4月29日(祝)晴れ

 本来、育児予定だったこの日のお昼ごろ。急遽、妻がチビを連れて出かける事になり、予期せぬ休みが舞い降りる。そんな時間を仕事にあてる事はいくらでも出来るものの、この僥倖は遊ぶ一手とスマホを手に取りダメプロT氏に打診した。

万「T、今日どこおるん?」

T「東京の東の方やで」

 調べてみると片道約1時間半。わざわざ非等価のパチンコを打つ為に、そんな遠くまで出向く理由など本来ない。しかし、上記のやり取り前から帰りたいオーラをぷんぷん漂わせていたT氏と酒を飲む格好の機会が訪れたので、そそくさと身支度をして電車に乗り込んだ。家を出ると五月晴れの好天。そんな中、GWの序章として家族サービスをするでもなく、ぱちんこ屋に向かうあたりは、これまでもこれからも、きっと変わらないボクのヘキ。

 ホールへ向かう長い道中、T氏から色々話を聞く。どうやらP真・北斗無双 第4章が23個くらい回るらしい。それなら現金投資で当たらなくても、遊ばせてもらえる範疇と期待に胸を躍らせた。普段は滅多に見ない現役台の実践動画を手元のスマホに流していれば、1時間半などあっという間だ。2本のコーヒーをスーパーで買い、外の快晴とは対照的な、やや暗いホールの扉をくぐった。

 

 まずはT氏にコーヒーを渡し、ぐるりと釘を見て回る。周年イベント&人気の女性演者が来店&GWで、店内に空き台など無いかと思いきや、4円パチンコは4~5割稼働といったところか。28玉交換で23個の北斗無双が期待値的にナンボのもんかなど、物見遊山なボクには関係ない。ただ、恐らくゴリゴリのプロが打つような台はこのホールには無いのだろう。実際、沖海5か北斗無双以外は、お金を入れるまでもないツラをしていたので、ここは素直にT氏のいるシマに腰を下ろした。

2500円。46回転目

 地元のホールでは20個/千円を超えるような台なんてまず拝めないだけに、必要十分と思っていたところでいきなりの先バレ。T氏の恨めしそうな視線が気持ち良い。リーチの種類など何一つ知らないが、先バレとやらが熱いことくらいは知っている。打ち出しを止めて身構えていたら、素直に当たってくれて右打ち開始だ。しかし、射止めたのは通常図柄。100回の時短で何が起きるわけでもなく、あっという間に再び通常画面へと切り替わった。

 速い速いと聞いてはいたが、ものの1分で100回時短が終わる呆気なさに、早くもココロの中がざわつき始める。

追加4000円 93回転目

 プレミアカスタムをしていたら、ド派手なレインボーが画面に登場。当然の如く当たってくれ、確変にも突入。この台の確変継続率は75%らしいので、まぁ3連もしてくれたらお金を使わず楽しめるだろうと余裕の心持ちで右打ち開始。すると…。

 別に確変単発などこれまで数え切れないほどに経験している。だが、このスピードはなんなんだ。今回はたまたま早い回転数で当たりを引けているから良いものの、1/319の51%、つまり約1/640を射止めて迎えるパチンコ最大のお楽しみタイムが、たったの1分で終わるのは先の時短とは比べ物にならない衝撃だった。その後、

 再び早い当たりから確変に突入し、それなりの出玉を得た。投資はたったの6500円。いやぁ、もういい。十分だ。T氏が持ち球を飲まれたところで手仕舞い。最低交換額が2000円という恐るべき東京のシステムも、パーソナルなら出玉調整が利いて助かるところ。片道にかけた時間にも満たない着席時間で腰を上げ、早々に酒場の暖簾をくぐった。

 今回は75%継続の台なので、それほど大きな塊になるケースは稀だろう。これがラッキートリガー機のように90%を超える継続率ともなれば、確かに速さは必要かもしれない。パチプロのように朝から晩まで打てる人の方が世の中には少なく、コスパ・タイパが叫ばれるこのご時世には、この速さもメーカーが出した一つの解か。そして、ホールの中には他の選択肢だってある。人気になったエヴァ15の確変はこんなに速くないとは聞くし、これはあくまでも数多の台の極一部。それは頭では分かっている。分かってはいるが……ただただ性に合わなかった。

T氏「最近の玉、情緒がないんすよ」

 これが一番シックリくるところか。情緒などという個人の感性に左右されるものでメーカーが台を作っているわけではないのは百も承知ながら、当たりもハズレもただ数字が流れていくだけの確変に、なんら楽しみを見出せなかった。こんなものはただのギャンブル機であってパチンコ台ではない。こんな台を作るなら版権などいらないじゃないか。そう思ってしまう自分が老害なのは自覚しているし、単純に台のチョイスが悪かっただけなのだが、酒が進んだT氏と散々今のぱちんこについて愚痴を垂れ、家路に着く。

 勿論、勝った金で飲む酒は最高だ。T氏との時間も楽しかった。この速さを体感できたのも一つ勉強になった。だが、このココロに残るモヤモヤはなんだろう。コレは本当に打ち手が求めた台なのか。

 きっと、そんな問いに答えが出る日など来ない。いつの時代もメーカーやホールは射幸性を武器に打ち手を煽ってきた。それが行き過ぎて規制がかかり、抑えられた射幸性をかいくぐる機械が出てこそぱちんこ業界は盛り上がる。そんな歴史を繰り返してきた。ギャンブル性を高める事は、打ち手も望んできた事だし、業界側がそれを見越しているのも分かっている。

 だが、それらは全て過去の話だ。ボクが知るこの20数年間もずっと繰り返されてきた事ながら、それでも右肩下がりを続ける遊技人口に対し、果たしてこのままで良いのだろうか、という疑問がどうしてもぬぐえない。とは言え、その問いに答えを出すのは我々打ち手側ではない。ボクらは所詮、ある台の中から選ぶだけだし、ホールへ行くかどうかを決めるのも我々だから、ツマラナイと思うなら打たなければ良いだけの話なのだ。そこから先は、我々にはどうする事も出来ない。

 この日、ボクのもう二度と打たないリストに1台が書き加えられた。その他の右が早い系の台たちにも、殊更興味もなくなった。そして、それらが礼賛されてホールの主役を張るならば、これからも主流から外れたところで生きて行こう。パチプー経験者の居場所なんて、元よりそのあたりがお似合いだから。


■万回転 プロフィール

  • 1978年生まれ ♂ 
  • 累計15年間パチプロしちゃってごめんなさい
  • CR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上した事を機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。
  • 現在は悠遊道動画チャンネルの何でも屋

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