4月21日 日曜日 曇り

 朝起きて支度を済ませて8時に家を出る。会社勤めの皆様ならば、毎日のように繰り返されるただのヒトコマなのだが、あいにくボクはフリーランスで在宅の仕事が多い。その為、ボクが朝からいなくなるというのは、まだ幼いチビにとっては”普通ではない”出来事になる。この日の朝は随分とグズった。

「パパ!行かないで!」

 号泣されるのは嬉しいような悲しいような。それでも時間は待ってくれないので強引に出ていくしかないのだが、エレベーターに乗っていても聞こえる激しい泣き声を聞きながら、いつまでこんな風にパパを必要としてくれるのかなぁ、と得も言われぬ気持ちのまま電車に飛び乗った。

 この日の仕事は、2ヵ月に1度の恒例となっている「安田一彦パチプロ37年史」の収録だった。撮影自体はお昼過ぎに終わる。チビの顔が恋しいならば、そのまま家に帰れば良いだけの話なのだが、帰宅する午後2時・3時というのはお昼寝の時間であり、大概は妻が外に連れ出している。その為、帰ったところで夜の風呂・メシ・寝かしつけルーティンに突入するまで、自分は特にやることがない。かと言って別の仕事を進めるには実に中途半端な時間しかない。ならばと思い立ったのが、収録後に安田さんと麻雀をする事だった。

 田山さんがお亡くなりになられたのは54歳。池上さんや飛鳥さんはもっと若い40代で亡くなられた。還暦を過ぎた安田さんはまだまだお元気とは言え、自分も含めいつまで健康でいられるかなど誰にも分からない。だからこそ、恩人との時間をもっと持ちたかった。半分仕事、半分遊び。こんな形にでもしないと、家から離れて自由に過ごす時間がほぼ無い中では、自分自身がまず明るく元気に過ごす為、そんな一日が欲しかった。

 それでも、ああやって玄関で泣かれると、後ろ髪を引かれる思いになるのは仕方がない事だろう。アレもコレも全部欲しいというのは、やはり無理な話。世の中がいくら変わっても、結局のところ男は外で仕事をするのが人生のメインであるし、少なくとも我が家はそうなのだ。

AM 09:00 八王子駅着

 八王子駅周辺はどことなく町田と似ている。大きく綺麗な商業施設を中心に置きつつも、駅から少し離れると飲食店、娯楽施設、少し怪しげな風俗店等が雑多に入り混じり、更にその先に住宅街が広がっている。その雑多さの一つにぱちんこ店があったわけだが、かつては10店舗以上のホールがしのぎを削る激戦区だったこの街からも、中小店はもう数えるほどしか残っていない。ボクが一時期通っていたコスミック八王子本店も、2年前に歴史の幕を下ろした。この駅に降り立つたびに淡い寂寥を覚えるが、安田さんとの収録を続けていけば、また違う思い出が積み重なり、街の景色も違って見えるのだろう。

PM 01:00 昼食

 滞りなく撮影は終了。まずは麻雀前の腹ごしらえだ。今日は安田さんの提案で「壱発ラーメン」とする。

 ラーメンショップ系のチェーン店で、福生のゲームセンタータンポポから少し離れたところにもこのお店がある。このご時世にネギラーメンを800円で提供してくれる安さとそのクオリティは特筆もので、どうやら八王子店も人気らしい。我々が到着した時には、店外まで行列が出来ていた。その中に家族連れの姿を見つけ、再び妻子の顔が浮かぶ。チビと一緒にこういうお店に行けるまで、もうそれほど長くはないと思うが、その時にはきっと、家を出る時に泣いてくれる彼はいなくなっているんだろう。

PM 02:00 雀荘に入店

 担当A氏、S君と和気藹々の麻雀が始まった。スタート直後の東一局。起家だったボクは早々にテンパイし……たと思ったら牌が足りない。いきなりの少牌。全員久々すぎて、牌を取る山を間違えたり、山から牌をこぼすのはもはや日常茶飯事。極めつけは安田さんの誤ロンで罰符。

 もしも後ろにカメラがついていて生配信でもしてようものなら、視聴者に爆笑され、バッドを押されまくるのが容易に想像できるような、素人麻雀全開の3時間強だった。だが、そんな事よりも何よりも、そこで生まれる他愛もないコミュニケーションこそ、常に大切にしなければいけないものなのだと改めて感じた。そして、東風戦全5回の結果はこの通りと相成った。

1位 万回転
2位 安田一彦
3位 S君
4位 担当A氏

 素人麻雀の結果にさしたる意味などないけれど、まずは第一回悠遊道杯の初代王者に名乗りを上げておこう。そしていつか、昨年の夏のように、安田さんを囲みながら真の悠遊道杯を開催し、多くの方とパチ・スロ談義をしながら麻雀が出来たら楽しいだろうな。そんな事を思いつつ、安田さん、担当A氏とはここで別れた。

PM 6:00 居酒屋入店

 かつて、悠遊道サイトの立ち上げを技術者として手伝ってくれたS君は、拙著「二人のS」にも登場した元ダメプロの1人だ。そんな彼も今や妻子を持ち、一軒家を持つまでの立派な社会人になった。かつては寝食を共にし、神奈川中のパチンコ屋を駆け巡っていた戦友だったが、道が分かれた今もこうして縁が続いているのは実にありがたい。唯一腑に落ちない事があるとすれば、一回りも年下の彼の収入が、ボクより遥かに上な事だろうか。まぁ、そうして後輩が自分を追い抜いて行くことは、純粋に嬉しい気持ちもある。

 共にぱちんこの最前線からはとうに離れ、同じ幼子を持つ父親同士として、子どもと家庭の話に花が咲く。10数年という時間は、大人も子どもも大きく変わるには十分すぎる時間だが、変わらない事もあるのを思い起こさせる3時間だった。

―――――――

 外は小雨が降っていた。存分に酔っぱらったボクとS君は八王子駅で別れ、残った物は軽くなった財布とずっしりと重い背中のカバン。撮影からの帰り道は、いつも疲労感があるものだけれど、この日ばかりはそれとは違った。

 万回転家を経済面で支えられるのはボクしかいない。でも、斜陽のぱちんこに未練がましくかまけながら、自由な時間も作っている父親を、将来のチビが見たらどう思うのだろうか。そんな事ばかりやっていないで、割の良い某部長職の方をもっと頑張ってくれていたら……そんな風に思う日が来るかもしれない。でも、悠遊道という場と、そこで繋がった人々がいなければ、父の人生が彩られる事は無かった。そして、そんな”寄り道のある人生”が無駄な事ばかりではないのを、いつかチビにも知ってもらえたら。そう願いつつ、チビの安らかな寝顔と共に床に着く。

 そして、楽しい寄り道のある日常が、今週もまた始まる。

 

■4/16-22の朝活
火 7:00 寝た
水 7:00 寝た
木 5:30 朝活
金 6:30 微朝活
土 7:00 寝た
日 7:00 寝た
月 7:30 ガッツリ寝た


■万回転 プロフィール

  • 1978年生まれ ♂ 
  • 累計15年間パチプロしちゃってごめんなさい
  • CR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上した事を機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。
  • 現在は悠遊道動画チャンネルの何でも屋

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