昨年、3年ほど通いつめた店を後にした

また通えるような店を探すか、本格的に機種を追っての流浪の形をとるか、はたまた恥を忍んでもとの店に戻るか

ぼんやりと考えながら、とりあえずの日銭を拾うべく、最近は数年ぶりに地元の店のお世話になっている

どっちつかずの、ふわふわとした毎日を過ごしているのだが、そんないい加減な店選びや打ち方でも、それなりに根を張っていた地域のこと、覚えている者、顔を見て思い出す者、諸々の打ち手さんの変らず「現役」な姿を見かけては日々刺激を受けている

まだ打てているだろうなという凄腕さんを見掛けて妙に納得してみたり、有名だったハイエナさんが相も変らず同じ休憩スペースに座って待機しているのを見掛けて、アンタまだ頑張ってたのか、と驚愕したり、その刺激の形は様々だ

折角、久々に地元で打っているのだからと安田さんと10年ぶりくらいに並んだリニューアルでは、当時武闘派でならした開店屋さんグループがまだご健在なのをみて、色んな感情が混ざり合ったノスタルジックな気分にもなったりしている

ちなみに、そのイベントでは、機械仕掛けの抽選機で安田さんは「1番」を引き当てていました

まさかの出来事に呆然としている安田さん、それを見て大爆笑している僕

「やはり並ぶのは性に合わん!もうオレは絶対、開店からは行かないからな!!」

わなわなと体をふるわせながら、開店屋さんや、地元のやんちゃな人らの先頭に立つ大先生のお姿は、大変壮観でした

そうしたことを繰返し、一通り地元の近況を把握してきたある日、IC沿いの大型店舗で羽根物を打っていると、盤面のガラス越しに記憶の底をくすぐる影が通り過ぎる

パチンコの世界に身を置いていると、見たことがあるというのみで、しっかりと記憶を掘り下げることなく無思慮に眼を合わせたりすると、その後面倒に巻き込まれることが大変多い

さすがに20年これで生きてきたので、阿呆の自分も学習しているらしく、すぐさま振り向くことはせず、意識を背中に集中させて、頃合を見てそっと振り向く

後ろの列で遊戯しているその姿

薄手のベージュのレインコート、ベスト型のセーターの下に、あまり今時ではないチェックのシャツ、半端な太さのスラックスに、ガンダムのようなスニーカー

そして、和泉プロか、彼かという高身長、間違いない「ノッポ」さんだ

当時はスロットがメインの立回りだったが、いまは自分と同じく羽根物コーナーにいる

小三十分程度でどこかに行ってしまったが、僕の記憶の中では、そのときの台選びや結果だけで落伍ということは絶対にできない、大変な実力の持ち主だった

「パチンコ打ち」というよりかは「ギャンブラー」というイメージが強い

「カイジ」をもし実写化するなら、というよりは、まんまカイジだった

凡夫の如き雰囲気の中に隠された眼光の鋭さ、その特異な発想や閃き、そして人間に対する甘さ

そのときはお仲間さんを見かけなかったが、ノッポさんはピンの打ち手ではなく、グループの頭だった

ノッポさん率いるグループは、打ち子軍団や開店屋さん、学生時代から、またはネットによって繋がった集団など、今ある多様なそれらの集団と較べても、異色で奇異な存在だった

こんな繋がりは在りえるのかと、そして存続できるものなのか

当時、安田さんとの恒例であった茶会でも、彼らの存在は何度も話題にのぼった

もし在りえるならば、それはこの世界における集団としての、ひとつの理想形、完成形であったと思う

好奇心半分、そして、そんな夢物語が一つくらいあってもいいんじゃないかと祈るような気持半分、僕の耳目を通して、僕と安田さんは彼らの行く末を眺めていた

#2Aにつづく