先週導入された仮面ライダー轟音、そして今後登場するルパン・マモーなど、パチンコの台枠が巨大化している件について、下記のような記事を見ました。

「巨大で派手なパチンコの枠って必要ですか?」というアンケートを行った結果→90%を超える人が必要ないと回答(パチンコ・パチスロ.com様)

そして、このアンケートが公開される少し前に、台枠に関する議論がパチンコ未来ラボの方でもあったので、本日は少しこの件について、少々長めに真面目な考察をしてみたいと思います。

ド派手な台枠が必要か否かと言う前に、まず論点になったのがこのパチンコ・パチスロ.com様のアンケートに意味があるのか、という点です。※アンケートの回答数は1000超

と言うのも、主に業界人側の方からは

・まとめサイトのようにヘイトが集まりやすい場所では属性が偏るから意味はない

・遠隔やらなんやらと自分の負ける理由を他人に押し付けるタイプが多い業界では、自分が負ける理由を外に見出したくてこのような回答になる

・大切なのは現場の実際のお客様の動き

という声がありました。ネット上のアンケートですから、属性が偏ると言う点はボクも同意。一方で、それにしても90%超えという数字は異常、現実でもいらないと思っている人が多いのでは?というのがボクの感覚です。

では次に上記アンケートとは別の話として、必要性に関してちょっと長いですが、業界人の方の声をまとめてみます。

・売上や利益確保の為ではない。差別化が主目的

・規則の問題でスペックでの差別化が難しい事から出てきたアイデアであり挑戦

価格の高さや筐体の重さを口にする業界人は弱者の理論。メーカーはホールを儲けさせるのが仕事。

・低価格帯のファストフード店で使用される冷凍唐揚げと全く同じものが、豪華なテーブル・お皿・品のある接客などで3倍の値付けをされ「ここの唐揚げは絶品だ!」と評されることが多々ある

・良いか悪いか別にして、遊技機単体で考えても華やかさが求めてられている可能性がある

・パンケーキを食べるのに、プラスチックの使い捨て食器で出されるのとマイセンの皿とラヨールのナイフで食べるのなら後者を選びたいですよね?

・どんな否定派でも25個回れば座る。逆に、韋駄天でも13個ならよっぽどの情弱か能天気客しか打たない

・メイン液晶画面は巨大化の一途を辿り、全面液晶まで行ったが、結果一歩後退して現状で調和が取れている。オリ平のスロに採用された下パネル液晶も、他社が追随する気配はない。ほどよい「進化」の落としどころはどこなのか、試行錯誤がまだまだ続く

・開発側の無意識の中に「消費財(短命で入れ替わるもの)」と考えているなら…個の自慢や満足(業界初!、自社初!等の比較)にこだわって付き合っているならば、大きな問題

・長期間開発に携わった方々の思いが、伝わることなく短期で見切られる理由の一環であって欲しくない。

・タイヤがついている目立つ台に、タイヤに触りながら着席するおじさん。韋駄天の出玉性能に惹かれて着席するおじさん。どちらも「刺激的な体験がしたい」のだと思う

・ただ、韋駄天のスペックで、演出性能がさらに優れていたら、今以上に大ヒットになっていた可能性が高い。それを考えると、ドデカ筐体を一概に否定は出来ない、

薄い薄い勝ちにしかこだわらないプレイヤーの声って聞く価値があるんですか?

・一緒に仕事をしている同業界の人間として言うなら、まず、挑戦という“姿勢”に対しては全面的に支持します。出来る限り前向きに受け止め、発信もそのように行うべき

・自分が属するホール側の人間の意識には「お前らの“挑戦”に付き合わせるな」「台に団子や鉈つけるのが“挑戦”なのか」というものは確実にある。

賛否どちらかに偏っているというよりは、一概に否定する前に冷静に分析する事が必要、という方が多い。この点は、揶揄ではなく文字通り「意識が高い」パチンコ未来ラボの方ならではかもしれません。

大前提として最重要は射幸性

遊技台がプレイヤーに選ばれるかどうか、最も重要な要素は射幸性です。これは歴史が証明しています。古くは連発式しかり、フィーバー機しかり、CR機しかり、爆裂4号機や裏物しかりです。ギャンブル性が高まる事を契機に遊技人口や産業規模が増大し、規制と共に衰退するというのがパチンコ業界のお決まりの流れです。

一方、昨今の射幸性がどうかと言えば、2018年にIRの問題とも絡む形で厳しい規制がかけられている状況が続いており、スペックで大きく差別化できる状況ではありません。これは、かつての歴史の中で、業界があの手この手で規制をくぐりぬけてきた網目を一つずつ塞がれてきた結果です。

そんな中で出てきた仮面ライダーのタイヤや、ルパンのアーム、ヘドバンするエイリヤンは、限られた枠組みの中での挑戦なのは間違いありません。これは年々派手になるサウンドや液晶演出なども同様です。では、その挑戦は果たして効果を発揮しているのか。そこが最も大切なポイントです。

実は難しい効果測定

まず当然ながらプレイヤーはドデカ筐体の有無や、それを気に入っているかどうかだけで台を選ぶわけではありません。スペック面は勿論のこと、ホールの運用、釘調整といった要素も大きく関わってきます。広義で見れば、世間の景気・個人のお財布事情も関係します。また、特定のホールに限れば、地域の客層や設置台数・比率などでも稼働率は変わるでしょう。

人気のある台、そうでない台というのは全国的に見れば間違いなくデータとして現れてきますが、人気のある台の何がウケているのか、確かな分析が出来ている人などいないのが実情です。

例えば近年間違いなくホールの主役であったバジリスク絆や北斗無双は、登場当初は不人気台でした。バジリスク絆は2からのシステムの変化、北斗無双は演出バランスについて酷評された時期が確かにあります。しかし、徐々にその射幸性の高さが受け入れられ始め、ホールの運用と上級者たちの思惑がリンクした結果、稼働率が上がっていきました。加えて、2017年に決定した規則改正という外的要因にも間違いなく助けられた結果のロングヒットです。

こういった事例を見ても、演出・筐体がヒット要因となるかどうかはあくまで二次的・三次的な要素であり、大きな影響などないと言って差し支えないと思います。では、なぜプレイヤーサイドから「いらない」という声が多数上がるのでしょうか。

カギはユーザビリティと出玉なのだが……

まずは、とにかく「邪魔」という点があると思います。筐体上部の役物はデータランプを隠してしまうし、左右にせり出した液晶から圧迫感を感じる事もあります。また、巨大化した台枠のせいで、玉箱から玉をすくい辛くなったり、台枠上部が出っ張っているせいで頭を打って不快な思いをした方も多いでしょう。これまでの筐体群は、利便性低下を覆すほどの楽しさ・刺激をもたらしていないと感じるからこそ、不満の声があがるのだと思います。

このような声を始め、すでに実害も出始めていることから、いずれは行き過ぎた競争はストップするし、今は、その着地点を見つける過程なのだと思います。

他方、「台枠に余計な物をつけるから玉を出せなくなるんだ!」といった、出玉の還元率と台枠の巨大化による弊害を結び付ける考察は、業界人側から否定されているケースが多く見られます。「仮にその分を安くしたところでホールは還元なんかしない」し、「そもそも役物分は赤字」なので、メーカー同士が営利企業として競争・差別化する限り、筐体面の進化が止まる事はなく、プレイヤーがいくら声高に台枠の役物不要論を叫んだところで、メーカーはそれとは全く別の軸で必要性を判断するのでしょう。

パチンコ業界は、いわゆる上級プレイヤーになればなるほど、メーカー、ホールからは好まれざる客になるという非常に稀有な業態です。パチンコ業界の大きなピラミッドは全てプレイヤーのお財布が支えています。にも拘わらず、好きになればなるほど、詳しくなればなるほど、プレイヤーが負けにくくなっていく構造故、プレイヤーの声が届かぬところでこれからも業界の趨勢は決められていくのです。

ただ、こうなってくると一つこの先に大きな懸念が残ります。

四者の断絶はどこまで行く?

ここは、主宰である大崎一万発氏の言葉を引用させて頂きます。

このメーカー、ホール、打ち手の3者間における不信感の問題は、既に顕在化している物も含めて、ますます大きくなると思っています。

ここ。かつては「はぐれ者」としてパチンコに関わってしまった3者の共犯関係、連帯感という空気が確かに存在していたんです。コミュニティ拡大成熟の避けられない課程としてそれは壊れていくわけですが、ソフトランディングではなく、SNSの影響で急進的な変化を強いられている、ように見える。砂上の楼閣をギリギリのバランスで保ってきたパチンコ産業にとって、非常に危険な傾向に思えます。

引用:パチンコ未来ラボ

以下はあくまで私見ですが、成熟したファン・プレイヤーの延長線上にライター・演者・パチプロがいます。メーカー、ホール、そしてライター等は、確かに大崎さんのおっしゃる通り、奇妙な共犯関係にあったし、バランスを保とうという意識がかつてはありました。しかし、ネット、そしてSNSの発達によって、それぞれの内情がつまびらかになった結果、それぞれが己の利益だけを追求する方向へと突き進んでいます。

そうして、置いて行かれたのが普通のファン。正確には、3者ではなく、4者の断絶と言えるのではないでしょうか。

台枠の巨大化は、ある意味でそういった流れを象徴するような物体であり、ファンを除いた3者が、如何に庶民の娯楽という立ち位置から遠ざかっているかの証とも言えるでしょう。そうして先鋭化すればするほど、パチンコはこの先、旧態依然とした風営法の枠組みには収まらない、いびつな産業となっていきます。

巨大な筐体は、遊技を阻害する要因でない限り、ハッキリ言えばあっても無くてもどうでも良いものです。メーカーや業界コンサルタントが声高に主張するほどの意味などありません。そんな物が果たして進化と呼べるのか。減り続けるファンの数が、全てを表しているように思えて仕方ありません。


■万回転 プロフィール

  • 1978年生まれ ♂ 非業界人
  • 好物はアナログ機とリーチ目メインのスロ
  • パチプロ時代に当時タブーとされていたCR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上。
  • それを機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。現在は別業種のフリーライター・エディター他便利屋業
  • 色々あって×2

万回転記事一覧はこちら

万回転ツイッターはこちら