気付けば4月も終盤……昔から日付や曜日には疎い方の人間だが、それにしても最近は特に時間の流れが速く感じてしょうがない。
ソファーなんぞに座り、気を抜いてボンヤリしていると半日など一瞬で過ぎ去ってしまう。恐らくそれは若い頃に比べ自分の動きが遅くなっている証拠なのだろうが、それはまだ認めたくないものだ。
歳をとればその分合理的な考え方や無駄の無い動きが出来るようになる筈だが、そこはいつまで経っても成長してくれないらしい…。あ~ぁ、やだやだ。

【2018年4月9日(月)の稼動】

☆7:17☆

遅い三寒四温
優れぬ体調に憂鬱な朝

空では金色の光に押された雲が
薄く千切れて、逃げてゆく

芽吹く若草達の薫り
だが桜は…もういない

遠くで車のクラクションが聞こえる…

エンジンをルルルと回す
「希望の季節さ」
彼がそう囁いた

さぁ行こう
今日も、負けられない。

☆7:59☆

木の柱に白い壁、オルゴールのBGM…ここはお気に入りの珈琲店
パンサラモーニングを注文した後『朝の独り作戦会議』を始める

“ギリギリ大作戦”

今日のアテは少ない。ならばギリギ…!?

「巨人6点取った後に8点取られたのかね!」
「交差点に車が暴走だと!怖いがね…」

今、隣のオバ様軍団の大音量無双トークに悩まされている…。

☆9:00☆

K市D店
並びの無い店の先頭で5分ほど待ち、入場
今日の傾奇者は…渋い顔

“木を見て森を見ずは後悔の始まり”

私のパチンコ辞書にある通り、狭い場内を一通り見回す。が、店が承知のチャンス台は見当たらない…

唯一気になるのは…アネモネ
このツンデレ少女に1日お付き合い願おうかな…と、思案中。

☆10:28☆

♪今僕を笑うやつは
♪き〜っとケ〜ガをす〜る〜

アネモネがギリギリなのは分かったが「もう少しマシは無いかね…」と、近場のC店を覗き、ヘソ周り以外は男前の甘009を触ってみると…何と2回転で赤保留からの009保留へ!

が、ハズレ

今日のヒキが只事じゃないのを確信し、泣きながらC店を出る。

☆12:09☆

1時間をかけT市Z店へ決意の高速移動
ここは最近交換率が「下がった」と友人から聞いた店で「何かしらメリットが有るのでは」と考えた次第

“移動は素早く華麗に、思い切れ”

私のパチンコ辞書には、そうある

先ずは綺麗な顔の甘009を見つけ、打ち始めると…今度は青保留で当たり

分からんもんだ。

☆12:51☆

足りない。
僅かに足りないねぇ…

到着早々当たった009はRUSHに入り2000発弱の玉を吐き出したが、875発の計数で62回転を稼いだのみ
見た目にも「そんな感じ」なので回転率は18と推測し「交換率を考えると追い銭含めた勝負は出来ないな…」と見切る

1000発程を流して、移動
今日はジプシーだ。

☆15:05☆

あまりの僻地まで行ったばかりに、本日最後のアテであった低交換店の時差オープンのスロット狙いに間に合わない事が確定
これにて換金ギャップ有りの勝負に勝ち目は無くなった

ならば…等価勝負に持ち込むまでよ

急遽貯玉店へアドリブ移動
場を見ると…姫武将が呼んでいる
なかなかの美人だ。

☆17:14☆

目と目が合った瞬間から美人だと思っていたが、これほどまでにイイ女だとは…

貯玉のO市D店で打ち始めた信奈は手応え抜群
見た目通りの回転率をキープしつつ、コンスタントに初当たりと16Rを与えてくれている
台のスペックは辛いが「打てる」事だけは確か

現在持ち玉は3000発超
勿論、GOだ。

☆19:10☆

さすがに回りは少々落ちてきたものの、ジャブのように軽い初当たりと適度な連打の積み重ねで出玉は順調そのもの
今日は優れない体調面も考慮し早上がりも考えていたが、こんな出来た彼女を早々に手放すのは男としてどうかと思う

よって、続行!

持ち玉は約6500発
今日のゴールが、見えて来た。

☆21:50☆

好事魔多し
そういう事なのね…

最後に持ち玉を巻き上げられ、時間切れ試合終了
回りも落ちて、当たりも無し
なかなかしたたかな女性だ

だがトータルでは悪くない

結果はショボショボだが、内容は積んだ
早々にジプシーとなった厳しい1日の終わりとしては満足している

GET 2,700 $

酒代が出ただけマシか…
反省会だな。

☆22:46☆

「心も体も寒さが沁みる」時は場末の赤提灯で熱燗が飲みたい気分なのだが、ここまで稼働が延びてしまうと店が無いんだよなぁ…

『味のある酒場ほど早く閉まる』
酒飲みあるあるってヤツだ

という訳で今日はチェーン店
だがやる事は、変わらない

さぁ始めよう
『反省会という名の独り酒』を。

先ず、今日の立ち回り

65点

・低交換店のチャンス日を朝イチで狙ったこと
・その後は交換率の低い順に店を回ったこと
・最終的に貯玉遊技でも打ち切れたこと

悪くは無い。が、結果が出せなかった点と信奈の回転率を甘く見過ぎて稼働時間を長く引っ張り過ぎた点はマイナスだ。

次に台の正体
今日は最後に打った信奈を見てみよう
台の正式名称は

“CRA 織田信奈の野望 GL”

回転率 24.4
電サポ増減 +1
等価ボーダー +3.5強
時速差玉500発弱の台
やはり貯玉遊技としては悪くないし、7時間打って差玉2000発なら納得の誤差だ
落ちた回転率もトータルで考えれば「そんなもの」と思える。

“その数字が、台の現実”

私のパチンコ辞書には、そうある
「あの時は回ったんだけどな…」では無くクールに着地点のみを見る事が大切で、もしもその数字が自分の感覚と乖離している場合、パチンコにおいては数字の方が正しい

人間の感覚なんて、ほんの少しの喜怒哀楽で麻痺するものだ

ここからは毎度の脱線授業

つい先日、親しいセミプロの友人夫妻が唐突に
「レイリーさん、飲みに行きましょう!」
と言うので快諾し出掛けた

彼らとは古くからの友人で、飲み友達でもあるので別段珍しい事でも無かったのだが…いつものように楽しく飲んだ最後に
「今日は私に出させて下さい」
と言うのだ。

訝(いぶか)る私に彼らは
「前からずっと読んでいる悠遊道にレイリーさんの文が出たのは私達も嬉しいんです。だから今日はそのお祝いなんです。」
そう言い残し、夫妻は笑顔で帰って行った

涙が出た。

何気なく始めた稼働日記が今では形を変え、人を繋ぎ始めている
もし私の文が、ささやかにでも人の心を照らしているのなら本望だ。

ケ・セラ・セラ
明日は明日の風が吹く

【悠遊道特別コラム】
上の余談でも少し触れていますが、今回は私の稼動日記のルーツについて話をしましょう。

今月7日に発売されたパチンコ必勝ガイド誌面連載『つぶれてたまるか!』で安田プロが「極論、今日記を書いているプロは皆田山チルドレンだ。」と書かれていますが、私はまさにその1人です。

私と「稼動日記」なるものの出会いは今を遡ること約四半世紀、コンビニで何気なく手にしたパチンコ必勝ガイド『田山幸憲のパチプロ日記』との出会いから始まります。
当時駆け出しのパチンカーであった私は「日本一有名なパチプロ」と称されていた彼のその文章に大きな衝撃を受けます。

「東大出身のパチプロって、どんな難しい文章を書くのだろう」

そんな思いで読み始めた文章はしかし、私が想像していた物とは全く…本当に全く違いました。
彼の日記は実戦から始まる事は無く、朝起きて最寄り駅から電車に乗り、購入したスポーツ新聞を片手に目的の駅から時には数十分歩いてホール近くの喫茶店に入り、コーヒーを飲みながら物思いに耽りつつ開店を待つ…そんな場面に冒頭の多くの行数が費やされていました。

美しい文章でした。
そこでは、例えば道端に花が咲いていたり、川のせせらぎが聞こえてきたり…季節の移ろいや風景がキラキラと鮮やかに描かれていました。
そんな中で私が何より驚いたのは、百戦錬磨のプロであるにもかかわらず、昨日今日初めてパチンコの楽しさを知った自分が感じているようなホールに向かう時の高揚感が、生き生きと伝わって来た事でした。なぜなら超一流と呼ばれるパチプロが初心者の気持ちでホールに足を運んでいるとは夢にも思わなかったからです。
そこから先のホール内でのウィットに富んだ表現の数々は彼亡き後も誌面の様々な場面で受け継がれつつ現在に至りますが、少なくとも私はその「1発も玉を弾かない」前半を読みたいが為にパチンコ必勝ガイドを購入していたと言っても過言ではありませんし、今でも田山さんが『作家』として本当に描きたかったのは『台に座るまでの、恋焦がれる気持ち』ではなかったのだろうかと思っています。
だって、パチンコも恋愛もスタートラインまでが1番楽しく苦しく、切ないのですから…。

現在この悠遊道で掲載されている稼動日記は、私のツイッターでリアルタイムにUPした記事を再編集したものですが、そもそも日記を書くにあたり絶対描きたかった事の1つが田山さんのような『ホール到着までの心と景色の描写』でした。
私が稼動ツイートで最も時間をかけて書いている部分でもあります。
『田山幸憲のパチプロ日記』、そこにシリアスタッチでクスリと笑わせる夏目漱石と、乾いた言葉で何処か遠くの世界を見つめている銀色夏生の風味を効かせ、時には泥水を啜る生々しさとその対極に在る遊び心を混ぜ、“レイリーのパチンコ辞書”のスパイスを振り、最後に酒場の独り言を加えたものが、私の稼動日記の正体なのでした。

数十年前の私のように、パチンコという窓を通して少しでも皆様の心が豊かになりますように…。
(おわり)