動画収録の裏側 その2

「やらせじゃない、演出です」

 その後も自分には動画のオファーがいくつかあった。別にすごく出たいわけでも、自分が動画に向いているとも思わなかったけれど、
「まっ、別にいいかな」
くらいの軽い気持ちだ。
今の若い人たち、
「動画に出て顔と名前を売って、先の仕事に繋げたい」
なんて方々に比べると、真剣味がなくてすみませんって感じだ。

 でもまあ、それは時代の違いってことで。自分はよく
「安田さんは下積みをしていない」
と下の世代に言われるんだけど、そんなん知らんがな! やれといわれればやったかもしれないし、出版社にも「やれ」と言われなかったんだから。

 また、そういう発言には
「能力の割に楽してきたね、アンタ」
的な意図を感じてしまうのだけれど、謝まればいいのかなあ。でも、自分が当人に謝っても、あなたの環境は何も変わらないしねえ。

 結局、「評価は他人が決めるもの」という結論に落ち着くと思うんだよ。自分も
「連載終了です、お疲れさま」
と言われたら、それはそういう評価だと納得して
「あざっした」
で終わる話しだし。
 世の中には需要と供給の関係があって、自分の世代は誌上プロをやっている人、その中で他のメディアに出てもいいという人があんまりおらず、自分は特にこだわりもなく出演にOKを出した。それだけのことだ。

 そうそう、動画仕事の続きがテーマだったよな。印象深いのはダウジングというオカルト的占い? の方とパチンコ対決をした仕事だ。
 あの時は、ジグマとして当時通っていた店の許可を取り、深夜にロケをさせてもらったんだよな。始まるまではマンガ的に
「プロが素人さんには負けられんぞ!」
と盛り上がっていたのだが、いざ始まると、対戦相手の方はパチンコは初体験。呆気にとられるわ、遊戯方法をスタッフに教えてもらう対戦相手さんが可哀想になるわ…。

 というわけで、途中でどうでもよくなってしまったのだけれど、事件はその後。
 対決は単純な早当てで、「先にデジタルが揃った方が勝ち」という物だった。低確率の3回権利モノに座る相手さんを見ながら、自分は初当りが甘めのデジパチに着席。
 当然のように自分が先に当てて運勝負を制したのだが、スタッフからは
「安田さん、すみませんがもう1回」
自分は
「えっ?」
 ああ、これがやらせ、じゃなかった演出というやつかい??? でも、素人の自分にTVの製作さんたちを説教などできない。
「わかりました。当たりにくい機種をやればいいんですね」
の皮肉なセリフが精一杯だったなあ。ロケ場所を貸してくれた店長さんも固まってたし(笑)。
 スタッフさんたちの苦笑いの中、そんな収録も終了。オンエアされた番組には、なぜか引き分けになっている勝負結果が…。民放なんてたいていがそんなもんだ、チャンチャン。