基本的に「(いい意味での)作り物」が好きな性分なので、何が起きるか分からない、予定調和と真逆の「スポーツ」というものにはあんまり興味がなく、普段は野球もサッカーも何も観ない男なのですが、決してそれらが嫌いなわけじゃないので、オリンピックは結構観ました。やっぱ若者が(同じ四十代の選手もいましたが)必死に頑張ってる姿というのはプリミティブな美しさがあり、翻って自分のダメさを再確認するや「おいおい、俺もなんか頑張んねぇとダメだな!」みたいな気分になった次第。

選手の皆様、お疲れ様でした。月なみな表現ですが、感動をありがとうございます。

で、まあ今回のオリンピック、アスリートのみなさんが素晴らしかっただけに、ただもう開会前のグダグダ感にかなりゲンナリしましたね。まあグダグダになるにはグダグダになるだけの理由があってそうなったんだと思いますが、それらをひっくるめて「日本」という国が抱える根本的な病理みたいなのがヒシヒシと伝わってきてしんどさを覚えました。色んな意味で、ああいうのはあんまり良くない。

とはいえ、ドラクエの曲にはテンション上がりましたけどね。

 

さて。今回はオリンピックもあったことだし、ちょっと筆者のスポーツ遍歴を書いてみたいと思います。といっても一個しな無い上に超短期でヤメてるんですが、それが「バレーボール」です。中1の時やってました。が、ほぼノータイムでヤメてます。たしか夏休み前にはもうヤメたんじゃないかな……。

理由は「先輩がキ○ガイだった」からです。

なんかのタイミングでそのキティと一緒に下校したとき、そいつが筆者に「おいお前、あそこの家のピンポンを押してこい」みたいな事を言うわけですね。で、筆者は「ああ、何か知り合いの家なんだな」と思って言われた通りピンポンするわけですが、どうもそいつは毎日そこでピンポンダッシュするのを日課にしているらしく、怒り狂ったおじいちゃんが待ち構えたように出てきて筆者の腕を掴み、なんかしこたま叱られました。んで、それだけだったらまあ良くはないとはいえただの思い出になったのかもしれませんが、普通に通報されるというちょっと洒落にならん状況になり、必死に事情を説明して補導こそ免れましたが、翌日に校長室に呼び出されてさらに5人くらいの先生からめっちゃ怒られるという、今思い返してもかなり腹立たしい事になりました。

で、放課後です。練習のために体育館に行くと、キティが筆者に命令してピン逃げさせたという事実が顧問の先生にバッチリ伝わっており、折檻のつもりか、そのキティが延々と「一人でシャトルランしながらのレシーブ練習」させられておりました。何かハァハァいいながら必死に走るキティ。「オラ、まだいけるだろ」みたいな事を言いながら時折ボールを打つ先生。ひととおりシゴキが終わったあとは二人して「これでもういいな?」「遺恨なしだな!」みたいな感じの視線を筆者に送ってきます。ビバ・青春!

(あ、このノリ、俺無理だわ)

この時点で「いちぬけた」を半分くらい心の中で決めてたのですが、さらに事件が起きます。まあその日もその先輩と一緒に帰ったんですが(帰るなよ)、そいつまさかまさかのまた同じ家にピンポンダッシュやらそうとするんですよね。筆者に。しかも結構真面目にぶん殴るぞくらいの勢いで言ってくるわけです。

(やべえこいつキ○ガイじゃねぇか!)

なんでそいつがその家に執着してたか知らんのですが、前日に直接話したところマジで普通のおじいちゃんで、特になんか確執があるとかはなさそうだったんですよね。ただ下校途中にある、ピンポンしやすくて逃げやすそうな家であるという、おそらくはそれだけの理由であります。

いや、これまあどうしてもというならピン逃げしてもいいけど、じいちゃんも既に事情を知ってるし、怒られるのお前だけぞ? そしてお前はまたシャトルを泣きながらやるハメになるんやぞ。と。普通なら損しかないんですが、そのキティにはその辺の勘定が出来ない、結構ギリギリの人だったんだと思います。

で、筆者、中学校の頃はまあまあ身長が高くその先輩とあんまり変わらず、んでオヤジがめちゃくちゃ怖かったんで怒鳴られ慣れてたのもあって、その先輩に対して「怖い」とかいう感情は一切湧くことがなく。ただ「人間的な嫌らしさ」みたいなのを感じて、嫌悪感でいっぱいになったんですね、何か視界に入れるのも汚らわしい感じというか。だからもう、完全に無視してスッと帰り、んで翌日「アイツまたオイラにピン逃げさせようとしやしたぜ」というチクリと一緒に退部届も提出。以来、バレーボールには触ってません。

キティ、もしかして後から何か言ってくるかなと思ったんですがそれもなく。卒業するまでたぶん一回も口聞かなかったと思います。

これで筆者の人生ときゃつめは無関係。よっしゃよっしゃと思ってたら、なんと、何年かして自動車教習所でたまたま一緒になってしまいました。んで「こいつすげー頭悪いのにちゃんと仮免受かるんか」と興味を持った筆者はそいつの受講者ナンバーみたいなのを覚えて勝手にカルテ(?)を見てたのですが、案の定何度か卒検で落ちており、「ほらな!」と爆笑してたのを覚えています(筆者も黄色信号で進んじゃって一回落ちたけど)。

最後に目撃したのは24くらいの頃。当時の彼女とドライブがてら寄ったモスバーガーでした。ふと注文中にイートインの所をみたらそいつが一人で座ってモスチキンを貪っており、んで目が合った刹那、「よぉ」と手で合図してきました。筆者も反射的にに「よぉ」と返事を返しそうになったのですが、いやいやこいつはあいつぞ、とすぐに気を取り直しシカトを決め込み、そして、なんだか彼女の姿をそいつの視界に入れるのも気持ち悪かったので、何も買わずにすぐ店を出ました。

「さっきの、誰?」

助手席に座る彼女が怪訝な顔で聞いてきました。キーを回してハンドルを握り、どっか近くに他のバーガー屋さんあったかな……と頭をめぐらしながら、筆者はこう答えたもんです。

「バレー部の先輩」
「え、ひろし、バレーやってたんだ。初耳なんだけど」

やってたというか、やろうとしたというか……。口ごもりながらアクセルを踏み、そうしてちょっと、自嘲しながら言いました。

──中学の頃、3ヶ月だけね。