ドラえもんのひみつ道具の総数は「不明」だそうだ。理由は「未だに新作が作られているから」で、一応今までの漫画・アニメ・映画・ゲームなどの作品全部に登場した(公式の)ひみつ道具をカウントすると、だいたい2,000個くらいになるらしい。

筆者今はそうでもないけど、子供の頃はよく藤子不二雄作品を読んだり観たりしていた。当然ドラえもんも大好きだった。というか「ドラえもんが嫌い」という人には会ったことがない。国民的なキャラクターだ。実在する人を含めて全てのキャラクターやら人物を平たくして世代共通の知名度の統計を取ったら、ドラえもんがトップになる可能性も十分あると思う。

だもので、ドラえもんは古今東西の、あらゆる妄想のネタにされる。

これはもう統計を取るのは不可能だけど、日本人が一時期もっともよく妄想してたのは「もし自分が笑っていいとも!に呼ばれたら」というシチュエーションだと思う。筆者も授業中に100回くらいはその妄想した。あとは「ギターがめっちゃ上手くなって知らんバンドのライブに飛び入り参戦し人気をかっさらう」というもの。これも妄想頻出度は高い。あと「テロリストに学校が占拠されたのを単独で助ける」という妄想もポイント高い。んで上記の3つの妄想は、同年代の男性はほぼ間違いなく3つともしたことあると思う。

で、同年代に限らず日本人全体の最大公約数としては、「ドラえもんのひみつ道具を一つだけ使えたら」という妄想が、わりと最頻出なんじゃねぇかと個人的には思ってる。

筆者もこれ何回も妄想してるけど、何回考えても「タイムマシン」という結論に達する。「タイム風呂敷」の方じゃなくて、机の方である。ぐにゃーんとした空間を進んで時間遡行したり戻ってきたりするやつだ。これが最強だし、使えるなら一回でいいから使いたい。

なんでそう思うかと言うと、未来を知る、あるいは過去を変えるというのはあらゆる問題をなかったことにしたり、また解決したりするのに一番簡単な方法だからだ。例えば筆者はずっと「貧乏」という強敵と戦っているけど、これだってタイムマシンを一回使うだけで簡単に解決できる。万馬券の番号を覚えといて、過去に戻って購入資金と一緒にそれを(本人に会わないように)渡せばいいだけだからだ。あるいは13年前に戻って「ビットコイン買え」っていうだけで、こっちに戻ったらタワマンである。楽勝パンチだ。

お金以外に於いてもそうである。なにか人生において大変な失敗の経験がある人や、ものすごい後悔を抱える人。タイムマシンが全部解決してくれる。戻って失敗の種を取り除くか、あるいはどうにかしてアドバイスすればいいだけである。抜き差しならん理由で惜別を迎えたサムバディにも、タイムマシンを利用すれば会える。ばあちゃんの手料理ももう一回食えるし、初恋のあの子を、遠くからもう一度だけ見ることができる。

問題解決における「汎用性」という意味ではタイムマシンはホントに最強だ。もちろんもっとミクロな問題に関してはそれに特化したひみつ道具のほうが有効な場合もあるだろう。けど、その「問題」そのものをなかったことにできるというのがタイムマシンのエグいところだ。

たとえばこういう事である。

あなたは朝起きてパチンコ屋へ向かうとする。タケコプターで行くので渋滞や電車遅延も気にしないでいい。到着したホールでは朝の抽選がすでに始まっていた。全然問題ない。良い番号を引いた人を「命令銃」で撃ち、入場券を強奪すればいいからだ。さあ入場時間。店の中に入って目的の台を確保する。所がどっこいその台は設定1だった。これも全く問題がない。「アヤカリン」を飲んで店内で一番出てる人の肩に触れれば、あなたの台も設定に関係なくめっちゃ出るはずだ。ついでに「ツキの月」も飲んどけば万枚も見えてくるだろう。店員さんにゴトを疑われた? 大丈夫。「命令銃」で黙らせよう。

夕刻だ。あなたの台は信じられない豪運ですでに2万枚くらい出てる。不思議な力で有利区間もぶち抜き、まだメダルは出続けているとしよう。もちろん交換は断られるだろうが、そこはもう「命令銃」の乱射でいい。面倒だったら「イイナリキャップ」で全員洗脳するのも良いかもしれない。あるいは「桃太郎印のきびだんご」を有効活用する手もある。とにかく交換は問題ない。あなたはポケットに大量のキャッシュを詰め込んで店を後にする。

翌日はもう面倒になって、店についた途端「バイバイン」を使ってメダルを増やす。その結果どこか遠い宇宙空間で無限にメダルが増える事になるのだがそんなのはもう放っといていい。翌日は「通り抜けフープ」と「透明マント」のあわせ技で直接景品を強奪。その翌日は「ソノウソホント」を利用してもはや家から一歩も出ぬまま大爆裂した事にしよう。その翌日は、その翌日は、その翌日は……。

これをずっと続けた結果、何が起きるかというと「世界が滅ぶ」という抜き差しならん状況が起きる。

いわゆる「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じで、どこかの店でガッツリ抜いた分は巡り巡ってホール数の減少、メーカーの売上減少を招き、本来ならば出るはずだった面白い機種がでなくなる、という状況を招く。たった一人がホールから抜きまくった程度でそんな影響あるかい! と思うかもしれんが、実際ドラえもんの秘密道具を全部使える状況になったら筆者はすぐにブレーキがぶっ壊れ、ジェフ・ベゾスを超える資産家を目指すと思う。そして、そうならない人は少ないだろう。

どんどん衰退していくパチ産業。そしてあなたに富が集中しまくる事で暴落する日本円の価値。ハイパーインフレにより停止する経済。各地で暴動が起き、その鎮圧のために半狂乱で命令銃を乱射するあなた。げに恐ろしき、ディストピアである。

デデンデンデデンッ(ターミネーターのあれ)

が、大丈夫。そう、タイムマシンだ! タイムマシンをうまく利用して全部リセットしてしまえばいい。「全部なかったことにできる」という意味で、これは全てのひみつ道具の完全上位互換といえるのだ! 厳密に言うとパラドックスの問題が絡むので完全にやり直すことはできないのだけど、ただ過去をイジって未来を改変するというのは、これはもう「やりなおし」と結果的には変わらない。最強である。ビバ、タイムマシン! ドラえもんにさちあれ……!

……みたいな妄想をよくする。

んで何の話かというと、あの世界にパチ屋さんがあったら、のび太は確実にパチプロになってると思う。あの性格でパチにハマらないわけがない。そして世界はディストピアになるわけで、結果的に後の世にセワシくんがドラえもんを送り込む事もない。要するにのび太の元にドラえもんが来たという、その事実をもって、あの世界に「パチンコは無い」という証明になると思う。パチ屋がないからドラえもんがおり、ドラえもんがおるからパチ屋がない。この論理が成立するわけだ。

のび太って公式設定で「ツイてない」みたいなのがあったと思うんだけど、パチ屋がない世界に産まれた時点で、もしかしたらだいぶツイてるのかもしれぬ。