ホールで活躍している現金機を外さないとCR機は普及しない、そう踏んだ行政当局は釘曲げを理由にダービー物語の設置ホールとメーカーの営業関係者を逮捕したが、以降業界は歯向かうことなく、従順にカードシステムの導入とCR機の設置に努めることになる。現金機を中心とした大規模な撤去、入替も行われた。

 前回はダービー物語事件について色々とお話を伺ったのですが、それから3年後、社会的不適合機の撤去という大きな出来事がありました。

「端的に言えば3年の検定期間と更に3年の認定期間を過ぎているから外しなさいという法的な問題ですね。新台認可から3年も経てば世の経済事情も多少なりとも変化しているので、その実情にそぐわない機械は外しましょうと。そうは言っても、多数のお客さんから支持されているので、外すよりは残して営業したいという声も少なくない、そうであれば更に3年間は設置してもいいですよと、ただしそれ以上は駄目ですよと、まあそういうことなんですが、実情は首を傾げざるを得ないものでした」

 と言いますと?

「単に法律論だけで言えば、先にも言ったように6年間を過ぎての設置はダメですよで終わる話です。でも、検定通過日から撤去予定日までの年数で6年経っていない機種が普通にリストにありました。まあ、それは3年経ってから認定を取っていない機種と思われますが、そうであれば認定を取りなさいと指導すればいいだけで、いきなり外せとはならないはずです。ですから、単に法的な根拠だけで撤去対象機種を決めたわけでは決してなく、その仰々しい名称通り、社会通念上好ましくない機種ということです」

 リストをちょっと拝見したのですが、現金機ばかりで、そのほとんどが連チャン機です。

「これを決定したのは業界側、当時の組合ですね。行政側は一切関与していないというカタチですが、まあそういうことにしておいた方がいいのでしょう (笑)。法律論と言うより、単に現金機の連チャン機を外してCR機を入れましょうという話です。まあ、個人的には当時のアレパチは何らかの規制、指導が入っても仕方がないとは思いますが、元々検定はきちんと通っているのだから、おかしな話なんですよね。検定時は連チャンしなかったとか、そんなことであればもっと厳しい判断を下しても良かったと思いますが、そういうことはなかったです」

 CR機は花満開とビッキーチャンスくらいですね。

「他にCRバレリーナ (平和) とCRグランパス (ニューギン) がありますけど、まあほとんど設置されませんでしたから、影響は少なかったと思います。一番の問題は現金機の麻雀物語 (平和) やF・パワフルIII (SANKYO) が社会的に問題ありとしているのに対し、当時の確変2回ループのCR機は花満開以外は社会的に全く不適合ではないとした組合の見識ですね。大当り確率約400分の1で確変2回ループのCR機と前述の2機種に代表される現金機の連チャン機、果たしてどちらが社会的に問題があったのか、今となっては答は明らかでしょう」

 後に規制されるんですよね。

「96年の秋頃、確変は次回まで、確変突入・継続率は2分の1を超えない、確変継続は5回まで (80ラウンド規制。1回の大当りが16ラウンドなら継続は5回まで。5回リミッター機と呼ばれた) といった内規が定められました。社会的に何の不適合もなかったのに、いきなりこんな内規を発表するのだから、当時の私はこの業界は一体何をしたいのだろうかと、本気で悩んだものです」

 悪名高き、5回リミッター時代ですか。

「4連した後の脱力感がねぇ……。次は通常図柄と分かっているのだから、消化ゲームのようなものです。また、この年には変造カード問題も表面化したんですね。東の日本レジャーカード、西の日本ゲームカード、両者合わせて630億の変造被害というのだから、呆れる話です。偽造、変造の心配は一切なし、セキュリティは万全と大風呂敷を広げていたのは当時のNTTデータ通信です。パチンコにもカードシステムをと盛り上がっていた頃、既にテレカの変造が問題になっていたんですよね。それを分かっていたにも関わらず、このシステムには警察と大手商社が関わっているから大丈夫だろうと、余裕をかましていたわけです。変造カードで闇社会に億単位の金が流れ、CR機の高いギャンブル性はパチンコ依存症という言葉を世に広めることになりました。それで仕方なく、今度は社会的に不適合だから2回ループ機はもう作らない、売らない、これからは新内規の機械でいきましょうと、馬鹿を見たのは中小のホールですね」

 結局、ホールは何らかの機械を入れないと営業できませんからね。

「ホールの稼ぎ頭で、客からも支持されていた連チャン機を仕方なく外し、代わりに高いカードシステム料を支払いながらもCR機を導入、それで何とか経営も安定し始めた頃に、今度はその機械はやっぱり良くないから外してね、新しい機械はロクなものじゃないけど我慢してねと、機械メーカーとホールの組合双方がそんな姿勢でいるのだから、当然そんな業界は廃れますよ。その頃、中小のホールさんへ取材に行ったことが何度もありましたが、やっぱり不平不満は相当なものでした。オフレコのようなカタチで、組合はロクなものじゃない、組合はホールを助けないと、そんな言葉は本当に良く聞きました」

 その頃から早30年、店舗数は減少の一途を辿っています。

「ピーク時が95年の約1万8千軒、2024年末で約7千軒ですから、何と言うか、良くここまで減ってしまったものです。以前、あるホールの主任クラスの人が言っていたんですが、近くにライバル店ができると、潰れてしまえばいいんだと本気で言うのはこの業界くらいですと。他の業種では、いい刺激になるし、お互い競争して頑張ろうとなるのに、この業界はそんなものですと。だから、何かルールを組合で決めても、必ず抜け駆けするところが現れる、やったもん勝ちになる、元々組合を信用していない、まとまりがない、そんな状況ですから、伸びるわけがないんですよね。また、少子高齢化で遊技人口は自ずから減ると分かっていたはずですが、そういう現実的な危機感もなかったようです」

 今後も厳しい状況は続きそうです。

「まあ警察行政の思い通りにはなっていますね。1万軒まで減らすのが目標だったようですし、生き残っているのはほとんどがチェーン展開する大手のホールですし、行政の言うことに歯向かうようなことはまずないでしょうし。あと、行政は昔から釘云々に関しては本当にうるさいですけど、個人的には釘調整の余地だけは残してほしいですね。今はメンテナンスという名目で、かろうじて黙認されているような状況です。メーカーもホールも釘調整云々に関しては特に要望なんぞは出していないようですから、近い将来、誰が打っても回転数は同じ、設定付きで釘調整不要といった機械ばかりになる日も近いかもしれません。寂しい限りですけどね」