3月8日 曇 時々 雨

 AM03:30。

 突然チビ回転の夜泣きが始まった。前夜、リビングのソファで寝たがりそのまま寝かしつける。暗い寝室に連れて行く。夜中目が覚めると「部屋が違う!元の明るいリビングで寝させろ!」。どうやらそういうコトらしい。最近は夜泣きなんてほぼ無くなっていたからコレには面食らった。こうなった時の我が子は手が付けられないので、言われるがままリビングへと床を移す。ほとほと参るが、コレも親の務めなり。

 AM06:30。

 けたたましいスマホのアラームと共に、眠い目をこすりながらリビングの床から這い上がる。まだ小さい君と違って、パパはリビングで寝たら背中バッキバキになるんだぞ?次はちゃんと布団で寝ような……。

 起き抜けにまずは一服。外を見ると屋根には雪化粧、小雨がしとしと降っている。予報で日中天気の心配はないと知っているので、焦らず身支度をしていると再び小悪魔の登場。連日の保育園で早起きのサイクルが確立されているから、寝不足な親の気持ちなぞ露知らず「パパこっちー!」と1人にさせてくれない。何とかなだめすかして「”お仕事”に行ってくるね」と家を出たのは7時頃。笑顔で「いってらっしゃい」と言ってくれる息子はとても愛おしい。それにしても――

 お仕事……か。駅までの短い道のりを歩く最中、胸中に苦い思いが芽生える。もうとっくにパチプロは引退済みながら、まだ一応は、ぱちんこの世界に片足を置いている。収入を得ているYouTubeにジャンルのズレはあるものの、こうして時折”稼働”することは、間接的に仕事へと繋がるモノが沢山あるのだ。とは言え、いわゆる”仕事”ではないし、病気療養中の妻に幼な子を任せてパチスロとはいかにもバツが悪い。

 まぁでも何を今さらだ。そんな生活をずっと続けて今に至っているのだから、ダメ人間、クズ、パチンカス、スロッカス……どう言われようと生きてるだけで上等じゃないか。別にお天道様に顔向けできない生き方をしてきた覚えはないし、月に1回程度、勝算のある稼働をするくらい、自分に甘くてもいいだろう。そう言い聞かせて満員電車に乗り込んだ。

 目的のホールまでは1時間半。やはり長い。たかがパチスロを打つ為に、これじゃまるで通勤じゃないか。自嘲しながら車内を見渡すと、どいつもこいつもスマホの画面を食い入るように見ている。以前は、そんな光景を空恐ろしく感じる事もあったが、何のことはない、自分もそれを見ながらせっせとスマホに拙文を打ち込んでいる。動画にゲームに調べ物にと、育児中この手元の機械に何度救われてきたか分からない。勿論、仕事でも欠かせない相棒だ。

 かつて新聞や雑誌、書籍を片手にパチンコ屋へ向かった日々も懐かしいが、今はもう東急東横線のすぐ隣を相鉄線が走るような時代だ。一昔前なら考えられなかった車窓からの風景に時代の変化を感じつつ、パチンコやパチスロがこの数十年大して変化していない事にも思いを馳せる。玉を弾き、ボタンでリールを止める、この形がいつまで続くのか――そこから大きな進化を遂げるが先か、スマートボールのように古臭い遊びとして無くなっていくのが先か――それでも、この時代遅れの遺物たちと、今日また対峙できることにワクワクしている。

 AM08:35。

 目的の駅に到着。抽選は9時半からだが、こんなに早く家を出たのは、開店までのんびり一服したいからだ。故・田山幸憲さんや安田さんら誌上プロに憧れ、背伸びして初めてタバコを吸ったのはパチンコ屋の中。それからタバコの習慣は今も抜けない。何度か禁煙にも挑戦したけれど、いつも元の木阿弥だから、1時間半もの”通勤”のあと、すぐに抽選・入場なんて御免被る。

 都内は小雨ではなく雪が降っていた。アスファルトの上にうっすら積もるべしゃべしゃの雪を踏みしめながら、一服できる喫茶店へと足早に向かう。すると、汗だくになりながらランニングをしている中年男性とすれ違った。アレは競技者か、余程のマゾか……。これからパチンコ屋で1日を過ごす我々の対極にいるような存在で、理解できないような、でもその求道ぶりに感心するような。そうして飛び込んだドトールには、喫煙“ブース”しか無かった。紙巻きが吸える喫茶店は、この時間はまだ開いていない。何も紙巻きと加熱式タバコを分けんでも……とも思うが、どうやら店の中で吸わせてくれるだけ有難いと思わなきゃいけないご時世らしい。イヤだね、全く。

 AM09:30。

 雪が小雨に変わる中、最初に配られた整理券の番号は「49」。“死”“苦”とはやるじゃないか。案の定、抽選番号はそれより後ろの「70」。まぁ、特段強い狙い台があるわけではないから別に構わない。それより、何でもいいから早く店内に入れてくれ。お客へのサービスという観点からも、地域の治安上からも、我々社会のはみ出し者を長々と外に並ばせるなんて、百害あって一利なしだ。ラッキートリガーより前に変えなきゃならない事が腐るほどあるだろう、と思いつつ、小人のそんな声はどうせ届かない。そして、文句を言いつつ欲にかられて並ぶ自分も、行き交う人々の冷たい視線も、ずっと変わらない。

 AM10:05。

 狙い台のエウレカを無事確保。高設定投入に色々な法則性を仕掛けてくるこのホールにおいて、考えられる4パターンの内、2つの条件を満たす台に着席する事が出来た。その他にも選択肢があった中でエウレカを選んだのは、シンプルに「打ちたい」から。ただ、そこに「勝てるかも」と思える何かがこのホールにはある。だからこんなにも遠出をしてきたわけで、そういう意味ではもう“仕事”は終わった。

 

――1回目 貯メダル2プッシュ。わずか34Gでアッと驚く中段チェリーから白BIG。

 エウレカARTは、BIGにほぼ設定差が無い。それでいてBIGが引けないと勝負にならない台だから、これは好スタートだ。しかし、BIG終了後の画面はデフォルト。設定変更濃厚となるハイエボレントン画面は、朝一のBIG時に高確率で出ると見聞きしているので、早くも先行きに暗雲が立ち込める。ホールのクセ的にこういった台にリセットをかけないのは非常に稀なのだが、いずれにしても詳細な解析が出ていない以上、これをもって据え置きとは断定できないので遊技を続行する。


左がデフォルト、右が設定変更時に出現しやすいハイエボレントン

――2回目 持ちメダルのまま繋がる95G、強スイカから白BIG。ここで偶数示唆のレイ&チャールズ画面。

 イベント時の低設定はほぼ設定①という過去状況からすると、これはプラス要素。そして、このBIGからART「コーラリアンモード」に突入する。

ー22G ART突入
ー16G ART2連
ーART待機中のハズレでズババババ!ARTストック+1
ー53G ART3連
ー26G ART4連

――3回目 17G チャンス目Bから赤BIG。ここで偶数&高設定示唆のアゲハ隊画面。

 設定②でもそこそこ出る画面ながら、設定①ともなるとこれらの設定示唆画面がとにかく出ないのも分かっている。序盤からデフォルト画面以外が続出する事自体、大きなプラス要素として更に打ち込んでいく。

ー19G ART5連
ー31G ART6連

AM11:03。

 ここでART連チャンは終わって手元のメダルは約600枚。毎ARTが50Gで純増が少ないエウレカの場合、連チャンが長く続いているように感じても、ボーナスが連打しなければ大してメダルは出ない。出玉スピード重視の機械に慣れた人には物足りないかもしれないが、こうして“メダルを減らさず楽しめる時間”があるのは、遊技として余程健全だ。

――4回目 285G リーチ目リプレイからREG ✖️✖️◯✖️✖️ ARTには非突入。

――5回目 70G チャンス目Bから白BIG これが本日2度目のARTに繋がる。

ー14G ART
ー28G ART2連 ここでまさかの七色雲海!

 七色雲海ステージがどれほどレアなのか、設定差がある部分なのかすら分からないが、とりあえずここでボーナスを引けば良いという事だけは知っていた。手に汗握る勝負所!!

 デキた!!

――6回目 ⭐️(七色雲海中) 強チェリーから赤BIG!

 PM00:05。

 まだトータル1100Gほど。七色雲海中のボーナスで、本機最強の特化ゾーン「ハイエボモード」とやらにぶち込んだ。中身はツラを変えたART50Gなのだが、その間ARTのストック確率が飛躍的に跳ね上がる。さらに、ハイエボモード中にボーナスを引けば何度でもやり直せるらしい。平均ストック数は約5.3個。そんな解析情報を頭に入れて打つと大概ロクな事にならないので、無心でレバーを叩くこと50G……。

ー66G ハイエボモード(ART3連)
ー12G ART4連
ー40G ART5連
ー32G ART6連
ー13G ART7連
ー18G ART8連

――7回目 ⭐️(ART中)当選契機メモ忘れからREG 全✖️

ー8G ART9連

――8回目 12G 中段チェリーから赤BIG 終わりにズババババでARTストック+1。

ー26G ART10連
ー25G ART11連

――9回目 ⭐️(ART中)弱チェリーから白BIG

ー32G ART12連
ー25G ART13連
ー51G ART14連

――10回目 ⭐️(ART中)強チェリーから白BIG

ー25G ART15連
ー22G ART16連
ー33G ART17連
ー39G ART18連
ー17G ART19連
ー24G ART20連

――11回目 42G 弱スイカから白BIGで終了時ズバババでストック+1。終了時レイ&チャールズ(偶数設定示唆)。

ART準備中にハズレでズバババ!ARTストック+1。
ー16G ART21連
ー15G ART22連

――12回目 ⭐️(ART中)リリベから白BIG。ここで設定②否定のドギー&ギジェットで設定④or⑥が濃厚になる。

ー34G ART23連
ー40G ART24連

――13回目 29G チャンス目Bからズバババ&白BIG

ー11G ART25連

 PM02:18。

 ART連チャンがようやく終了。ARTストックは見えていた分だけできっちり終了。若干の切なさを感じつつも、手元には2,000枚ほどのメダル。そして、偶数示唆が強すぎる中での設定②否定で、この台の設定は➃or⑥が濃厚となった。エウレカARTは、設定④が105%、設定⑥が108%と元々それほど割が高いわけではないが、バリバリ第一線でやっているわけでもないボクにしては、展開も含めてこれ以上ない結果と言えるだろう。そしてその後も……

――14回目 70G チャンス目Aから白BIG

ー42G ART突入。単発

――15回目 153G チャンス目AからREG ✖️✖️◯✖️◯

――16回目 19G 強スイカからREG ◯✖️◯◯◯

 レギュラーボーナス連打から5択正解を重ね、ここから”第二波”に突入。

ー18G ART突入

――17回目 ⭐️リーチ目リプレイから白BIG 偶数示唆のレイ&チャールズ

ー18G ART2連

――18回目 19G チャンス目Bから赤BIG

ー22G ART 3連
ー15G ART 4連
ー19G ART 5連
ー57G ART 6連

――19回目 ⭐️(ART中)チャンス目Bから白BIG

ー25G ART 7連
ー22G ART 8連

――20回目 ⭐️(ART中)弱スイカから白REG ✖️✖️✖️◯✖️

ー29G ART 9連
ー16G ART 10連

――21回目 ⭐️(ART中)チャンス目BからREG 全✖️

ー22G ART 11連
ー27G ART 12連
ー26G ART 13連

 PM04:00。

 ART13連で終了。ほぼ切れ目なく右肩上がりに出続けるエウレカを心から楽しんでいたものの、開店から6時間が経過したこの時点で、この日の設定⑤⑥投入法則からボクの台が外れていることが分かってきた。冒頭で「高設定投入パターンとして考えられる4パターン中の2つを満たすような台」に着席したと書いたが、ある程度法則を分かっている常連客が座るであろう、そんな台にはフェイクを投入するケースも多々あるらしい。であればこの台は設定④か!?

 プロ視点では①or⑥、〇〇が全⑥のようにメリハリが利いたお店の方が、稼ぎとしても時間の使い方としても有用なのは間違いない。でも、多くを望まなければチャンスが多数あるこんなホールの方が、今のボクにはありがたい事この上ない。

 そして、ここからは酒算用。

 52枚交換のこのホールでは、設定④なら時給は1800円前後といったところか。仮に⑥であっても必死になって食らいつくような台ではない。ハイエボモードという僥倖も得て、楽しい時間を過ごす事ができた。そして、毎度このホールにボクを導いてくれるSは、朝の抽選にも参加せず数時間前からあぶれている。だらしなさ故のあぶれにつきSには何の同情もしないが、ボクにとっては好都合。あとはいつ酒場に入店するか、タイミングを見計らいつつの消化試合だ。

――22回目 33G アッと驚く中段チェリーから当然の如く白BIG。

ー312G ねだるな勝ち取れからART

――23回目 56G 強チェリーから白BIG

ー18G ART2連

――24回目 151G チャンス目Bから赤BIG

――25回目 33G リーチ目リプレイから黒BIG

 最後に10数年ぶりのバレエメカニックというオマケもついてきた。

ー53G ART突入
ー29G ART2連
ー16G ART3連

――26回目 39G 強スイカから赤BIGで手仕舞い

 PM05:55。

30G ヤメ

総ゲーム数:5,665G
BIG:20
REG:6
ART:49
投資:92枚
回収:3,078枚

 この台の設定は➃か⑥か、それはこの際どうでも良い。パチンコ・パチスロを遮二無二打たなくても良くなったボクにとって、今日という日は酒もコミの一日だから、”暗黙の了解”の時間になればSとくだらない話に花を咲かす方が大切だった。それは、ナナシーの動画編集に行き詰まり、「パチプロ日記」を久々に読み返した時に思い出した気持ちだった。そういや、こんな暮らしに憧れてパチプロになったんだっけな……。

 田山さんがお亡くなりになってから、もう20年以上が過ぎた。ホールからはとうにあの頃の牧歌的な空気感は無くなってしまった。パチンコ・パチスロ日記に、かような長文なんて求められない時代にもなった。ボクも時の移ろいに合わせてパチスロからパチンコへ、はたまた今度はYouTubeへ、と自分を変えていく事で何とか生き残ってきた。矜持なんて持てないまま、ただ目の前の生活を何とかするのに精一杯だった。かの偉人の生き様には、遥か遠く及ばない。それでも田山さんが遺した世界観をずっと胸に抱え続けて辿り着いた今は、それほど悪いもんじゃない。

 おっと、もう一人の偉人を忘れちゃいけない。前人未踏のパチプロ道を今も歩み続ける安田さんとこうして知り合えた今、もっとその時間を大切にしなきゃいけない。そう思ったボクは、一通のLINEを安田さんに送った。

――今度の収録終わりに麻雀しませんか?――

 トーク動画の収録時に「俺は自分から誘わないから縁が切れちゃう。」なんて冗談混じりに言ってたっけ。仕方がないから今後はボクから誘ってあげよう。もしかしたらボクらには、もうそれほど長い時間は残されていないかもしれないから。そして、こんな失礼なボクを、時に厳しく、時に優しく受け止めてくれるのが、安田一彦という人だから。


■万回転 プロフィール

  • 1978年生まれ ♂ 
  • 累計15年間パチプロしちゃってごめんなさい
  • CR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上した事を機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。
  • 現在は悠遊道動画チャンネルの何でも屋

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