「カラ広告」ってなんぞ/あしの

ぱちんこの広告規制が敷かれて久しいけど、別にホールからイベントが消えたわけじゃない。いわゆる「来店取材」なんかは日本中で普通に行われてるし、近隣住民と昔から仲良くやってる老舗のお店やチェーン店なんかは、それを広く知らしめずとも「特定日」には自然とお客さんが集まってくるわけで。

だので酒飲みの場でそれ系の話をする時に「今はイベント禁止だからなぁ」という言葉が聞こえてきたら、筆者はつい反駁しちゃう。いやいや、死に絶えたのはカラ広告であって、今は各々の努力で健全なイベントやってますがな。と。

カラ広告。

これ、文字どういう風に標記するのが正解なのか分からんのでカナにしとくけど、意味としては「偽物のイベント広告」という意味だ。筆者は広告代理店でもホールの人間でもないので詳しくないし、その主たる投下場所がどのメディアなのかも分からん。が、イメージ的にはたぶん「新聞広告」だと思う。

例えば筆者が住んでた田舎のお店だと、2000年前後はだいたい折込チラシにはこんなことが書いてあった。

「月曜日はマックス・マンデー」
「火曜日は爆裂ファイアーデイ」
「水曜日は獣王の日」
「木曜日はハナビの日」
「金曜日は沖スロの日」
「土曜日はびっくりサタデー」
「日曜日はスペシャルサンデードリーム」

何がびっくりサタデーで何が爆裂ファイアーデイなのか知らんが、重要なのは毎日全台ベタピンであったことだ。「獣王の日!」とか言っててもベタピンである。スペシャルサンデードリーム! とかクソ煽っても設定1である。たまに6っぽい獣王があるにはあったけど、カミオカンデにおけるニュートリノの観測サンプルと同じくらいの希少なケースなので、実質毎日全台ベタピンである。

「エーッ、本日もォ、本日も当店にご来店いただきまことにィ……まことにアリャァス! さて本日水曜日は週に一度の大爆裂フィーバーデイ! 獣王の日! 獣王の日でゴザャァス! ジャンジャンバリバリ百獣の王! ジャンジャンバリバリ百獣の王! サバチャンランプに火を点けてェ、目指せ万両、百獣の王! お客サマの出玉の重みで、当店二階、倒壊寸前! 倒壊寸前でゴザャァス! 本日も当店にご来店頂きァして、まことにィ……まことにアリヤァス! こちら台数に限りがゴザャァスので、予めェご了承クダャァサス!」

こういう感じで煽ってもベタピンである。

流石にこれはちょっと誇張しすぎだけど、店内のマイクではこれに近い事を普通に言ってたので、そんなに外してもいない。

もちろん、当時からちゃんといい感じの設定配分でしっかり営業してたお店もあるんだろうけど、少なくともうちの実家近辺においては8~9割くらいのお店がコレだった。つまり、ベタピン放置で放っといてもお客さんが来るし儲かるから、2以上を使う意味があんまりないのである。

そしてそれは当時のスロッターは本能的に知っておった事だし、それに対して文句を言う人もいなかった。また、本当に勝ちにこだわる人は、当時はAタイプを打ってたし。明らかにクソ設定と分かるAT機にお金をブチ込んでいたのは、とにかくそういう人であったのだ。

「いや、俺獣王の6打ったことあるし」

という声もあるだろう。かくいう筆者も「ハードボイルド」と「サラリーマン金太郎」と「島唄」は6を打ったことがあるけども、いずれも通常営業じゃない。

そう。なんで当時の人間が文句も言わずにベタピンを打ってたかと言うと、「たまに高設定を打つ機会が用意されてた」からだ。つまり、「全6イベント」である。

これは地域差があると思う。筆者が住んでた長崎では四半期に一回くらいの割合でマジモンの「店内全部5or6」のイベントをやってた。全台全機種である。一方お隣「佐賀県」という未開の地では「時間差での設定打ち替え」がメインだったそうな。どういうシステムかイマイチ詳しくリサーチ出来てないけど、体験者の話によると「特定機種が夕方から6になる(打ち替える)」というものらしい。どう考えてもトラブルと不正の匂いしかしないしそもそも営業中の打ち替えは法令的にアウトな感じがするんだけど、まあ佐賀なんだからそういうのもあるだろう。

ちなみに東京では当時、「来店スタンプ」や「早がけスタンプ」による「希望機種の設定打ち替え(予約制)」があった。流石にAT機の頃は廃れてたけど、「ウルトラマン倶楽部CT」の頃は浅草でもあったらしいので、ほぼ爆裂時代に片足突っ込んでるタイミングといっていいだろう。

とにかく、爆裂機全盛期、なんであんなにベタピンばっかりニコニコして打つ人がいたかというと(そもそも低設定でも吹くときゃ吹く機械だったというのもあるけど)定期的に設定6を体験するチャンスというのが、ちゃんと用意されていたからだ。

そしてそういう「本当のチャンス」というのは往々にしてミステリーで行われる。つまり、ノー広告である。常連同士のネットワークで当日に情報が入ってきて、それで慌てて並んで爆裂さす。というパターンだ。イチゲン殺しである。そして東京のスタンプも「それをゲットするのにちゃんと通わないといけない」という意味ではイチゲン殺しであると言える。

さあ振り返って当時の折込チラシを観てみよう。

「月曜日はマックス・マンデー」
「火曜日は爆裂ファイアーデイ」
「水曜日は獣王の日」
「木曜日はハナビの日」
「金曜日は沖スロの日」
「土曜日はびっくりサタデー」
「日曜日はスペシャルサンデードリーム」

こんなもん出るわけがない。完全に釣りである。そしてこれがいわゆる「カラ広告」なのだ。んで流石に抜き過ぎて店がお通夜みたいになってきたら「本当のイベント」を行う。そこはばらまく為にやってるのでガセなしのガチである。んでそこで十万くらい勝ったお客は、また翌日から「マックスマンデー」とか「スペシャルサンデードリーム」いう胡散臭い単語を頼りに、爆裂よもう一度と、いわば回春の動機にしつつ、頭を空っぽにして打つ。

こうして、当時のお店は回っておった気がする。

出玉率と射幸性に支えられた極めて危ういサイクルではあるけど、そんな薄氷の上でも順調に遊技人口を増やし続けてたという事実は無視できない。けど、これが「健全」かどうかというとやっぱ疑義がある。

個人的には笑える文言が一杯あったし、それで回ってたんならまあええやんとも思うのだけど、やっぱり「カラ広告」は(必要か不必要かは別にして)悪だと思う。そしてその除去に成功したという意味では、広告規制には一定の成果はあったんじゃないかなと。そう思う次第。

もちろん、自前でお客を呼べなくなったホールさんは大変だと思うけども。