エブリ県民、カミングアウト~!みのもんた勇退のニュース。一時期、ふと何の気なしにテレビをつけると、いつもケンミンショーに当たるという変なタイミングがあった。

「カミングアウト」という言葉が使われ出したのはいつ頃だったろうか。結構な重みをはらんだヨコモジだと思う。

破天荒な勝新太郎を支え続けた中村玉緒が「パチンコしますねん」と言った時に、当時の私はパチンコを知らなかったせいもあり、ちょっとした衝撃を受けたものだった。いうなら「梨園のお嬢様」とのミスマッチ感、ようするにパチンコ「なんか」に近い気持ちがどこかにあったのではないかと思う。

金は天下の回りもの。デカイ買い物をすると勝てるというマイオカルトがあると書いた。

見積もりより高い網戸が届き、久しぶりに窓を全開に出来た朝だった。期待でふくらむ胸に、少しばかりの贅沢をとグリーン券を乗っけて、ほぼ2県先に向かった。新調した補聴器を受け取りに行く旅だ。

左耳にかけているが、何度、調整しても人の声がシャカシャカとしか聞こえなくなった。右にもかけるのはどうだろうと相談するも、医者も店も「無駄だ」と言う。えっ?あんだって?聞こえないよ。映画レビューの中で人は仕方なく何かをあきらめていくと書いておきながら、あきらめの悪さで定評のある私。なんせ走り出したら、言うこと聞きゃしねぇから。

探しに探した新しい私の耳はデュアルスタンバイ。等価でなら125,000玉の買い物。二番目のグレードである。最上位にしなかったのは、もしもこれがだめでも「まだ上がある」と思いたいからだ。

あきらめたくないのには理由がある。

人の集まりに行けなかったのは人見知りのせいもあるが、「変な空気にしてしまう」のが怖かったから。マイホで知り合いを作らない理由もしがらみだけではない。聞こえというのは複雑で、大きければいいというものではない。イヤな記憶ばかりが頭をめぐる。特に女性の声はほぼ聞こえない域にあり、会いたい女性が沢山いるのに、行動を起こせなかった。この時のコーキーさんの話もよく聞き取れなかった。ポロリさんのツイキャスやチェロスさんのカラオケキャスも。ペーソス(末井さんのバンド)のライブでも歌詞やMCはわからない。忘年会会議でも、離れた人は唇が読めなかった。聞こえていないのに悔しいのにニコニコ。絵に描いたようなワラゴマ(笑って誤魔化す)。ごめんなさいそれって失礼じゃないかとやっぱり思うごめんなさい。ではなぜ行くのか。

All That Jazz

ホステスをしていた若い頃、ジャズを聴きに行こうとお客さんに誘われたことがあった。大人の雰囲気に対してガサツな自分が恥ずかしかったこともあり「ジャズはわからないから」と断る。その時に彼がこう言った。まっちゃん、

 ジャズは、感じるものだ。

そう。私は感じたかった。パチンコやスロットを楽しむこと、人いきれ、大好きな栄華さんや悠遊道の皆さんと同じ空気が吸いたかった。安田プロはじめ、プロフェッショナルが持つ何かに触れてみたい。そして、会いたいなと言ってくれた人の手を取りたかった。

大枚はたいた新しい耳で、テレビ電話をかけた。人生の指南役。代わる代わるやってくる猫たちに笑い、問いかけに初めて「返事をする」私を見て、目頭を押さえていた。私は泣かず、互いに年を取ったことをぼんやりと感じ、笑顔に終始した。誰しも等しく年を取っていく。改善されたが完璧には遠い耳。本当の本当にあきらめねばならぬ時はいつか来るだろう。でも必ず道はあるとあがき続けよう。そして今までは泣いてばかりいた私を、こんなタフな奴にしてくれたものについて考えた。

かろうじて生きていた右がダメになったのは、2015年であった。心は体とつながっている。絶望という名の暗闇に射し込んだものは、それまで「なんか」と思っていた(かもしれない)パチンコであった。思えばパチンコは罪深い反面、懐も深い。どんな人間も受け止めてくれるではないか。打たなくても追い出されない人がマイホにもいる。欲望うずまくギンギラな場所は、誰かをひっそりと慰めているかも知れない。私がそうであったように。

聞こえないんですと、数年前まで言えなかった。私はパーのくせにプライドが高い。歯医者で「きょうわーおくのはおー」とやられると、頭にきたものだ。今は笑顔で頷く。笑顔?そうだ、子どもの頃から表情が乏しく、いつもブンむくれていたんだ。パチンコに出会ってから、本当によく笑うようになったんだ。

パチンコでつながった縁が、人たちが、私の心を開き、勇気をもたらしていく。冒頭のTwitterで、「事情はわからんが、いいことあるんだな」と察したフォロワーさんから明るい呼びかけが続いた。コミュニケーションはわかろうとする心から生まれると改めて知る。もう二度と、インフルエンサーをうらやましいだなんて言わない。私のために涙を流す人がおり、まっきゃんといっぱい話したいからとスケッチブックを用意すると書いた人がいる。厳しく辛い中にあっても、明るく応援してくれる人がいる。それは今は小さなコミュニティ。帰還するアムロの名言を使わせてもらおう。

こんなにうれしいことはない

すべてに希望あれ。礼を尽くさねば。いつの日か悠遊道のイベントがあったとして、みのもんたばりに「いいですかお嬢さんがた」とやってのけたいと考えている。それって礼になるのけ。

私の体はワンオフパーツか

デカイ買い物をしてどうなったか?えーと2月はね。今、こんなだよ☆

え・げ・つ・な~

マイオカルトがガラガラと音を立てて崩れていく。ゼロゼロナインで負けてる場合じゃナインだった。「俺の体はワンオフパーツだ」が頻発するとよくないというマイオカルトもある。だのになんでつぎ込んだし。

……さてと。

125,000玉かー。どこまで攻められるかなー。えっ?追いつくつもりなのかって?そんなの無理だって?

ごめん、聞こえないよ!


まっきゃん@木曜日担当ライター

・初パチンコ:2015年(47才春)
・本業:映画ライター

・猫とプロレスを愛する東京の大阪人
・クセ強め
・代表?コラム

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