―攻略法があって当たり前の時代は当然機械の中身を調べる、解析って言うんですか、そういう仕事を担当する人がどの攻略誌にもいたそうですね。G誌には後に有名になる人が当初から関わっていたそうですが……。
前回もちょっと触れましたが、下田一仁さんですね。元々は広島の方で電気店を営んでいた方です。僕が直接伺ったところでは、ひょんなことからG誌のライバル誌を本屋で見かけてペラペラとページをめくっていたところ、どうにも適当なことが書いてあるので、ちょっと教えてあげよう程度の気持ちで直接出版社の方に電話したそうなんですね。そうしたら、じゃあこちらに (東京に) 出てきてパチンコ台の中身を調べてくれないかと言われ、出向いたのが後々攻略誌で解析を請け負うきっかけになったそうです。
―そんな感じだったんですか。
その頃、下田氏は本業の電気店の経営がなかなか大変で、それもあって何か新しい仕事を考えていたそうなんですね。元々、コンピュータ関係に詳しく、機械の中身を調べることくらいは簡単にできるので、その攻略誌関係で幾つか仕事をしたようですが、ひょんなことからG誌の方に移ってくることになったようです。
―ただ、解析だけでなく、いつしか裏ロム師との異名を取るようになったんですよね。そういったところの経緯を聞きたいんですけど。
雑誌で解析を担当するだけでなく、コラムのようなものも担当されていました。担当編集者との掛け合いみたいな内容ですね。今のパチンコ業界に関する話だったり、業界を管轄する警察行政に関する話だったり、そういった記事を見たホール関係者が下田氏に連絡を取り、解析だけでなく改造はできないのかと。まあそういうところからいつしか裏モノを作ってほしければ下田氏に連絡を取れと、そんな流れになったんでしょうね。ただ、裏と言うよりは小さな改造みたいな依頼も結構あったようです。
―例えば?
デジパチでVゾーンに入らなくてもパンクしないようにしてほしいとか、朝イチ (電源投入直後) だけ高確率になるような改造、まあモーニングセットですね。まあ、そのくらいなら店側としても出過ぎて大変な目にあったとか、そのような心配はしなくていいでしょうしね。
―下田氏の作品と言うか、代表的な裏モノは何か分かりますか?
有名なところではトロピカーナでしょうね。鳴り物入りで登場したまでは良かったものの、Bタイプで出玉は少ない、高設定はまだしも、ホールで日常的に使われる低設定から中間設定では一撃の爆発力は望めない、ハマる時はしっかりハマるし、設置から2、3ヶ月で客が飛んだホールが多かったように思います。ただ、大手メーカーの機械ですから、大量に導入したホールや、まだこれから導入予定のホールも少なくなかった。扱いに困ったホールや販社が何を考えたかは分かると思います。
―それで、ちょっと中身をいじったと。
爆トロって言われてましたけど、まあ裏設定の最高設定はとんでもなく出るようになってたらしいです。ただ、これがきっかけで下田氏は当局に目をつけられ、逮捕の憂き目に遭うんですね。元々、コラムでは警察行政に対する歯に衣着せぬ批判で、それも読者からは好評を得ていたのですが、行政側からしたら当然面白くない。単なる批評、批判なら無視しておけばいいとなるかもしれませんが、堂々と裏も作ってると公言している以上、何かしないとメンツが立たないわけです。
―でも、単にROMなり何なり改造しているだけだったら、検挙するのは難しいですよね。実際に裏基板や裏ROMを売買した証拠や、取り付けの現場を押さえたりしないと……。
その通りで、後から聞いた話ですが、当局としては何としても下田を挙げろとの掛け声の中、逮捕事由をきちんと説明し、後で起訴に持ち込めるか、相当考えたようです。下田氏としては自分が実際にパチンコ台やパチスロ台に正規のものでない基板や改造されたROMなどを取り付けたりはしていないわけで、極端に言えば単に趣味、娯楽の一環として自宅で楽しむために改造ROMを作ってあげた、ゲームセンター用に作ってあげた、実際にどう使われるかは自分は知らないと、そんな風に言い張ることもできるわけです。
―そうなると、依頼したホール関係者も重要参考人になりますよね。
ところが、そう簡単に口を割るものではない。割ったところで、間に何人か人が入ったりしていて、下田氏のところまではなかなか到達できないわけです。何としても風適法違反で検挙したいところなんでしょうが、有力な証拠がどうしても集まらない。そこで当局が取った手段は意外なものでした。
―ほう、それは如何様な?
逮捕する際の事由を変えたんですね。下田氏としては風適法に引っかからないように最新の注意を払って行動していたのですが、まあそれでも当局がその気になればしょっぴくことはできたでしょう。でも、下田氏は一応メディアでそれなりに知名度があったので、後で不当逮捕とか、強引な逮捕だとか、そのように書かれたり、報道されたりする可能性がある。だから、警察当局としては風適法云々に囚われず、メーカーに被害届を出すように迫った。自社のパチスロ機を許可なく勝手に改造した、著作権法違反で被害届を出してくれと。
―はぁ、色々とやり方があるものですねぇ。
そこらへんの細かいやり取りや、逮捕後の話はまた次回話せると思いますが、いかんせんもう30年も前の話になってしまいますし、わたくしの記憶も曖昧なところがあると思いますので、年代的にちょっと前後しているとか、必ずしも正確でない部分も出てくるかもしれません。ですが、事実関係だけは思い出せる限り、正確にお話ししようと思っています。そういったところ、ご了承いただければ幸いです。




ほう、それでは次回は今だにバッチをつけている某に話が及ぶと、BeCaerfulですねぇ、でもないか😛
毎回拝読させていただいておりますが、ただの客でしかない身空では知り得ない貴重な話が窺い知れるというのは、非常に有難いことと感じております。
同時に話に出てくる機種に思い出を反芻し、読み進める度に当時の情景が浮かび、懐かしませていただいております。
下田さんのお名前、懐かしいです。
2006年頃だったか、某攻略誌でもたれていた連載で「いまだに『ぶら下がり』を使った不正が完全にはなくなっていない」「当局が苛立っている」といった旨の指摘をされていて、読者として「へ~そうなんだ」と驚いた記憶があります。期待値稼働をする上で、余計なことは考える必要はないというのがすでに常識でしたので、あるところにはあるんだと当時にして再認識させられた次第でした。
>>ギルさん
警察関係者や政治家など、あの頃のユニバーサルは色々とありました。まあ、4号機になって直接メーカーが関与しないという姿勢を貫いていたのはパル工業と違うところですが。
>>禅寺丸さん
思い出せる限りは色々と面白く、懐かしい話を紹介していきたいと思っています。個人の名誉に関わってくるような話でない限り、表に出してもまあ大丈夫でしょう (笑)。
>>オサイチショージさん
ぶら下がりは一時期、設置台数がダントツに多かった某機種でよく話題に上りました。確変突入継続率約2分の1でここまで連チャンするわけがないとか、まあ色々と情報が行き交っていました。ハーネス類はカシメできちんと封印されていなかった時代ですから、その気になってやろうと思えば何でもできたわけです。現在のパチンコ業界からすれば隔世の感がありますね。