猪木全6は客に全台高設定?と言う形で伝わった。

せっかく全台6を入れたのに客は気付いてくれない…このままでは今後の集客に繋がらないし、とち狂った設定師の存在も知られる事は無い。

何とかしなくては…。

こうなったら全台据え置きや!

さすがに明日は判ってくれるだろう♪

弱気になったらアカン!と自分に良い聞かせるが『解雇』の二文字が頭をかすめた。

うーん?ちょっとヤバイかな…。

弱気になって行く自分に嫌気がしたが、逃げ出す訳にも、もう後戻りも出来ない!と自分に言い聞かせた。

大丈夫♪大丈夫♪…。

明日は限界まで出したろ(笑)何をビビってるねん!客が付いたら何時でも回収出来るんや!

よーし!テンション上げて行こう♪

そして設定に取り掛かる…。

猪木は全台6据え置き!

ハイ!!設定完了♪

よし次ジャグラー!!

これは全台5!

ハイ!設定終了…。

よし次!キンパル!!

全台6!!

そ、それは無理やな(汗)

だから3台だけ6!

よし次!

ゴールドX!!半分5

ハイ!つぎ!……。

とりあえず限界と思えるまで全台に5と6を投入してみた。

問題はそれ以外の台の設定…。

初日は設定2と3を使い回収を試みたが、回収出来ずにお漏らしている台が結構多い。

80万の赤字は、そもそもこの辺りに原因が有るのだから、明日はもっと回収してもらわねば…。

出す時は出す!

出さない時は出さない!

釘と違ってスロットの調整は目に見えないから、締めるなら徹底的にやろう…。

よし!残り全台設定1で行くか♪

天国か地獄の様な調整。

換金差の有るグランドオーブン店で、通常この様な設定をやる事はほとんどない。

本来ならべタ設定と呼ばれるオール4やオール3などをベースとし、予算に合わせて高設定を配置するのが最も多いやり方。

しかしLEVELの予算を考えればそれは現実不可能…。せめて信用を取り戻すまで高設定の台数にこだわりたい、1を使えば必然的に負ける客が多くなるがリスクが高くても設定5・6を使いたかった。

人はどんなに苦しくても希望が有ればついて来るはず?その希望を断ち切るような調整をしたくなかった。

一通りの調整を終わらせ店を出ると、昨夜居た徹夜組は今日はどうやらいないようだ。その代わりに新聞紙やら段ボール達が綺麗に列んでいた(笑)

こう言う段ボール達が列び出すと、メリハリ設定をしても意味がない、こう言う部分にもマメに目をやって置かないと一般客が潰されしまう。

明日からは抽選入場だ。

店に来る誰もが設定6に座れるチャンスが無くてはならない。

入口に列ぶ物言わぬ代役達を全てゴミ箱に片付け、明日の入場方法について赤井店長に指示を出し店を後にした

設定にメリハリを付ければ上級者が増えて来るが、こう言った段ボールで場所とりする輩までオマケで付いて来るから困ったものだ。

設定師として拘りたかった事…。

それはメリハリ調整と機械選び。そしてマナーの悪い客の徹底廃除…。

初心者や時間の限られるサラリーマンも、楽しく遊んで貰える様に機種構成を考え設定を入れる、上級者や長時間打てるプレーヤーだけが美味しい思いが出来ない様に機械調整するのが設定師の仕事。

一部のマナーの悪い連中を野放しにすると、店の雰囲気が悪くなり上客が離れて行く…。

横割りや複数台の確保などなど…。

設定にメリハリを付けるなら調整以外にも気を配る事は多かった。

機械の特性はもちろん、客の動きや心理まで考え、来店客全てにチャンスを与え無くては設定師など必要無いのだから…。

そして翌日。

昨日の赤字が良かったのか?朝から予想を超える集客…。

開店前の抽選では110台に対して列んだお客の方が多かった。

場所取りをしていた若い連中からクレームは有ったものの、その他にトラブルも無くスムーズに二日目のグランドオープンを迎える事が出来た。

整理券配布後に会員宛てにメールを送る。

グランドオーブン二日目《会員メール》

ご来店のお客様へ♪

昨日同様、本日も全台6コーナー有り♪対象機種は・・・?溢れ出るメダルを参考に貴方の目でご確認下さい♪

開店前に設定内容をメール告知して集客する店は多かったが、それでは設定6狙いのイベントプロや上級者が増えてしまう…。

開店やイベントのみを狙って来る連中は正直来て欲しくないのが店側、設定師側の本音(笑)。とにかくイベントプロや開店プロに狙われ無い様に気を使った。

そして、グランドオープン二日目は大盛況に終わった。

赤字で終わったものの金額は20万円ほど、設定にメリハリを付けた事で回収金額も上がり前日ほどの痛手は負わなかった。

翌日から土日。

週明けからは完全平常営業…。

二日分の赤字額100万円とLEVELの月間粗利予定の1500万円の合計1600万円の回収に乗り出す事となった。

一気に粗利目標に向かって全力回収と行きたい所だったが、ジャグラーだけは設定を落とさず連日設定5の営業を貫く…。

LEVELを限られた予算で立て直すには、頻繁に新台入れ替えは出来ない。

ならば息の長いジャグラーを主力機種にしたい。

単価は安いがお客の回転もよく客が付けば安定した利益が望める。

そうなる事を願いジャグラーコーナーが高稼動を維持するまで設定を据え置く事にした。

パチスロLEVELの営業スタイル。

◎設置台数110台
◎6枚交換
◎13時間営業
◎地域密集型店舗
◎月間粗利1500万

≪猪木。ドロンジョ。ゴールドX。Bingoなど≫

有る程度投資のリスクを負わなければ設定の解りにくいAT機は、超メリハリ設定。
【平日設定】5or2
【休日設定】6or1

《キンパル。ネオプラ。巨人の星など》
リセットや比較的低投資で設定判別が付きやすいストック機などは殆ど設定は触らず基本的に回収に使った。
【平日設定】3
【休日設定】3

《ゴーゴージャグラー》
【平日設定】5
【休日設定】5
上記の設定で数週間の営業を続けた辺りから、お客に動きが出始める。

ストック機は回収に使っていたのでお客は定着しなかったが、ジャグラコーナーは連日高稼動をキープ。

最初は客の粘りも少なく、赤字と黒字を行ったり来たりの繰り返しだったが、グランドオープンから一ヶ月を迎えた辺りには、ジャグラーコーナーは連日赤字を計上する様になって来た。

そろそろ閉めるか…?

いや待てよ!計画を少し変更して新台を導入するか…。

今月の粗利はほぼ確定した訳だし、お客もそろそろ新台入れ替えを望んでいるはず?

集客は伸びている!

今ここで新台を導入して勢いを付けたい…。

何を入れる??

そんな事を考え始めていた頃、仲の良い営業マン林田くんから電話が入った。

林田くん【ゆきちさん。新台いれませんか?かなり良い機種ですよ♪】

アルゼに勤めていた林田君は様々な機種を扱える販社の営業マンとして再出発していた。

元スロットプロから転職しメーカー営業マンになった彼の新機種を見極める眼力は凄まじく、ミリオンゴットを初めとし、それ以降も彼が当たると確信した台は確実に人気機種になっていた。

そんな彼とはやはり元パチプロ、元スロプロとして同じ釜の飯を食っていた事もあって最新情報を最速で届けてくれる。

そんな彼が進めてきた台はスロット初代北斗の拳だった。

次回更新へ続く