜き感。序盤は海外ロケなども多く画が広かったものの、この辺りから“スタジオの狭い世界”を感じてしまったのはあります。視聴率が悪くなると、予算も縮小されるんですかね?

最初からノンフィクションを元にしたフィクションと言われていたので、史実の改編ウンタラとか言う気にならなかったり。日本女子体育大学の創設者となった二階堂トクヨのヅラ弄り。悪ノリが過ぎる演出でしたが史実です。意外と史実準拠を大切に小ネタを入れておりました。まあ、ヅラエピソードは入れる必要性を感じませんけど。

視聴率が悪かったのは、ストーリーの複雑さもありますが。近現代史はそもそも低くなる。誰もが知る人物でない。そんなところに、個々の好みも加わってしまうから仕方ないでしょう。落語はいいからスポーツをもっと見せろとか、マラソンと水泳じゃなくてとか。初回視聴率も過去最低クラスでした。そもそも見る人を選ぶ題材でした。視聴率が低いからツマラナイとも、ネットが褒めているから面白いとも限りません。

 

 

○大河ドラマの新たな楽しみを示した?

当たり前ですが本編のストーリーなどを語ってまいりました(主人公は書いてないけど、まあいいか)。ですが、私が最も感銘を受けたのは本編ではなかったかもしれません(笑)。

大河ドラマの終わりは「紀行」という枠で、その回にスポットライトを当てられた人物ゆかりの地を紹介することが一般的でした。戦国大河とか、笑けてくるんですよ。その人のお墓など史跡を紹介すると、その多くが「××バス停から徒歩30分」とか。歩けるか〜い。

ロサンゼルス五輪の回では、バロン西が取り上げられていました。馬術で金メダルを取って、硫黄島で戦死された方です。金栗はマラソン。田畑は水泳が基本線だったので、歴史的な偉業でも尺やストーリー展開の関係で触れられないことが多くありました。そのような背景を補完する役割としていたんですね。これ、アリです!

ちなみに、来年の「麒麟がくる」は、主人公が明智光秀。久々となる戦国大河です。また延々と歩かされる史跡紹介となるのでしょうか。そんなところにも注目していきたいと思っています。開始は2週間遅れ。NHK頑張った! 来年また感想を書くかは決めておりませんけどね(笑)。

こんなパチスロの話も出てこない回かつ、普段の4倍の文字数を完走された方、ありがとうございます。年末は話題がないものでして、実はこれで助かったと思っていたり。それでは、良いお年を!