秋―。

気温も落ち着き過ごしやすく、湿度が下がり空気が澄むことで夜空の星や月も良く見えるようになり、更には食、行楽、読書、運動や芸術を楽しめる季節となっている。

その反面、何故だか妙に寂しさを感じたり、感傷的になってしまう季節でもあり・・・。

無粋な事を言ってしまうと、『日照時間が短くなる事で気持ちを安定させる神経伝達物質(セロトニン)が減少傾向になる事が寂しさの原因である。』とも言われていますが、本当にそれだけの事なのだろうか・・・?

あくまでそれは『トリガー』でしかなく、不安定さに引っ張られるように各々が持つ『寂しい出来事の記憶』を不意に呼び起こす。という感じなのかな・・・と、個人的には想像しています。

・・・と、第一日曜担当のワタクシことK.S.Yukiの毎月のお勤めでもあるテーマ発表に繋がるようなリード文を添えましたが、既に佐々木師匠の記事が公開されていますし、サイトのトップにもテーマは出ているんですけどねw

それはさておき、今月のテーマは秋の夜長にピッタリな感じの・・・

ぱちんこ(パチスロ)の切ないおもひで

となります。

ひと言に【切ない】と言っても、その語の意味するところは多種多様。

無論、私の中にも遊技と関連する切ないエピソードがいくつかあります。

そのエピソードが一体どんな系統の【切ない】であるかは、↓の広告の後に綴ります。

幾度となく書いた記憶もありますが、自身が遊技に興味を持ったきっかけは、4号機のパチスロ機である初代北斗の拳(Sammy)。

勿論、最初は目押しも覚束ない感じではありましたが、ゲームセンターに設置されているパチスロ機やPlayStation2でリリースされていたシミュレーターソフトなんかで目押しのコツを掴むまで、ただひたすらに練習を重ねることに。

その甲斐あってか、気付けば日々仕事後に足繁くホールへと通う状態となっていました。

ただ、目押しが出来るようになったとは言え、中身はまだまだ初心者全開。

ゆえに、足繁く通いだした割には『立ち回り』なんて言葉は頭の片隅にもなく、ただただ『2チェ引け!』『当れ!』『BB伸びろ!』というパワープレイと言う事すらも烏滸がましいような実戦が続いていたワケですが、それでも収支的に火傷する事もないどころかプラスを積んでいたのは幸運なのか悪運なのか・・・w

それはさて置き。

自身の主戦場=当時のマイホで北斗と対峙する時間を重ね、やがて立ち回りを意識し始めるようになった頃、自然と『自身が打っている台』だけでなく『周囲の台・客層』なんかも見える余裕が生じてきました。

そんなある日のこと。

たまたま隣の席に居合わせた【還暦を過ぎたかどうかくらいであろう女性】が打つ台にバトルボーナス確定告知が出るや否や、不意に私の方を向いて『ボーナス図柄の目押しをして欲しい。』と頼んできまして・・・。

ホールではそう言うことも起こり得るとは知っていたものの、当時のホールはまだ店員による目押しサービスが許容されていたワケですし、まして別段目押し自慢なワケでもない私に白羽の矢を立ててくる理由も判らず。

とはいえ、特にふてぶてしい態度で頼まれたワケでもなく、むしろ人当たりがいい感じであり、自身もボーナス図柄の目押しくらいはスキル面でも問題なく、結果、『断る理由は特にないな・・・。』と判断し、応じる事に。

で、幸いにしてこの時の目押しは一発成功。一応『失敗したら、その分のメダルは補填しますので・・・』と保険をかけていましたが、杞憂に終わったのは内緒です(苦笑)。

そんな感じで、妙な緊張感とモヤモヤ感はあったものの、初めての『他者の台の目押し』は無事終了。

暫くして、その方がお礼に。と、缶珈琲を買ってきてくれましたので、それを受け取りつつ、『本当に隣の人から目押しをお願いされたり、お礼に珈琲くれたりする事ってあるんだ・・・』と思っていました。

しかし、その翌日・翌々日の仕事後も、同じ店で北斗を打っていると、別段隣に居合わせたワケでもないその方が私のところに来ては目押しを頼んでくる事に。

まぁ、快く対応したがゆえに『この人なら対応してもらえる』と言う実績・前例を作ったのは、他ならぬ自分ですので、そこは致し方なし。

その方は前々からマイホの常連とのことらしく、私を『いつも北斗のシマに居る人』とも認識しているワケですので、その辺も都合が良かったんでしょうね。

目押しを頼んでくるタイミングとお礼の珈琲を貰う以外は特段の接点も会話も無かったのですが、あるタイミングでその方がポロっと『何度もごめんね~、いつも息子が一緒だから目押しさせているんだけど、怪我で入院しちゃっててねぇ・・・』と。

それを聞いて、ストンと腑に落ちたといいますか、合点がいった次第です。

その後も、高頻度で北斗のシマでその方を見かける事も多く、互いに気付けば軽く会釈を交わす間柄となり、やがてその方の隣に息子さんと思しき『やや厳つい兄ちゃん』が居る事も増え、結果として私と息子さんも相互に存在を認識する事に。

お互いに名前も知らないですし、それ以上の交流も必要以上の会話も存在しないような関係ですが、なんとなく『スロ友・常連仲間』が出来たような感でした。

時が流れ、初代北斗のシマがすっかり北斗の拳S.E.に置き換わっても、その関係性は変わらないまま。

息子さんが別な台を打っていたりパチフロアに居たりする場合は、私が目押しをするのが当たり前となっていました。

とはいえ、交わす言葉は必要最低限のまま。

たまに息子さんの方から『また勝ってるねぇ~』『めちゃくちゃ出てるじゃん』のように、軽いノリで言葉をかけられたりする事もありましたが、基本は会釈だったり、軽く手を挙げて『ヨッ!』と、雑に挨拶される程度でした。

ちなみに、地元のホールで顔を合わせる=生活圏も近いワケでして、極めて稀ではあるもののコンビニやスーパーでバッタリ会うなんて事もありましたが、やはり『ホール以外の場所』で会うとギクシャクするというか、何ともいえぬ違和感や妙な気恥ずかしさがあったなぁ・・・と(苦笑)。

それもあってか、ホール内外問わずに『互いに踏み込み過ぎない』のような不文律が自然と出来ていたのでしょうね。

更に時は流れ、みなし機を含めた4号機以前の機種の完全撤去が行われた、5号機への移行が完了した頃のこと。

少し仕事でややこしい案件が重なったり、併せてバンド活動やサポートでのライヴ出演本数も増えていたがゆえに自由時間も減り、更には4号機の北斗・北斗S.E.のように熱中できる機種が未だ見つけられていなかったからか、プレイヤーではあり続けていたもののホールへ足を運ぶ頻度が少し減っていました。

たまにホールに行っても、前述の親子をパチフロアで見かけつつ自身はスロフロアに。という感じで、徐々に薄れていく接点。

元々から希薄な関係ではあったものの、何となく寂しさを感じてはいました。

そして、5号機時代も2年くらい経った頃の事でしょうか。

残業を終えて地元に戻り、割と夜遅くまで営業しているスーパーに立ち寄った際に、遠目ではありますが暫くぶりに例の親子の姿を見かけました。

ただ、遠目でも判る違和感。

4号機時代は別段足腰もシャンとしていたハズが、シルバーカー・・・所謂『手押し車』を使われていました。

まぁ、年齢は知らないものの、第一印象が『還暦過ぎ』であり、私と世代も近いであろう息子が居るならば、そのくらいの年齢でも何ら不思議は無いワケで。

・・・と、そう頭では理解しているものの、やはり何とも言葉に表せない変な感覚が去来しますね。

そんな風に複雑な心境を抱えて立ち尽くしている間に、向こうもこちらに気付いたものの、お互い会釈をするに留まり、特にそれ以上の何かはありませんでした。というか、『体調どうされたんですか?』『お加減大丈夫ですか?』なんて踏み込んで聞いて良いような間柄だとは思っていませんので、そうするのが最適解であると判断しましたし、間違いである事はないでしょう。

と、その時はそう思っていました・・・。

その後、私自身もマイホ以外のホールで打つ機会が増えたり、また、マイホ自体がクローズした事もあり、あの親子をホールで見かける事は全く無くなり、やがて記憶からも薄れていくのが自然の摂理。

現に、5号機でリリースされた北斗シリーズの名を冠する機種を実戦したとて、別段あの親子の事を思い出す事はありませんでしたからね。

ところが、6号機が少しずつホールに並び始めた頃。

地元のスポーツ用品店に行った際に、何となく見覚えのある体格の良い兄ちゃんとすれ違いました。

数歩進んでから振り返ると、見覚えがあったのはこちらだけではなく向こうも同じだったようで、先に振り返ってこちらを見ており、視線が合う。

そうなると、お互いの『もしかして・・・?』は確信に変わり、忘れていた記憶が一気に甦ってくるワケでして。

ただ、別に駆け寄って再会を懐かしむような間柄ではないので、こちらは以前と変わらず会釈をするに留めておきました。

向こうからも会釈やハンドサイン的な挨拶が返ってくると思っていたのですが、かつての軽さ・チャラさを一切感じさせぬ感じで、礼儀正しく背筋を伸ばして深々と頭を下げてきまして。

そこで、ハッとその『礼』の意味に気付きました。

親子で行動していないのは、『スポーツ洋品店だから』という理由でも、『たまたま今日は一人』というワケでもなく、『そう言うこと』なんだな・・・と。

それを察するや否や、こちらも改めてキチンと一礼し、互いに言葉を交わすこともないままその場を後にしたのでした・・・。


名前も素性も知らない、ただホールで顔を合わせるという接点があっただけの方とはいえ、やはりこう言った状況に直面すると何とも言えませんね・・・。

自身に何か影響があるかと言えば全く無いハズなのに、人の感情というのはつくづく不思議なものです。

ちなみに、当初はもうちょい笑える系の切ないエピソードや、色恋絡みの切ないエピソードにするかと悩んでいたのですが、執筆時点が10月末あたりだったからか、少々重たいこのエピソードで綴らせていただいた次第です。

と言ったところで、当方の11月テーマコラムを〆させていただきます。

(K.S.Yuki)