ザ・ノンフィクション ギャンブルをやめたくて ~また 家族と暮らしたい~

https://tver.jp/episodes/epwv4bw34y(前編)

https://tver.jp/episodes/epwmg4ow0x(後編)

幾度となく「ギャンブル依存症」と言う言葉が出てくることに違和感はありますが、WHOの話も出てくるだけにその点は制作側がある程度理解した上でギャンブリング障害ではなくギャンブル依存症という言葉にしている、と理解します。社会通念上はそっちの方がどうしても通りが良いですからね。

そして、今回コレを取り上げた理由は2点。

・パチンコ・パチスロで5000万も負けられるわけないだろ

・こういう人々への支援は足りているのか

ツラツラ書いていきたいと思います。

5000万は流石に……と思うが

冒頭の男性は41歳。ぱちんこ屋に出入りできるようになってから約23年で5000万円、年間平均で約220万円、月平均なら18万円ほどでしょうか。そうして継続的に負けていたらあり得る数字です。

そして、彼がぱちんこ屋に出入りできるようになった18歳の時は2002年。4号機AT機の全盛期ですね。

この方がいつからどの程度の頻度でホールに出入りしていたかは番組内で語られていませんが、4号機AT機~ストック機の時代と言うのは知識介入の重要性が高まった時期で、それに加えて技術介入要素も多々あった時代ですから、何も知らずに無手で挑み、打ち方もヤメ時も知らずに打っていたのだとしたら、年間200万どころではなくお金が消えていくだけ。そんな台ばかりでした。

その後の5号機以降に関してはもう少し優しい時代もありましたが、結局のところ射幸性を高めることに邁進する業界が生み出す機械もホール環境も、パチスロの知識介入・技術介入の要素は時代と共に高まるばかりで、最低限を知らない人々に関しては

メーカー公表の機械割が①でも97%なんだから!

他の賭博に比べて還元率が高いんだから!

だからそんなに負けるわけないだろ!

という理屈は当てはまりません。打ち出しとヤメ時の判断の差で大きな差益が生まれるからハイエナが成り立つんだし、ノーマル機以外はずっとそんな機械を作り続けているのがぱちんこ業界です。そして、ライト層からむしり取り、どんどん入り口を狭めてマニア向けにした結果の遊技人口の減少です。

例えば今のスマスロ北斗。

冷遇の存在を知っている人は爆連したら即ヤメするわけですが、その後を打ち出して適当なところで辞める人々は未だに少ないながらもいます。そうした人々の機械割を算出した人がいるでしょうか。何の根拠もない体感ですが機械割70-80%くらいになるのではないかと思うし、そうした負の部分をきちんと調べて数値的な根拠を持って語る人は決していません。なぜなら算出する意味も無いし、誰からも求められていませんから。でも、そこに犠牲者は確実に存在していて、冒頭の男性はその代表のようにも見えてしまいます。

ライト層がひたすら割りを食う世界になり、更に自分に歯止めが効かずギャンブルを辞められない人がぱちんこと向き合い続けたら……。20数年で5000万は十分にあり得る範囲だと感じます。

出演者の多数がパチンコ・パチスロがキッカケ

グレイス・ロードという依存症回復施設で集団生活を過ごす出演者が

「どうしてこの施設へ?」

と聞かれた際、多くの方がパチンコ・パチスロをキッカケとして挙げていました。勿論公営ギャンブルも出てきますが。

我々ぱちんこ村の住民からすると、青天井の公営の方がヒドイだろ!と思うし、ぱちんこを殊更悪者に仕立て上げるような編集だろ!という我々側のバイアスはかかります。番組を作る上で恣意的な編集はあるものだし、番組内でのぱちんこが原因と見える頻度と公営との兼ね合いには偏りを感じます。とは言え現実を見れば、ギャンブルへの入り口として誰もが気軽に立ち寄れるぱちんこホールの存在は大きいと感じます。

斜陽と言われながらもまだまだ日本のギャンブル業界において最大規模を誇るわけですし、そこから公営やオンカジに、もしくは逆のパターンもありつつギャンブルにのめり込んでしまう人は少なからずいるわけで、どちらが先かという問題ではなく、事実としてギャンブルが出来る場所を提供しているならば、こうしてギャンブリング障害に陥った人々から目を背けてはいけません。

ちなみに、出演者の話から伺えるのは、幼少期からの家庭環境の影響です。アルコールやニコチンなどの物質依存とは違い、ギャンブリング障害は環境要因も大きい行動障害というのがWHO含む専門家の皆様の見解。そして、ぱちんこと日常的に触れ合っていながら自分を律せている人は、たまたま生まれ育った環境に恵まれていただけ、とも言えるのですが、多くの方は自分とは違う環境で生まれ育った人々へ想いを馳せることなく、一括りに「大人なんだから自分を律せない奴がバカ」と切って捨てるか見て見ぬ振りをしてしまいます。

依存症と言われてしまう人たちも決して望んでそうなったわけではありません。でも、見た目は何も普通の人と変わらないから「大人なんだから」と自分の物差しで「これくらいはやれて当たり前」と無自覚に結論付けてしまうものですが、ギャンブリング障害はそんな簡単に起結を述べられる話ではありません。

そして、本人の努力や能力とは別の形で現れてしまう環境的弱者から、必要以上にお金をむしり取ってしまうのがギャンブル業だということは知っておきたいところです。

ぱちんこ業界の依存症支援は不十分

例えばホール業界最大手であるマルハンさんの2024年の依存症関連の支援額は400万円という公式ページがありました。これは、2024年3月に公表された(連結決算)当期純利益である112.04億円の中で、たったの0.01%にしかすぎません。

マルハンさんはアルバイトスタッフ含めて、1万人強の従業員がいますが、その方々が依存症支援に拠出しているお金は年間で一人約400円弱という計算になります。

そして、トップメーカーである三共さんの支援額を調べようとしましたが、ネット上では見つけられませんでした。

マルハンさん・三共さんに限らず、業界が有形無形の様々な支援をしている事は改めて言うまでも無いことは承知しております。また、依存症支援団体も玉石混合で、業界としての支援をどういう形ですべきか、という点はまだまだ議論が必要でしょう。

ボクもかつてギャンブリング障害と言う言葉も知らなかった時に、悠遊道を通じてとある団体の代表の方にインタビューさせてもらったこともありましたが、知れば知るほどその方は業界側からの評判が悪く、各々の立場の違いの複雑さを感じたものです。

とは言え、あくまでもボクの感覚とすれば、この業で禄を食みながら0.01%程度の支援は少なすぎると感じます。何も知らずに負け倒して人生狂わされてしまった人たちに、もう少し責任負っても良くないですか?と思うのです。

そして、ここまで読んで下さった皆様はどのような形であれ「適切にぱちんこと向き合うことが出来た人」です。でも、それは個々の生い立ちからなる偶然の産物でもあって、環境に恵まれなかった人たちへの想像力をもう少し膨らませても良いのではないでしょうか。

そういう人達無しにこの業も社会も回らないのですから。

機械に関する話や業界ゴシップ等々で盛り上がるのはそれはそれで良しとして、一方で業としての根本に気づきを与えてくれるザ・ノンフィクション。是非ともTVerでご覧下さい。


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