主張は明確に分かりやすく。ダラダラと書きがちな私ではありますが、もちろん心がけているつもりです。そう心がけようとすればするほど、パチンコ業界って難しい。いろいろ絡まりすぎ……と思わされます。頭の中がゴチャゴチャして、何の結論も出ずに疲れ果てるだけで終わるのです。

例えば「低交換率化」ですかね。端的で分かりやすい主張ということもあって、業界の活性化で提案されることも多いです。個人的には、総論賛成・各論反対といったところでしょうか。

 

○低交換率化を提唱するのはベテランが多い!?

“低交換率化”というアイデアを出すのは、遊技歴の長いベテランが多い傾向にあります。低交換率が中心だった時代を知っている。その時代は盛り上がっていたな。そう感じているので、提案しがちなのです。逆に考えてみましょう。等価交換が中心の時代しか知らない世代は、交換差額があったほうが良いという発想をできないかと思います。経験していない世代にとっては、メリットが分かりにくいですからね。

ホール側から見ると、交換ギャップという収入源ができます。苦しいと言われる経営の助けになるのは間違いないです。より多くのホールが生き残ることは、近所で遊べる機会を生み出し、パチンコ・パチスロが身近な存在であり続けるために必要でしょう。

打ち手のメリットは、パチンコでは釘がガチガチにならないこと。パチスロで言えば高設定の数が増えることです。

 

ギャップがあるということは、集客数が多いほど利益が取れることに繋がります。設定を使うための余力です。交換額が下がるだけで、設定状況が変わらなかったら……。そんな心配もされますが、等価交換に近いホールばかりの現状よりも、より“設定を使わないホールは淘汰される”傾向となると思っております。ショボいホールでも、その近所のユーザーを手放さない程度にはしてくれるはず。

小役などを数えるにも、高設定があるか分からないような状況よりも、高設定がありそうな状況のほうが楽しいに決まっていますし、より多くの人が”ツモる”という成功体験という楽しさを得られることでしょう。通常営業でも狙い台を作ったりして、同じホールに通う面白さが生まれます。

低交換率化を提唱する方は、このようなメリットを挙げることでしょう。そして、大抵はこのメリットのみで主張が終わります(笑)。私もここまでは大賛成ですよ。しかし、実現するにはいくつもの課題が出てきます。

 

○時代が違う!

一言でバッサリと斬るのであれば「時代が違う」となります。

なぜ、低交換率が当たり前の頃は盛り上がっていたのか(少なくとも遊技人口は多かったということで)。スマホどころかガラケーもなかったとか、社会的な要因もありますが。P-WORLDもメジャーではなく、そもそも近所の人がお客さんの中心でした。その街のコミュニティとして機能していたのです。ホールスタッフさんも、それに合った接客をしていました。このような場所では、遊びやすい低交換率のほうが好まれるかと思います。

逆に。繁華街の大型店は“近所のコミュニティ”という日常の一部という方向が不得意でしょう。大型店に集う客層は、遊べるよりも勝ち額を重視するでしょう。どちらかと言えば非日常を求めているかと思います。非日常ということは、スリルある高価交換が好まれます

近所の中小店の多くが姿を消し、繁華街の大型店化が進んでいます。今さら、低交換率となっても、それに向いたホールが少なくなってしまっている。せっかく残った繁華街の大型店も苦戦するだけのような気がしてしまうのです。

 

○一律でないと難しい!?

それでは、交換率を自由化したら良いのでは。打ち手からすると“選べる”のは理想的。ただ、自分が経営に携わっていた場合。低交換率にするには勇気が必要です。「自店舗だけ一人負けしたらどうしよう」と。

高価交換しか知らない世代にとって、低交換率は未知の世界。「ショボくなったから辞める」と言われかねない状況です。大阪府が7.6枚交換だった時代、友人は6枚交換の兵庫県まで遠征していました。今でも5.6枚交換の東京から等価の地域に越境しているユ―ザーも多いですね。全ホール・全地域で足並みを揃えないと実現不可能かと思います。そして、そんな一枚岩な業界でないのは、皆さまもご存知の通りです。

 

一律低交換率化に成功したとしても。交換差額があるということは、初当たりは早いほうが好まれるわけです。現在主流となっている初あたりは重くともそこそこの出玉を求めるAT機とは逆方面ですね。実に相性が悪いです。

6号機もいろいろ規制緩和が進みましたが、それはAT部分のみ。ノーマル機の大半は、大元の遊技機規則で定められており、そこに書かれている数字が変わらないと緩和は無理です。変わったら7号機です。正直、6号機のまま低交換率化がされたら地獄絵図かと。

 

……なんて。私も低交換率の時代が良かったなと思うのですが。その過去の再現ではなく、現在に軸足を置いて“新たな形”として考えると、実現困難だなとなってしまうわけです。

では、ベテランが低交換率を提案するのは意味がないかと言われれば、そうではありません。「その時代を知っている人でないと提案しにくい発想」だからです。その時代を知らない人にも考えてもらうきっかけとなります。そこから派生して別のアイデアや別の課題が見つかることもありますから。

まあ、何にせよ。「あちらを立てればこちらが立たず」そんなことばかりの現状ですね。