奇麗事には実がほしい/安田一彦

だいぶ前の話になるけれど、3度目の緊急事態宣言の延長が決まった時に、自分は稼働を自粛ができなかった。
常日頃スジを通し、奇麗事が好きと公言しているだけに、あの時は忸怩たる思いがあった。というか、今もある。

でも、そんな悩みを抱えたのが馬鹿馬鹿しいくらい、政治家の発言は軽すぎる。
総理大臣がオリンピック開催に向けて、延々と昔の東京五輪での女子バレーの記憶を口にしたところで、「えっ、だから何なの? 取り巻く状況が全然違うじゃない」と、自分は思うだけ。
官僚の書類を棒読みで繰り返すだけと批判され、自分で考えたのがあんな答弁じゃねえ。

五輪相に至っては「スポーツの力」とか言い出すし。ウィルスには医学的な力で立ち向かわないと! パチンコのオカルト並じゃん。
それだと、飲み会も「人々の絆と酒の力で感染を防げるから」と言い出していいことになるし、愛の力があれば、夜の濃厚接触もバンバンしてOKになっちゃうよ。って、これは言い過ぎか(笑)。

美しい言葉はけっこう。それが人の心を動かすこともある。
ただ、その裏では実行力を伴い、自己正当化をしないことが必要なんじゃないかな。
それができないなら、竹中某のように剥き出しで本音を言う方が、よっぽど人間らしい。

パチンコでもあるよ。「業界のために」「ファンのために」は飽きるほど聞くけど、日頃どこを向いて仕事をしているかで、ユーザーにはバレバレだもんな。
貧乏が美徳な時代じゃない。でも、身を切れる人や商売相手にも厳しいことを言えて、自らが傷を負う覚悟がある人とそうでない人は、誰の目にも明らかだしね。