禍福は糾える縄の如し……。

家の近所のホールの屋号が、建物そのままに別のものに変わった。いわゆる「居抜き買収」というやつだ。

なにげにそのホールが別の法人に買われたという情報はかなり前に入って来てたし既に諸々譲渡も完了してたっぽいので屋号も既に変わってて然るべきなんだけども、半年くらい何も変化がなかったので「このままずっともとの屋号のまま営業するんだろうな」と思いこんでたのだけども、こういうのを予断というんだろう。

なんせ屋号が変わるということは看板から何から付け替えるということだ。当然内装も新しいグループのものに併せるために改装するんだろう。数日休むんであればこの機会にシマ構成を変えるだろうし、下手したらこのご時世に沿うようにパチンコのシマ設備をちょっと増やすかもしれん。

そう。それはもうグランドオープンなのである。

すっかり油断してたけど、家から一番近い店。なんなら徒歩二分の店がグランドオープンである。たまるか、早速並んでオープン当日と翌日分の入場券をゲットしてきた次第。こういう時、店舗愛というのは粋なオプションになるらしく、つまり、元のお店の会員カードを持ってる人はちょっぴっとだけ優遇されておったし、また入場券も地元民は先行配布であった。

これは何とも意外な展開だ。

嫁さんとまったりグルメ尽くしの予定だった黄金週間に、「パチスロ漬け」の2日間がぽんと入った感じである。果たして何を打つか。というか筆者、人生の中で体験したグランドオープンでパチンコを打ったことが一回もない。オールウェイズパチスロである。いまパチとスロの稼働比率が半々くらいになっとるし、いっそいっちゃうか、パチンコ。なぁ!

と、めっちゃワクワクしながら帰宅してる最中、これまた近所の「一蘭」に寄った。一蘭というのはちょっと高いけど美味しい事で有名なとんこつラーメンチェーンなんだけども、筆者これが世界一上手いラーメンであるとずっと思っており、19歳くらいの頃にはじめて福岡で食って以来の大ファンなのである。

いやぁ、パチ屋はグランドオープンするし一蘭はウメェしでめっちゃ良い日だなァこれ! とか思いつつ、いつもと変わらぬチューニングでオーダーした麺をすする。んですすってからちょっとクビを傾げ。スープを一口。また麺。またスープ。何度か繰り返して思わず唸った。

ついに飽きた。

とうとう俺は一蘭に飽きたのだ。どんな好きなもんでも二十年くらい食い続けてればどっかで飽きる。というか正直一昨年くらいからだいぶ来てたんだけども、俺は目の前にある辛い現実から意図的に目をそらしておった。だが、もうそらすにそらせぬ「飽き」が、さながら一滴ずつ垂らし続けた液体がコップのフチからどろりと垂れて白日のもとに曝されるが如く、もう無視できないものになってしまった。

一蘭。飽きて尚、れんげでもって濃厚なスープを口に運ぶ。味わう。飲み下す。若い頃、味わうごとに湧き上がってきていたあの恍惚は、もう気配すらなかった。こうなってしまうと、もはや一蘭は海苔2枚が120円するラーメン屋という以外に、何も言うべきことがない。

呆然自失。

一蘭への情熱の喪失はイコール、自身の老いを認めることに他ならない。なんせ筆者自身よく言われていたのだ。良く四十超えてそんなこってりしたの食えるな! と。言われたこっちは心の中で(だって若いもん)と舌を出しつつ「いや~キツイんですけど好きなんですよォ」と答えておったが、いよいよ駄目だ。食えんもうこれ。オイラ本日より「よく食えんな!」チームです。

なんせ初めて替え玉頼まなかったからな……!(コスパ極悪)