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パチンコ業界の長年の懸案と言えば、やはり換金問題だろう。それを解決しようという動きは昔からあった。90年代に入り、監督官庁である警察庁も本格的に動き始めたのだが、いつしかその動きは鈍くなり、今は特に目立った動きはない。後は業界自ら動き始めるべきなのだが……。
カードシステムの普及やそれに伴うCR機の登場、また様々な自主規制など、ここ数回は90年代の興味深いお話が続いていますが、この業界が抱える問題点と言えば、やはり換金システムだと思うんですよね。そこにメスは入らなかったのですか。
「景品に商品券やビール券を出せるよう、警察庁が風営法の改正を本気で考えていた時期がありました。94年の夏頃でしたか、確か新聞にも載った覚えがあります。有価証券を商品として出すこと、その商品を買い取る第三者機関を設け、買い取りや換金を制度化すること、そんな内容ですね」
そこまで踏み込んだ改正案だったんですか。
「警察がきちんと業界の将来を考えていることが分かり、個人的にもちょっと期待しましたね。近い将来、わけの分からないライター石とか香水とか、そういったものを路地裏の小窓に差し入れて現金と交換するという行為から卒業できるかもしれないわけですから」
東京はTUCがほとんどですよね。
「紆余曲折を経て、ほとんどがTUCを利用するホールになりましたね。わたくし、過去の投稿でも触れていますが、本格的にTUCに移行するまで、色々な特殊景品がありました。ほとんど匂わない香水とか、変色しているコーヒー豆とか、歯ブラシとか、今思うと本当にアングラな感覚になります (笑)。地方に行けばまだ色々と面白い特殊景品を扱っている交換所もあるのでしょうが、都内近郊ではほとんど見かけなくなりました」
場所とか、ちょっと分かりにくいところにある交換所とかありましたよね。
「そういうところにある交換所に限って、エラく態度が横柄だったりします。中には最初に札だけ出して、端数の500円玉を後から時間差で出してきたりする。札だけ受け取って安心してしまうと、端数の500円をくれてやったことになります。前のお客さんが取り忘れているので、次の僕が500円玉を取って渡してあげようとしたら、スライド式の引き出しをサッと引かれて、何もなかったことにされたことがあります (笑)」
最低ですねぇ。
「でも、きちんと店内で有価証券なり、それに準ずるものに交換し、店外で警察公認の買取店で現金に換えるとなれば、さすがにセコいちょろまかしの類は無くなるだろうし、何より堂々と換金ができることをパチンコやパチスロを知らない人に説明できるわけです。グレーだとか、法律上微妙だとか、まあ色々と言われる可能性がなくなるのですから、特に深く考えることなく、その方向性で進んでいけばいいと思っていました」
でも、結局今現在も特殊景品に交換して、両替所で現金化するという流れですよね。
「どこでどう頓挫したのかは僕も良く覚えていないのですが、関係省庁が否定的だったようです。例えば、偽造の商品券が大量に出回ったりしないかという至極単純な疑念はもとより、国税庁酒税課はビール券はあくまでもビールと交換すべきであり、パチンコの景品十数兆円ものビール券が出回るとなると大混乱の可能性があると答えていました。また、法務省は有価証券を商品に出させたいとは何のためか。暴力団排除なら暴対法があるではないかと言い、内閣法制局は風営法ではなく、別の特別の法律でも作らない限り、刑法の賭博罪はクリアできまいとコメントしていました (ともにアエラ94年10月10日号より簡略化して引用)」
うーん、現実的にはなかなか難しいんですね。
「業界側も期待していたと思うんですよね。ホール団体の全日遊連も陳情書を提出しています。幹部は『経営者のほとんどは現状のままでよい、というのが本心。景品の換金問題がクリアされれば大商社などがパチンコ業に参入して、我々は潰される、と言う。だが、現在の不明朗な形で子供たちに事業を継がせられますか、と説得して陳情書を出すことに決めた (同アエラ94年10月10日号より引用)』とあります。将来をきちんと考えているんですね。今さえ良ければいい、自分たちさえ良ければいいという考えではなく、自分たちの子や孫の代を考えているのだから、この業界も捨てたものではないと当時は思いましたね」
真面目に業界の将来を考えていた人たちがいても、それ以降、業界規模そのものが小さくなり、今や最盛期95年の1万8千店舗の半分にも満たない店舗数しかないのは悲しいことです。もし、換金システムが当時議論されていた通りに変わっていたとしたら、業界のイメージも数段上がり、店舗数の現象にも歯止めがかかったのでは?
「うーん、元々警察庁としては店舗数が多すぎるからある程度は減らしたい、減らした上で換金合法化の道筋をつけたいと考えていたようなんですね。と言うのも、当時の規模のままに換金合法化となれば、即全国1万8千軒のカジノが出来上がることになります。先進国でそれはあり得ない。合法化を真面目に議論するにしても、まずは減らさないと始まらない、そういうことだったと思います。ただ、現状は減りすぎですよね。2025年末時点で、全日遊連加盟店舗数は6千店舗を切っている。合法化の議論から早30年を過ぎ、ここまで減るとは行政側も業界側も考えていなかったと思います」
今後はどうなるのでしょうか。
「議連もあることだし、今一度換金合法化に向けてきちんと議論を進めてほしいと思います。機械の基準をめぐって行政側とぶつかったりすることはこれからもあるでしょうけど、その熱意を換金問題の方にも向けてほしい。有名アニメや芸能人とのタイアップ路線で、一昔前に比べて業界のイメージは相当良くなったはずです。老若男女、誰もが1人でも普通に入れる雰囲気になっているのですから、業界は現状のまま流されることなく、先を見据えた行動を取ってほしいと思いますね」



