先日、引き出しの奥から未使用のテレホンカードが大量に出てきました。

これはその一部。

大量と言っても20枚かそこらで、しかも全てが50度数につき、金額的には約1万円に過ぎないのですが、私と同じ世代の方々なら、机の奥を探せば1枚や2枚は残り度数のあるテレカが出てくるんじゃないですかね。こうした休眠テレカの総額は1兆円を超えると言われており、その全てが日本電信電話株式会社(NTT)の旧・電電公社時代からの資産になってたりするんですよ。

まぁ、かつてはテレカのコレクターも多かったですから、NTTの資産という現実は納得いかないけど仕方がない。一時期、斉藤由貴のテレカ(デビュー曲「卒業」のプロモーション用・非売品)に最高で17万円のオークション価格がついていた…な~んて話もあるくらいですし、そんなん勿体なくて使えるわけがないですものね。もっとも、コレクターの中には値段を吊り上げるだけ吊り上げて、さっと手を引いて一財産を築いた、頭の良いブローカーもいたんじゃないかと思います。

 

ところで、驚いたのは、今の若いコってテレカを知らないんです。使うんなら何枚かあげるよと、19歳の娘に言ったところ、返ってきた答えは「テレカってなに?」。なるほど、今はみんなスマホを所有してるから、テレカなんて使う機会がないんだね。そういえば、最後に公衆電話を使ったのは何年前だったろう? 

少なくとも、私がこの仕事を始めた当時、テレカはデータ取りの必需品でした。いや、もちろん携帯電話もすでにあったけど、基本料金も通話料も驚くほどお高くて、とてもじゃないけど貧乏なデータマンには手が出ませんでした。ガイド編集部では最初にアニ氏がケータイを購入しましたが、全員がケータイを持ったのは98年頃じゃなかったかと思います。ただし、私の場合は受け専用(ガイド編集部との連絡用)で、自分がかける際には専ら公衆電話を探してましたけどね、ええ。

 

…とまぁ、そんな枕を振ってみましたが、今回の本題はここから。

当時、私は杉並区の井荻に住んでいたんですが、駅前にパーラー・バーディー(仮名)という名のパチンコ屋さんがありましてね。アパートから徒歩1分という絶好のロケーションにつき、プライベートの稼働は大半がこの店でした。

※注・写真を見れば本当の店名はバレバレだけど、現在も元気に営業しているお店につき、あえて本文中では仮名にしました。

でもって、この店は毎月10日と20日が「バーディーデー」…つまり、お店の名を冠したイベント日となっており(くどいようですが、広告宣伝規制が始まる遥か以前のお話なので念のため)、この日は開店時に並んでいるお客さん全員にテレカが配られたんです。ちなみに、後に過激化の一途を辿る高設定イベントや甘釘イベントの類じゃありません。ただ単にテレカを貰えるだけです。だけど、それでも嬉しいじゃないですか。

すごいと思ったのは、その時に配られた未使用テレカを10枚集めると、5千円のパッキーカードに交換できたこと。50度数のテレカを10枚なら5千円のパッキーと同価値ですが、バーディーデーの朝イチに5ヶ月通えば、ただでパチンコを5千円打てるんですよ。実際に、バーディーデーの朝だけは、普段はまるで見かけないお爺ちゃん客やお婆ちゃん客が多かったような気もします。まぁ、私の場合はガイド編集部からデータ取りの仕事を結構な数いただいてたので、必ずしもバーディーデーに毎回参加できたわけじゃないですけどね。でもまぁ、それでも2回は5千円のカードに交換してます。古き良き時代のサービスですねぇ、いやホント。

 

そして、さらにすごいのは…実は使用済みパッキーカードにも使い道があったんです。この店のパッキーには裏面の右上に店名のスタンプが押してあるんですが、使用済みパッキーを30万円分集めると、未使用の5千円パッキーに交換してくれました。

通常、使用済みパッキーは捨てるしかない。つまりマナーの悪い客は台に放置したり、そのまま床に捨てたりしてましたが、この店の客はみんな使用済みパッキーを持ち帰るんです。もちろん、中には使用済みパッキーを捨てて帰るお大尽の客もいますけど、そんなゴミは常連のお爺ちゃんが全て拾って帰ってくれます。お陰様をもって、店内はいつも綺麗。果たして、店側がそこまで考えていたのかどうか知りませんが、なかなか面白いアイデアだなぁと思ったことを覚えています。

その後、このイベントは組合に問題視されたのか、それともお店側が費用対効果が悪いと判断したのか、いつの間にか廃止されちゃいました。今の若い人は、おそらくテレカだけじゃなくパッキーの存在も知らないんじゃないかな? まぁ、テレカもパッキーも、およそ磁気カードと呼ばれるプリペイドカードは例外なく偽造されました。上野公園の近くを歩けばカタコトの日本語で「オニイサン、テレカあるよ、パッキーあるよ」と話しかけてくる外国の方が多くて問題視されたため(もちろん、私は一度も偽造カードを買ったことはありません)、形を変えざるを得なかった…っていう側面もあるんですけどね。昔は本当にいろんなことがありました。

おしまい。

 

 

今回のおまけ。

フローズンナイツのテレカです。当時、ユニバさんに取材に伺った時に頂戴したんですが、今も未使用・未開封のまま大事に保存しています。そういや、いちばん上の写真にサミーのウルトラセブンのテレカが写ってますが、こういうテレカにはプレミア価格がついてないのかしら(笑)。

 

なお、今年はこれでコラム更新終了です。

それでは皆さん、良いお年を!