ブラボーキングダムのデータ取りやその他雑務をこなしつつ、権利モノ担当として日々精力的に動いていたA氏であったが、次なる依頼は大手メーカーから出た2回権利モノの攻略法だった。内容的にはまずあり得ないものなのだが、実践検証した結果は果たして……。
ある日、万発さんから連絡があり、SANKYOのスーパープレミアムⅠに攻略法があるみたいなので、打ってきてほしいと。編集部で軽く打ち合わせをし、設置店のある渋谷へ行きました。当時は新要件機が普及し始めていた時期で、それまでの権利モノは1回の権利獲得で最高8ラウンド、出玉にして大体800個から多くでも1000個程度でしたが (3回権利で約2400個から3000個程度の出玉が得られた)、それが新要件機に変わってからは1回の権利獲得で最高16ラウンド、3回権利で約6000個の出玉も可能になるなど、これからは権利モノが面白くなりそうだと個人的には思っていました。スーパープレミアムⅠという機種は2回権利モノで大当り確率は1/288、2回目の権利を獲得する際は10倍アップの1/28.8になるという、まあ当時のデジタル式権利モノとしてはごくごく普通のスペックで、特に目新しい点はありません。
―オーソドックスな2回権利モノだと。
1回目の権利終了後にドラムは10倍アップの1/28.8になり、これですぐに大当りとなって2回目の権利獲得となるわけですが、なぜかその後もドラムの大当り確率は1/28.8のままなんですね。当時の新要件機のデジタル式権利モノはなぜかこのような仕様の機種が少なくなかったような気がするのですが、パンクの危険が出てくるだけなので、ある意味では不親切と言えます。2回目の権利消化中に誤って左に玉が飛んでヘソに入賞、そこでドラムが揃い、また何かトチ狂って、開いた電チューに玉が1個飛び込んでしまったらパンクです。そういったアクシデントを防ぐため、後に権利獲得後は通常確率に戻る機種が主流になりました。この機種の摩訶不思議なところは、2回目の権利獲得後もドラムは高確率のままというだけでなく、その状態で運悪くパンクしてしまっても、まだ高確率状態が続いているという点です。この点だけでも修正しておけば攻略法の入り込む余地はなかった。
―それって、初心者の方が何も知らずに左打ちを続けてしまい、当たってV入賞を何度も繰り返しても権利が消滅しないよう、高確率状態が続くように設計したとか?
V入賞しないと高確率状態のままっていう機種はその後たくさん出てきました。当時、権利モノは賞球ゼロの始動チャッカーが認められていましたし、それだと当たった時に上皿に玉がないという事態がそれなりにあったように思います。それで権利が取れずに何もナシっていうのはあんまりなので、メインデジタルの大当り後にV入賞を逃してもメインデジタルは高確率状態に移行したままと、まあ救済処置ですよね。しかし、V入賞してもメインデジタル (ドラム) は高確率状態のままで、かつ権利消化中に再度V入賞してパンクしても高確率状態のままっていう機種は、後にも先にもこの機種くらいなのではないかと思います。
―権利モノビギナーに配慮したというより、単に設計ミスだと?
おそらくそうでしょうね。で、実際に自分が打ちに行き、確かにその通りでした。ただ、困ったことに権利消化中に故意にパンクさせるというのは非常に不自然な行為になるわけで、おまけに盤面は電飾やら何やらで目立ちますし、音も鳴りっぱなしです。その状態で左打ちに戻し、ドラムが揃うのを待つというのは精神的に非常にしんどいです。約1/28というのはハマる時は平気で50、60回とハマります。上皿がなくなるのは当たり前ですし、それでも当たるまで打ち続ける。で、ようやく当たってパンクさせ、出玉を流します。そして、また現金を使って打ち始めます。当時は1回交換の店がほとんどでしたから、これは特段不自然なことではありません。電飾が消えて、見た目はすっかり通常時なのですが、中身は高確率のままですから、またすぐに当たります。以下、繰り返しとなるわけですが、さすがに短時間で初当りを3回も4回も取っているとなると、不自然ですよね。1/288がそう簡単に当たるわけはないですし、権利消化中に左打ちをしているだけでアヤしい。それで、出玉を交換した後にまたすぐに当たるとなると、店としてもさすがにおかしいとなるわけで、すぐに対策が取られたような気がします。
―対策とは?
店員がへばりついて、2回目の権利消化中は右打ちを続けるようにとか、そういうアナログ的な対策ですね。基板交換とか、そういう大々的な対策を取ることはなかったように思いますが (未確認)、まあ設置台数は多くなかったですし、最後は釘を思いっきりシメて、初当りを取るのに何万円も使わされるような調整をして終わりです。ちなみに掲載記事の方ですが、僕は実践データを提供したカタチで、実際に原稿を書いたのはベテランライターの方でしたね。他誌もほぼ同時か後追い記事を掲載していたように覚えていますが、まあ前述したように設置が少なく、マイナー機種と言っていい権利モノでしたから、大騒ぎにはならなかったように思います。
―ちなみに以前から聞きたかったことなのですが、紹介記事でも今回のような攻略記事でも、それに関する機種を打つ時のお金は自腹なんですか。
基本的には自腹です。ですが、きちんと精算するんですよ。例えば5万円使いました、3万円勝ちました、トータル2万円の負けですとなったら、2万円が補償されます。負け保障 (補償) 制度と言っていました。まあごくごく普通に何月何日、何時から何時まで、投資金額、回収金額、トータル金額を書き出し、担当編集に渡して確認してもらいます。
―それって、あくまでも自己申告ですよね。ごまかす人も出てくるような気もするのですが……。
担当編集がパチンコやパチスロを全く知らないようであればそういうことも通用するかもしれませんが、普通に知っているので、何時間打てば大体いくら使うか、当たりがこれだけあると回収金額はこのくらいでとか、あくまでも大雑把ではありますが把握しているので、故意にごまかしたりするような人はいなかったと思います。ただ、個人的にですが、いくら負けようと補償があるからと言ってロクに回らない台を打ち続けたりとか、ちょっと足を伸ばせばいい店はいくつかあるのに、面倒だからと言って地元のあまりいいとは言えない店で打ち続けたりとか、そんなことをやっていると、いざ負けた時に負け額を請求しづらいんですね。Aさんはいつも負けていますねとか思われるのは、あまりいいことではないでしょうし (笑)。
-それは確かに (笑)。
ただ、投稿の真偽検証のため、当たるまで絶対に打たなくてはいけない、でもロクに回らない、設置店が限られている、他店に行く時間的余裕はない、そんなこんな悪い条件が重なると、致し方なく負けを覚悟で打ち続けたりすることになります。スーパープレミアムⅠの後、色々な権利モノを打つことになるのですが、ソルジャーの時は大変でした。
―爆裂権利モノですね。
攻略法が存在することは分かっていたのですが、いざそれを実践、検証するとなるとなかなか大変です。「エラーさせたら出入禁止になる店が多いから、そこまでしなくていい。15ラウンドフルオープンだけでも連チャン突入率が上がるかどうか、調べてくれ」と。で、上野周辺まで行ったりしたのですが、とにかくどの店も回らない。10時開店から12時のお昼過ぎまで色々な店で打ち、アッと言う間に3万ほどやられ、怖くなって編集部に電話したことがあります。
―ははは。
ヘソは通過式で、回らなくて、とにかくお金を使うスピードが尋常じゃないんですよ。「このペースで打ち続けたら10万円コースです。それでもまだ打っていいですか」と電話を入れたら、キリのいいところでヤメていいよと、そんな返事だったことを覚えています。まあ、あの頃はよほど無茶なデータ取りでなければ、普通に経費としてお金は使えましたね。まあ、時代が違うので何とも言えませんが、今は何かを調べたりとか、疑問点が生じたりしても、メーカーに問い合わせれば済むことでしょうし、大体発表した数値とかけ離れた出方をする機種なんてないですからね。あの頃は社運を懸けてとんでもない機種を作ったりするメーカーもあったと思いますが、今は社運を懸けるどころか、業界から撤退するとか、廃業するとか、そういった方向性ですからね。その意味でも、ソルジャーという爆裂機を作ったマルホンは経営的に危ない時期もありましたけど、意地でも業界に残ってほしいものです。