去年からレトロゲームブームというのが来てるらしい。だいたいこういう「ブームが来てる」系の話はそっちの方が儲かる大人が意図して盛り上げており、そのメシのためのPRの一環としてニュースが先に作られてるもんなのだけども、どうも今回のはマジらしく、もとからそういうのが好きな筆者がたまにいくアキバのショップの相場もここ2年くらいでめちゃ上がっておるし、またそういうのとは縁もゆかりもねぇ浅草にまで、そういうショップが出てきてることからも、まあ来てるのは来てるんだろう。

ちなみにレトロブームはなにもゲームだけのものではない。

ちょっと前には「バブルブーム」なる現象が主にファッションの分野で巻き起こったとか巻き起きてないとかさんざっぱらコスられてたけども、今度はそれがもうちょいワイドなスタンスでまた来ており、いわゆる「昭和ブーム」なるものに進化してる。バブルを昭和っていうのにはちょっと疑義を感じもするけども、まあZ世代からすれば昭和末期も平成初期もひとくくりに「大昔」に違いなく、その辺の明確化のためにうるさくしたら「ジジイが何か言っとる」と嫌われてしまうのでそっとしとこう。

んで昭和ブーム(と言われてる平成初期らへんを含めたブーム)はファッション以外にも音楽やら映画、さらにはもっとボヤッとした「雰囲気」とかに及んでおり、例えばパチ屋でいうと昭和レトロを標榜するコンセンプトストアである「キクヤ昭島店」なんかも話題になったりしてたことから、その時代時代を切り取った一過性の「●●風」というのがもっと明確な形で固着して、美術でいうと「ロココ調」とか「バロック調」みたいな「形式」になってんだろうなと思った次第。大正モダンとかも建築におけるインテリアとしては結構前からそういう形になってたし、またモボ・モガスタイルも定期的にリバイバルしてるしね。要するに「大正」につづいて「昭和」もそういう形で固着する時期に入った、というコトなんじゃねえかとおもう。「そういう時代だった」ということでイメージが固まって使いやすく記号化するまでは、後から振り返るだけの時間的な余白が必要で、そういう意味では平成はまだあまりに近すぎる。一方「昭和」は今の世代には「何となく理解できるけど全然知らない大昔」として、ちょうどいいくらいの時代なんだろうね。

んで昔っからそういうふうな「ちょっと前の文化」というのはブームになったり消えたりというのを繰り返しておるのだと思うけども、ただまあそれってジジイが昔を懐古するみたいなのが主流だと思うわけです。自分の若い時代のファッションであるとか音楽というのを愛し続けた結果、同好の士が塊魂のごとくひとくれになっていき、ブームになったり消えたりすると。これはあって当たり前なんだけども、これを若い世代がやるというのは、果たしてどうなんだろうというのがある。例えば筆者が中高生の頃は懐古趣味といえば洋楽のロックか映画くらいで、それだってもの好きがオヤジの影響でハマったとかそういうのがストレートな道であった。少なくともテクノロジー分野においては新しいものこそ正義であって、ベーゴマやらメンコやらが流行ったりすることはなかったし、つまんで回す式のダイヤルチャンネルかっこええ! みたいな話はついぞ聞いたことがない。

これってやっぱ、新しいものに常にワクワクしてたからなんじゃねーかと思う。

ポケベルが出たぞといえばみんな丸の内のOLの如くブラインドタッチで公衆電話のキーをタイピングしまくり、PHSっていうのが出たぞとなると皆こぞって契約して3ヶ月ごとに機種変し、CDウォークマンが便利だぜとかいやいや時代はMDでしょとか。ターミネーターの新しいヤツはモーフィングってのを使っとるらしいぜとか言ってる間にポリゴンの格ゲーが出たりテクスチャが付いたりICカード対応になったり。なんてこったZIPドライブがあればフロッピー100枚くらい保存できるじゃんとたまげてる刹那にMOはもっと凄いじゃねぇかとか、で最終的には「インターネットってマジでとんでもねぇなオイ!」とかね。技術革新も購買意欲もすごくて昔を振り返る余裕なんかまずなかったわけです。んでこの90年代のポケベルブームからインターネットまでの動きって、たった十年程度なんですよこれ。

んで今の10年前ってなによ? というと2013年のブームは「コンビニコーヒー」と「パズドラ」だそうで、要するに「何も変わってねぇ」のであります。フロッピーからMOになって、ポケベルからインターネットになって、スーファミからプレステ2になって、スト2からバーチャ3になったのと同じ時間かけてiPhone5sが14になっただけという、なかなかどうしてキツい状況。若者がレトロにハマるというのは要するに「新しいもんに刺激がないから過去を探る」という文化のリサイクル以外の何モンでもなく、そういう意味ではZ世代は結構悲惨な状況にあります。その都度都度のブームはそりゃあるけども、「うわ、こんなすげーの出たんだ」「未来やばい!」みたいなのに興奮する経験ってそんなに無いんじゃないかなと思う。

でこれ、パチンコとかパチスロもそうなんだよね。

昔っから打ってる人ってやっぱ「うわ、こんなのが出やがった!」みたいに度肝を抜かれた経験ってどっかで絶対あると思うのですよ。俺なんかは5号機の頃にゲーム数の上乗せARTを見た時に心の毛髪が全部抜け落ちるかというくらいの衝撃を受けたし、もっと遡れば4号機の頃のストック機とかでもやっぱ一回心がハゲ散らかしたし。そういう発明ってどんどんコスり倒されて普通になっていって、ブレイクスルーにふれる喜びの頻度は段々減っていって当然。まあメーカーさんは天才の集まりなのは間違いがなく、今後も絶対なんか凄いのは生まれるんだけども、ただそれが五年に一回とか、十年に一回とか、そういうスケール感になっていってるのは間違いないと思う。

そうなるとやっぱこの業界にも「レトロブーム」というのは来てもおかしくないし、一号機とかの見た目の、めっちゃ目押しし辛いホッソいリールでピロピロしたビープ音しか鳴らない機種が「斬新!」ということで持て囃される時期も、もしかしたら来るかもしれん。実際、スロゲーセンとか見ると確実に俺より若い人が見たことねぇような古い台を打って記念撮影してるシーンとかも見るし、そういうのが流行する時代が来る可能性は、少なくともJKの間で「写ルンです」のリバイバルブームが来たのに比べると、充分に有り得るんじゃねーかなと思う。見た目もカッコイイしね。昔の機械。いいんじゃないかな。俺は最新の台打つけどね。

(なお研究者によると、こちらの記事は今しがたテレビで「写ルンですが流行ってる」みたいなのやっててコメントを求められた女が「昭和の不自由を楽しむ」などと軽佻浮薄なスカスカコメントしてるのを聞いてた筆者が「むしろ平成やろ写ルンですは」と何かイラっときしまい、発作的にボロクソ書き殴ったのを流石に不味いと判断した上で無理やり修正してなんとなくパチンコに結びつけたもであると考えられています。)