みなさん、あけましておめでとうございます。これを書かねば年が明けた気がしません……って、まだカレンダーは2023年ですけど。今年も無事に大河ドラマを完走できました。「最後まで観られた」から「最後まで生きていられた」という風に意味合いが変化してしまいましたが(汗)。

というわけで、パチスロの話題は一切なく、恒例となった大河ドラマの感想になります。2023年の大河ドラマは「どうする家康」主演は、嵐の松本潤さんでした。

個人的には残念な大河ドラマとなってしまいました。つまらないとかワーストということではありません。私なんぞが同じ書き手としてというのはおこがましいですが、ともかく書き手の末席にいる者として残念でした。脚本の人の心が途中から折れたように感じたというか。

 

 

 

○どうする感の欠如

実験的なコンセプトだったのは悪いと思いません。散々やりつくされている人物ですし、違った角度なのも悪いとは思いません。ただ「どうする家康」というタイトルです。家康がどのように周囲に相談したり、助言を得て決断していくものと思っておりました。

家臣の顔がカットインして「どうする?」というような描写が見られたのは序盤まで。ある時期を境に、何を考えて決断したか視聴者を置いてけぼりにして、独断していく従来の家康と変わりがなくなっていきました。どうする感の欠如です。

 

序盤に織田信長(演:岡田准一)の「待ってろ、俺の子兎ちゃん」的なBL要素を持ち込んで、拒絶反応を示した視聴者も多かったように思えます。私も「へ?」となったことは否定しませんが、まだ序盤は攻めていたと思うのです。

金ヶ崎の退き口で、家康に危機を伝えた使者の話とか、側室がLGBTだった話とか。それを丸々1話かけて描いていました。こういった創作のサブエピソードが、脚本家の本当にやりたかったことでしょう。

LGBTに関しては、NHKも頑張って特集しており、薄っぺらいなとは思いましたが。その翌週に「女を買いに行く」的な旧態依然とした価値観を普通に出してしまっていたあたり。ただ、薄っぺらく感じられても、それを貫き通して欲しかったと思います。同じ文字を書く人間として。

 

そういったフィクションのエピソードは、これっきりでした。そこからは軌道修正したかのように歴史的なイベントを消化することに専念していきます。そりゃ薄くなりますよね。要素てんこ盛りな人ですから。変なところに時間を割いてきた分、どうしてもその他が弱くなってしまいます。どうせなら貫き通して欲しかったというのが表現者としての本音。

いや、不評な部分は改善とか、そのほうが正しいと思いますよ。そういった柔軟さも時には必要。ただ「これはお口に合わない」と視聴をやめる瞬間がこなかったというか。ダラダラと薄くならざるを得なかった軌道修正後のイベント消化に付き合わされた感じがしました。

イベントを追うだけで十分ドラマチックな人ですから。他の話に時間を割いていたため、そのドラマチックさも存分には引き出せなかったように感じます。史実がどうとか、最新の研究によるとといった歴史マニアが語りたくなるようなところまで到達しなかったというか。

 

 

 

○築山殿の再評価はいいが

序中盤というか、物語のキーとなった家康の正室の築山殿(演:有村架純)。彼女が目指した戦のない世界を実現させるために家康は尽力していきました。従来の説では悪女とされ、家康とも不仲と描かれることの多い築山殿ですが、良妻としてヒロイン的に描かれました。それが悪いこととは言いません。

しかし、築山殿の死を境に、どんどん物語がイベントを追うようになっていったというか。攻めなくなっていったというか。最後に登場して家康の弱い心の象徴である兎の彫り物のエピソードを回収していましたが、中盤までに退場したキャラの影をいつまでも引きずる結末に「じゃ、後半に家康が進化した部分は?」と思わざるを得ない読後感でございました。そりゃどうする感もなくなる。

お市と茶々の一人二役もそう(演:北川景子)。本当はもっとエピソードを作り込みたかったんでしょうが、その布石だけをして結局は「それで何もないのは不味い」程度にお茶を濁した感じに思ってしまいました。

 

ということで、違うことをやろうとしたものの、結局は軌道修正で歴史的なイベントを追うようになってしまった作品だったように思いました。で、それだけでは不味いので最後に付け足し。

想像力全振りで行かなきゃ放送枠が埋まらない「光る君へ」(紫式部)は芯の通ったものと期待したいです。