昨年4月の休業要請に従わず、店名を公表されたホールが相次いで閉店の憂き目に遭っているというのだが、公表されたから閉店につながったというわけではなく、元々要請を無視して営業しなければいけないほど、経営状況が思わしくなかったのだろう。ただ、要請に応じた結果、閉店に追い込まれたホールもあると思われる。全国的に店舗数の減少は続いており、ホールを束ねる組合の役目というものも考えてみたい。

 1月下旬、栃木県日光市のパチンコ店2カ所が相次いで閉店した。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言下の昨年4月、いずれも休業要請に従わず、店名を公表された。栃木県遊技業協同組合の金淳次理事長が明かした。

 「公表された6店のうち、かろうじて残っているのは2店だけですよ」

 栃木県は昨年4月18日、映画館や博物館などに休業を要請した。パチンコ業界も9割を超す店が応じた。それでも営業を続けた店の事情を金理事長は推し量る。

 「明日の支払いができない。社員やその家族の生活を守る……。理由は様々でしょうが、切羽詰まった業者もいたと思いますよ」

 県は、休業しないと店名を公表すると事前に通知し、最後まで残った6店が対象となった。4月29日の公表後、5月1日までに全店が休業した。「一律30万円の協力金では…  ~以上、無料記事ここまで。朝日新聞DIGITALより引用~

 昨年の今頃はこの業界も相当叩かれたのだが、所詮はギャンブルゆえ、不要不急、こんな時にパチンコ、パチスロなんてもってのほかと白い目で見られてしまうのは致し方ない。ただ、そんな雰囲気の中でも、約20兆円の市場規模を誇る産業ゆえ、生じる社会的責任が非常に大きいのは自明の理である。だからこそ、行政の要請にはきちんと応えなければいけないわけだが、社員や家族の生活がかかってくるとなると、綺麗ごとは言ってられないとなる。

 この業界はある意味ではグレーゾーンの上に成り立っているとも言えるわけで、行政のさじ加減次第で、法律の解釈次第で、例えばほんの少し釘を動かしただけでも取り締まれるような状況にある。そのような、いい意味でも悪い意味でも ‘適当’ な部分が多分にあり、だからこそ、休業要請 ? なにそれ ? のようなホールが出てきたりするわけで、この業界の悪癖でもある。

 前述したように、休業要請を無視したホールが結果的に廃業に追い込まれても、それは元々休業要請を無視せざるを得ないほど経営状況が逼迫していたわけで、要請の有無に関係なく、もたなかっただろうと思われる。ただ、素直に要請に応じたホールの中でも、結果的に廃業せざるを得なくなったホールは少なくないだろう。

 パチンコ店からクラスターが発生したというニュースは未だ聞かれない。どのホールも遊技台のアルコール除菌や台間の飛沫防止ボード等の感染対策はきちんとやっており、現状、緊急事態宣言対象の4都府県(東京都、大阪府、京都府、兵庫県)下のホールも昨年と同様の自粛要請は受け入れられないだろうし、現に都遊協は4月27日、都内新宿区の遊技会館で定例理事会を開催し、東京都からの休業要請(協力依頼)に対し、個々の判断に委ねることとしたようだ (web greenbeltより抜粋)。営業を継続する場合は、感染拡大防止施策として「『パチンコ・パチスロ店営業における新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドラインの』の徹底」「各種告知広告宣伝の禁止」「20時以降のネオン、看板照明の消灯」の3点を遵守することとしている。

 昨年のような、行政の要請には可能な限り対応するが、個々のホールのことまでは知らないという姿勢より、最初から上記のようにきちんとしたガイドラインを作った上で、その上で個々のホールの判断に委ねるとする方が好ましいのは言うまでもない。また、組合には傘下のホールを守る義務もある。いざという時に何の頼りにもならないのでは非加盟のホールが出てきても仕方がない。コロナ禍は組合の存在意義を改めて問う状況を生み出したとも言える。