下田氏の逮捕は各新聞でも取り上げられ、単なる不正改造事件ではないことを伺わせたのだが、その報道内容は疑問符が付くものであった。パチンコ業界がどのように扱われているのかが分かる報道でもあったのだが、今でも本質的にあまり変わってないように思えるのは気のせいか。

―下田氏が逮捕されたことは業界内ではもちろん、一般社会においても相応の話題に上った出来事だったと思うのですが、当時の新聞やメディアでの報道はどういったものだったのでしょうか。

「端的に言うと、警察発表をそのまま活字にしたという感じでした。Y新聞では『パチンコ遊技機に装着されている不正改造防止機能付き基板を改造、大当りを連続して玉を良く出るようにしたうえで国内各地のパチンコ店に販売して約5億円を稼いでいたグループの主犯格2人を著作権法違反 (複製) 容疑で逮捕した』『93年11月ごろから94年6月ごろまでに約1万数千個の偽造基板を製造、全国のパチンコ店に1個3〜5万円で販売していたと見られる』などとありましたが、下田氏によればある電子会社を通じて約1万個作ったのは事実だが、その内の半分は使い物にならない不良品で、実際に流通したのは半分もないとのことでした。

―約5億円を稼いだというのも……。

「1個5万円で1万個売った、だから5億円という警察発表を裏も取らずに良くそのまま記事にできるものと呆れていましたね。最終的に下田氏は略式起訴で罰金 (30万) を支払って釈放されました。大体、それだけ稼いだとなれば、その程度で終わるわけはないですよね。下手すれば実刑もあり得ます。前回も言いましたが、プログラムの書き換え方法や作り方を教えるまでが下田氏の仕事であって、その後に誰がどのように動いて、何個作って何個販売したのか、幾らで売ったのか、そういったことは氏にとっては範疇外です。億単位のお金を自分が手にしていたのなら、コツコツと裏モノ関係に精を出すなんてことはせず、どこかに家でも買ってのんびり暮らすよと、そのように言ってましたね」

―取り調べを担当した警察の人たちとは良好な関係だったと伺いましたが、それでも納得いかないようなことが公にされてしまうのですね。

「新聞は留置所内でも差し入れで読むことができますし、おかしいことが書かれてあると担当官には説明したそうです。担当官の方でも、5億円云々は確認できていないし、あなたがその気になれば証言してあげてもいいと言われたと言っていましたね。では、どうしてそんなことを警察が発表したのかとなるのですが、上の方が勝手にマスコミ向けに行ったことで、自分たちは全く存じていないとのことだったようです」

―それを新聞社が鵜呑みにしたと。

「まあ、そういうことになるでしょうね。大体、下田氏が関わったのはパチスロ機です。Y新聞では最初から記事後半までパチンコという表記を用い、最後の方で下田氏の経歴的なことを説明する際に『雑誌などにパチスロの必勝法などを寄稿、業界ではパチンコ裏技師として知られていたという』とまとめ、ようやくパチスロという表記が出てくるという体たらくでした。それもおかしなまとめで、氏は別段パチスロの必勝法などは寄稿していませんし、裏ROM師との異名は取っていましたが、裏技師なんて呼ばれていたかどうかは不明です」

―適当ですねぇ。

「パチンコとパチスロは全く別物ですよね。まあ、パチンコやパチスロに関心がない人や新聞記者からすればそんなことはどっちでもいいとなるのでしょうが、事件となっていることですから、正確を期して記事にしなければいけないとは思います。見出しに『パチンコ台で “出過ぎた” マネ』と皮肉っぽく書くのもいいですが、肝心の記事が首を傾げざるを得ないような内容では、他の記事の信憑性にも疑問符が付きますよね」

―風営法で検挙されたのなら略式起訴でも否認し、正式に裁判に持ち込み、裁判所で行政側の様々な失態を明らかにしたいと、下田氏はそのような姿勢でいたんですよね。

「そうですね。その狙いがあったから、イリーガルな手法と言われながらも裏ROM作りを続けつつ、いざ逮捕、検挙となったら正式裁判で行政側やパチンコ機 (パチスロ機) の検定機関である保通協の実態を明らかにしたいと、そんな風に考えていたそうです」

―ただ、著作権法違反ときたので、裁判云々は諦めたと。

「それでも、やろうと思えばできたそうなんですね。ただ、前回も言いましたが、周囲から『風営法と関係ないなら保通協やその関係者も出てこないだろうし、それで負けたら、それが判例になる。判例というのは馬鹿にできないもので、それ以降の裁判でも参考にされる。風営法で挙げるのが難しいとなれば、警察はまた堂々と著作権を持ち出してくる』と言われ、普通に罰金を払って終わりにしたそうです。それでも、今度はわけの分からない記事を書かれたので、新聞社を訴えられないかと半ば本気で考えていたそうなんですが、それもお金と時間がかかるだけだし、メディアを敵に回してもあまりいいことはないと言われ、諦めたそうです」

―色々と考えていたんですね。

「ただ、担当の弁護士の専門が刑事ではなく民事だったそうで、後日それが失敗だったとか言ってました (笑)」

―あらら (笑)。

「まあ何にせよ、下田氏の事件は一段落となったんですが、以降警察行政はギャンブル性の高いめCR機導入に更に熱を入れることになります。それが良かったのか悪かったのかは業界の現状を顧みれば分かることなのですが、次回以降はCR機一色に染まっていく中での出来事を何かしら話していければと思っています」