「なぁ、どうやったらパチンコ勝てる?」
とある日、実家に用事があり夕飯を頂きつつ久々に酒を酌み交わしていたところ、ほどよく酔いの回った親父から突然こんな一言が発せられた。
ボクの両親は、古くからのパチンコファンだ。
公務員で共働きという事もあり、昭和の一億総中流を地で行くような家庭であったが、週に1~2回、3~4時間程度の趣味として長年パチンコを楽しんできた。
ボクが初めにパチプロ生活をすると言った時には灰皿を投げつけんばかりの勢いで怒られたものだが、良くも悪くも口を出さない主義の二人なので、これまでボクは自由にやってきた。
ボクがプロ生活を始めてから、ごく稀に一緒に打ちに行く機会もあった。
両親の打ち方を見て
「〇〇は釘がいいから」
とか
「その台はこうやって打たないと」
などと口を出した事は一度も無い。
趣味の範囲で自由に楽しんでいる両親にそんな無粋な言葉を投げかける無意味さは理解していたし、それでいいと思っていた。
そんな中、突然発せられた冒頭の言葉。
よくよく聞いてみると
「最近、とにかく取らせてもらえない」
「お金が減るスピードが早い」
「派手なばっかりで結局最後にハズれる」
「319でやっと当てて4R単発とかさ。4Rはやめようよ4Rは(切実に)」
いや、4Rの件はボクに言われても困るのだが、なるほど、ごくごく一般的なパチンコファンが離れていくよくある理由のオンパレード。最近、ついに実感してきたらしい。
で、何を打ってるの??と聞くと
「特に機種を決めているわけではないけど、データランプ見て何回ハマってるからそろそろ来るかなー、とか……」
という谷村先生大勝利なトンデモ理論が飛び出してきた。
こういったシチュエーション、パチプロにはありがちだ。
友人知人問わず、少しパチンコをやっている人からすると「どうやったら勝てるの?」なんて言葉は、ボクらのようなパチプロに対する挨拶みたいなもんで、その多くは本気で勝つ方法を教えてもらいたいなどとは思っていない。
若い頃はそれこそイチから説明したりしたものだが、相手がそういう感じなんだと分かってきてからは、こちらも適当に受け答えする事がほとんどだ。
しかし、これまでパチンコの事をボクに聞くなど考えられなかった実の両親からの言葉という事で、結構真剣に説明した。
パチンコの抽選方式の根本部分から、データランプの意味の無さ、サイコロを例に回転率と出玉の関係性、長年両親が通っているお店の調整の酷さ等々。
ぶっちゃけ負けるべくして負けてるんだから、しゃーないんよ、と。
あまり納得感は無かったようだが……。
そもそも、両親がここまでパチンコを続けていたのは、単純に遊べていたから、というのが大きい。
たまたま近くに優良店だった(過去形)お店があり、低交換時代はお金をあまり使いたくないという理由で再プレイで遊ぶような人たちだったから、知らず知らずとボーダーに近い環境で打てていた。
とは言え、勝っていたかといえばそうでもなく、換金よりも貯玉を貯めて、かなり割高なカニやら明太子やらを嬉しそうに景品交換してきたような人たちだ。
お店にとってもいいお客さんだったと思う。
だが、そのお店が等価となり、回らなくなり、出玉削りが当たり前となり、更には昨今の業界不況でどんどん調整が悪化していったのをボクはパチプロという立場から見続けていた。
常々「〇〇はもう行かない方がいいよ」程度の事は言っていたが、愛着もあるのだろう、両親の腰は重かった。
お金を使いたくないなら低貸しもあるが、正直4円より調整が悪い1パチを勧めるのも憚られる。
何より「1円パチンコなんてみっともなくて打てない」という、ボクら氷河期世代には理解しがたい価値観を持つ両親に、低貸しという選択肢はあり得ない。
最終的にはとにかく店を変えなさい、と行ける範囲の中で最もお金を使わずに済むであろう低換金・再プレイありのお店を勧めたが、果たしてそこへ行くかどうか。
還暦をとうに過ぎ、生活パターン・行動パターンが決まっている人らからすると、お店を変えるというだけでもかなりハードルが高い。
その時点で面倒になって、「だったら辞めるか!」なんて言葉も飛び出した。
学生時代、10数人はボクとともにパチンコを打ちに行く同級生がいたが、今も日常的にホールへ足を運ぶのは1人しかいない。
そして、40年来のパチンコファンが今離れようとしている。
それはなんだか、パチンコとの繋がりが消える死に目を目の当たりにしたような気分だった。
先月、ボクの両親にパチンコを教えた大叔母が鬼籍に入った。
両親とてそう遠い話では無い。
大叔母から両親へ、両親からボクへと伝えられてきたパチンコという遊びだが、ボクは同世代・下の世代へ「一緒に行こう」とはとても言えなくなっている。
これらはボクの身近なごくごく狭い範囲の話だが、この流れが全国で起きているからこそユーザー人口の激減という結果に繋がったのだと実感する。
そうして人が去り、業界が縮小していくのが避けられない流れである事は十分理解しつつも、まだまだホールへ行くのが好きな人間としては、やはり寂しい。
射幸性の抑制も大事な事だが、業界全体の高利益・高売上体質が続く限り、この業界に未来は無い。
6年前に他界した私の父もパチンコ好きな地方公務員でした。下手の横好きというか何というか、大勝ちしたらすぐに家電を買いたがる人で、実家にはテレビが5台とDVDが4台と、それに冷蔵庫が3台も並んでました。父と母と妹と、3人しか住んでいない家なのに(笑)。
「物に変えておけば失うことがない」というのが父の持論でしたが、次に打ちに行くと大抵は大負けしちゃうんで、結局はお金が減る一方。それでも、本人が納得しているならいいか…って感じで、私は一切口を挟んだり意見はしませんでしたが、亡くなる2年くらい前に「最近のパチンコはまるで勝たせてくれないから打つのが馬鹿馬鹿しい」と言って、すっぱりとヤメたんですよ。おそらく、退職金の半分くらいはパチンコ店に貢いでいた父。そんな父のことを、今回の万回転さんのブログを読んで、不意に思い出しました。ただそれだけの話なんですけどね、ええ。
長文、失礼いたしました。
うちの父も広石さんと同世代でしたね、同じくもういませんが。
あまりにも負けるので、カツオ漁師を引退後は母にパチンコを禁止されていました。
私はもっともっと前に「相撲の台だけはやめといてくれ!」と言ったことがありました。
地獄モードがある綱取物語です。
その頃はまだ息抜きに許されていた時代でしたね。
今は還元率が低くなりすぎて、それも遠い昔。高換金はたしかにパチンコを遊べなくした原因の一つだと思います。