二人のS vol.1 黎明期

二人のS vol.7 北海道後のS×2

 

メンヘラしぃ君。パンクマン スティーブン。

二人を雇う事になったボクですが、毎日一緒に、というわけでもなく、彼らが自力で勝負できるような時にはノータッチ。アテが無い時に雇う。

そんな生活がしばらく続いたわけですが、数ヶ月もするとボク自身が耐えられなくなりました。

前回述べた細かいストレスで常にイライラしているような状況で

「もう辞める!!」

と放り投げました。

当初話していたような目標の貯金には届かず、でも野垂れ死にの窮地からは二人とも脱したし、もう勘弁してくれ。

そんな思いでした。

 

後々になって、特にスティーブンには直接謝りましたが、思えば雇いなんてお互いの為にならない事を本来やるべきではなかった。

一見、誰でもやれるようなパチプロ生活ですが、継続していく上で何より大事な「自己責任の覚悟」が無かった二人に対し、いくら心構えや立ち回りを教えようが、その先独り立ちなんて出来るわけがなかったんです。

そういう意味で、ボクのやった事は二人の社会復帰の機会をムダに引き延ばしてしまっただけなのかな……と悩みもしました。

 

その後、しばらくして先にスティーブンが就職。しぃ君もプログラミングの学校へ行き始め、今ではIT系の会社で正社員として立派に働いています。

実はこのサイトの裏方はしぃ君で、ご覧の通りデザインから動線から色々と拙いサイトですし、ルーズなところは今も変わりませんが、自殺未遂までした子がよくぞここまで……とオッサンは思ったものです。

スティーブンもパチプロ時代は

「会社での人付き合いとか無理。パチプロ最高w」

とか言っていましたが、生来人当りはいい奴だし、体を壊してまで先の無いパチプロ生活を続けるよりは、社会の中で働いていくべき人なのでしょう。

パチプロとしては情けない限りの脱落者でしたが、つい最近新しい彼女との事を聞かれ

「セッ〇スしかしてないです」

と充実した毎日をシレっと報告できるくらい、安定した生活が出来ている事に安堵しています。

若干殺意は芽生えましたが。

また、Mさんはまだまだ稼げる腕がありながらもパチプロから足を洗い、持ち前の行動力で今や会社社長に。LINEグループのメンバーを自社で面倒見るなど、ボクのやった雇いなどより遥かに大きな力で皆を助け、大人として一歩も二歩も先に進んでいます。

 

パチプロと一口に言っても安田さんのように誌上で華々しく活躍する人、全国を飛び回り稼ぎまくるトッププロ、独自のやり方で細く長く生きるプロ、様々な人間模様があります。

そんな中、二人のSはパチプロとも呼べない「なんちゃってプロ」でしたが、そうして数多の人が現れては消えていくのもこの世界の常。

メディアには中々出てこない、社会の最下層でうごめくダメプロのリアルをこの数年間で見事に体現していった二人のSですが、それもまた「パチプロ」というものなんでしょう。

最近、

「パチプロより仕事の方が楽ですわw」

と笑う二人に対し、今もパチプロをしているボクなんかはよほど人生の落伍者なわけで、あれほど偉そうに上から目線で語っていたのが

「あれ?いつの間にか二人の方が立派じゃね?」

と切なくなる時もあります。

また、パチプロ時代のように気軽に飲みに行けなくなった結果、一人酒が増えた事には一抹の寂しさを感じます。

一方、自殺未遂までしたしぃ君、家なき子だったスティーブンがあのまま堕ちていく事なく社会に戻る事が出来て良かった。

心からそう思います。

 

20名弱のLINEグループは今も続いていますが、知り合った当時から今もパチプロを続けているのは本当に数える程になりました。

それでも、パチプロという特殊な世界で、それを分かり合える仲間がいて、同じ時間を過ごせた事はボクの大切な思い出です。

 

そんな人生も、あっていいんじゃないかな。

 

 

二人のS 了