ぱちんこ業界に限らず、商売をやる上で広告は欠かせない要素です。

ただ、その主体たるメーカーやホール企業自身が、広告のやり方についてお上から規制を受けるのは、風俗産業ならではと言えまして、それゆえに今でいう演者やら晒し屋やらが跋扈するおかしな世界になっているわけですが、ボクのうっすい調査が確かならば、1950年代にはもうホールの広告を肩代わりする第三者がいたと記憶しています。

そう、チンドン屋。

ホールからお金をもらい、新装開店を盛り上げる彼らは紛れもなく広告業としてぱちんこ業界を支えていました。

そして、1960年代だか70年代だか定かじゃないですが、その頃には今でいう来店イベントのように、芸能人のホール来店はありましたし、中にはパチプロを呼んで盛り上がったなんて話もあったはず。

安田さんは勿論、田山さんよりもっと前の時代に、パチプロがホールに呼ばれて広告塔になった、なんて時代があったのです。

~歌って踊って盛り上げて、出ます出します取らせます~

メーカーのラジオCM、TVCMがいつから始まったかは定かじゃありませんが、いつかそういう広告関連の歴史もまとめてみたい。知りたい。今月から始まったステマ規制のアレコレを見て、そんな風に思いました。

ボクがリアルタイムに知る広告の変遷、主に90年代は

・1990年代の雑誌を通じたクーポン券(○○ホールの無制限券とかジュース一本プレゼントとか)

・多分ずっと前からあったであろう新聞の折り込みチラシ

・時折流れるTVCM

・業界が協賛しているTV番組

・店頭で初めて分かるホール独自のイベント告知

これらが主でした。

そして、この頃までは第三者を介したステマ的な広告は無かったように思います。ホールの釘や設定状況に直接的に絡んで、さらにそれを大々的に外に触れ回って集客するものでしたから、行く人もそうでない人も、ステルス要素なんて無いダイレクトマーケティングでした。

一方、雲行きが少し怪しくなってくるのが2000年代。ネットの登場、携帯の普及に伴い、メールを活用したホールイベントが過熱していきますが、それと同時にガセイベントも乱発され始めます。

そして、芸能人を呼ぶ来店系イベントがある一方、ライターが手掛けるイベントも登場し始めます。

しかし、潮目が変わったのは2011年。東日本大震災が大きな分岐点でした。

その頃のぱちんこ業界は決して順風満帆な状況とは言えず、パチンコは5回リミッターの暗黒時代を脱し、ゼロヨン基準機はやり過ぎとなりつつ初代牙狼などギャンブル性の高い台で客離れを食い止めている状況。

パチスロは4号機から5号機に完全移行した後、初代エウレカや新鬼武者の登場でようやく光が見えてきた。そんな中起きた未曽有の大災害の直後、世間のあらゆる業種が自主規制を行う中で、一部の心ないホールが身勝手な広告を繰り広げたことからぱちんこ業界が思いっきり悪目立ちし、世間の大バッシングが巻き起こりました。

そして、お上が激怒した結果、ホール主体のダイレクトマーケティングが出来なくなりました。

メーカーの機種CMも、2011年の東日本大震災以降自粛するようになり、そこから10年間、自主規制としてCMを打ちませんでした。

この10年の間に跋扈したのがステマです。

ダイレクトな広告を打てなくなったホールは、ライター人気に目をつけ、各々の得意機種=オススメを暗に示唆するようになり、ライターが来店マンとなっていきました。

そんなライターバブルをヨシとしない、真っ当なやり方を貫く人もいましたが、そういう人ほど仕事が無くなっていく時代の到来です。

それでも当初は、来店・実戦の様子を映像として伝える手段はスカパーなどの有料チャンネルに限られていましたが、ツイッターが生まれ、YouTubeが生まれ、発信力を持つ媒体が雑誌からネットへと変わっていく中、確たるバックボーンが無くとも、業界知識が無くとも、発信力さえあればいい、利用価値があればいい、とばかりにメーカーもホールもそれら新興メディアを刹那的に利用するようになり、グッチャグチャになったのが今です。

10数年という短い間ではありますが、日進月歩のネットの世界に業界全体が後手後手を踏み、右往左往してきた結果、晒し屋のような人々も生まれました。

 

10月から始まったステマ規制は、そもそもぱちんこ業界とは関係なく、アフィリエイト広告に代表されるネット汚染と、歪んだ情報伝達の在り方を正そうとする動きです。

一方、ぱちんこ業界の広告を受け取るユーザーに目を移せば、ステマ規制が入って「#PR」をつけようがつけまいが、今現在それらのネット広告を熱心にチェックしているのは情報強者の部類であって、そんな事はハナから分かって見ているし、おちんぽ騎士団的な意味合いで情報が欲しいだけの層なので、本来パチンコ業界が一番大切にしなければならない「ほどよく遊び、ほどよく負けてくれる」裾野の人々にはほとんど関係のない話です。

ですので、ステマ規制でぱちんこ業界が変わるとは言え、それをもって遊技人口が減る事も、まして増える事もないでしょう。

勝ちを求めて動く遊牧民層にとっては、これからも必ず現れるであろう、法律の抜け穴をつく新たな情報提供者を探すだけです。そして、どれだけ広告を適正化したところで根本たる遊技環境が伴わないものに人はついていきません。

それは、90年代以降、どんな広告を打っても右肩下がりにしかならなかった遊技人口とホール数が全てを物語っている気がします。

ステマ規制を契機に、晒し屋と呼ばれた人々は一旦姿を消すでしょうが、彼らがどんな負の影響をもたらしたのか。それを顧みることなくこれからも突き進むであろうぱちんこ業界の広告業界は、きっとこれからもカオスです。

そして、そんな景色も業界の一つの歴史として、今後も生暖かい目で遠巻きに見続けたいと思います。


■万回転 プロフィール

  • 1978年生まれ ♂ 
  • 累計15年間パチプロしちゃってごめんなさい
  • CR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上した事を機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。
  • 現在は悠遊道動画チャンネルの何でも屋

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