長い間パチンコやパチスロに親しんでいると何か感動的な出会いがあったり、人間味あふれる出来事に遭遇したりと、そんなことが幾つかありましたよと言いたいところですが、実のところほとんどないんですね (事実)。無論、パチンコと関わっていたおかげで色々な人と知り合ったり、原稿を書く仕事を得たりと、いいことは数多くありましたが、ことホール内に限っては幸不幸に関することはほとんど経験してないです。

 それでも過去の記憶を遡っていくと、人の意外性に触れたいい思い出がありました。時は連チャン機全盛期、90年代半ばから後半あたりでしょうか。ホールは今はなき上野の百万弗。機種は大一のダイナマイトでした。夜に友人と会って軽く食事をして、その後、ちょっとパチンコでも打っていくかということで立ち寄ってみたわけです。時間は夜8時頃でしたか、まあもう今となってはハッキリ覚えていませんが。

 その友人も僕もダイナマイトは大好きな機種で、あの1ケタデジタルに3が出た後の期待感、そして7に繋がった時の高揚感は何とも言い難いものがあります。予告も何もないシンプルなデジタル表示というのもいいものです。友人も僕も投資はそこそこで3から無事7につながり、当時の2000発箱を3つか4つくらい重ね、軽く連チャンしては軽く呑まれを繰り返し、もう閉店まで残り1時間くらいというところでそろそろヤメるかと友人と話していたところ、確か友人の台に3が出現し、それが7につながりました。天国モード (連チャンモード) 突入です。

 この機種を打っていた人なら分かると思いますが、デジタルを1回回すのに2、3分かかることはザラで、特に通過チャッカー周りが渋い、電チューへの玉の寄りが悪いなど、まあそんな台は打たない方がいいに決まっているのですが、ボーダー+1くらいある台でも前述のようにデジタルがなかなか回らないことは良くありました。ただ単に電チューに玉が入ればいいというわけではないため、入ってからの振り分けでやたらハズレコースに直行することも少なくないからです。

 友人が打っていた台は3・7織り混ぜて順調に出玉を伸ばしていきましたが、問題は時間です。先述したようにデジタル1回回すのに下手すれば数分かかり、さらに大当りの消化にも数分かかるわけで、取りきれない可能性が出てきます。そうこうしているうちに、見ているだけでは自分も暇なので軽く打ち始めたところ、こういう時に限って3が出たりする (笑)。どうせガセだと思いきや、またまたこういう時に限って、立て続けに3が出たりする。こうなるとヤメられないわけで、半ば惰性で打ち続けたところ、あぁ自分も7が出たよ、でももう残り30分もないんじゃないの ?

 友人と隣り同士で打っていたか、数台離れて打っていたのかはもう記憶が定かではないのですが、気づいたら周囲に結構なギャラリーが観戦モードに入っていました。当時の上野はそれほどガラの悪い地域ではなかったのですが、いかんせんその店に関しては全くの新参者であり、常連客たちから怪訝そうな目つきで見られているのは、あまりいいものではありません。あぁ、早く終わってくれないかなー、でも3・7以外の目が出てももう2回くらいは回したいしなーとか、色々考えながら打っていたのですが、出玉は順調に伸びていきます。23時ちょっと前あたりで、あぁ、これはもう取りきれないなーと、友人共々思っていたら、大当りの途中で確か店員さんが来て、はいこれで終わりねと告げられました。でも、そこから意外な展開になったのです。

 周囲で見ていた強面の常連さんたちが店員に向かって、「打たせてやれよ、次も当たるだろ」とか、「兄ちゃん、やめなくていいからな」とか、そんなこんな皆でなぜかやめなくていい雰囲気を作ってくれて、もう蛍の光が鳴っているというのに、大当りが終わってまたすぐ左打ちに戻して役モノに玉をねじり込むようにして入賞させ、デジタル回転→7が出現、これを確か2回くらいやって、さすがに23時を数分過ぎたあたりで自分から席を立ちました。ちなみに友人も似たような状況でした。

 店員も別段イャな顔をすることもなく、若干苦笑いを浮かべながらドル箱10箱程度を運ぶのを手伝ってくれたことを覚えています。今では考えられない対応ですが、まあ当時はこんな感じでいい意味でも悪い意味でも店側と客との距離が近く、機械的な応対ではなく、人間的な交遊というものがあったような気がします。また、今回の件のようにちょっと強面風の常連客も実はいい人だったりとか、自分の地元の店でも似たようなことはありました。

 今現在、ホールの風景はその頃とは全く様相が異なり、清潔感溢れ、女性客も増え、コロナ禍がきっかけで台間はアクリル板で仕切られ、まあ少なくとも見知らぬ人に気軽に話したり話しかけられたり、そんなことはほとんどないでしょう。開店時間、閉店時間も厳格に守られています。それはそれでいいことです。ただ、もう少し緩やかにと言うか、少なくとも出玉面に関してはもう少し柔軟性を持って対応してもいいとは思います。閉店になっても、確変中やRUSH中であれば打たせろとか、無論そこまでは言いませんが (笑)、ひねりでの重複入賞や確変・時短中の多少の玉増やしくらいは技術介入の一環として黙認するくらいの余裕が欲しいものです。

 今後、パチンコ店は減ることはあっても大幅に増えることはまずないでしょう。我々のような、好きで打っているファンも、ギスギスした雰囲気でルールも厳しい、出玉も話にならないというようなホールでは当然足が向かなくなります。初心者では尚更でしょう。庶民の娯楽というキャッチフレーズが単なる大義名分にならないよう、色々な意味で、今後の業界の更なる努力に期待したいところです。