11月7日、PAA(ぱちんこ広告協議会)が三重県のオールナイト営業に関する通達文をホール向けに発行した。

それによると、2020-2021のオールナイト営業では、ライター・演者等の来店イベント・取材系イベントを行わないとする旨が通達されている。

尚、文書の発出はPAAだが、三重県遊協の方針でもある。オールナイト営業そのものは、現時点では開催予定との事だ。

オールナイト営業が三重県だけに許されている理由

これは「伊勢神宮の参拝客にトイレを貸す為」が通説として定着している。三重県の条例でも許可されている為、世間の風当たりがどうであろうと、オールナイト自体は適法営業だ。

ただ、今年はコロナ禍を抜きに語れない。パチンコ・パチスロのオールナイト営業は、一種のお祭り化しており、通常通り実施すれば多数のお客で賑わう事が予想され、それによる感染リスクは決して無視して良いものではない。

先日、ホールの換気性能の優秀さを示す記事・動画が話題になり、パチンコホールが特段感染リスクが高い場所では無い事は、一定程度周知されている。しかし、オールナイト営業は感染症が蔓延りやすい冬場に行われるという点は憂慮すべきで、年越し特有のお祭り気分が過ぎれば感染症対策が不十分になる事も十分考えられる。また、全国から不特定多数の人が集まる事から感染拡大リスクが高い事もあげられる。

オールナイト営業が通常よりも、対新型コロナウィルスのリスクが高い状況というのは間違いないだろう。

三重県遊協やPAAの思惑

今回のPAAの通達は、そういった懸念のもと発せられたものだ。コロナのリスクや世間からの目は当然承知している。

一方、コロナ禍で苦境に立たされているホール事業者にとって、オールナイト営業が大きな売り上げを見込める商機であるのは間違いなく、決して取り止めたくはないというのが本音だろう。

ただ、ライターイベント・取材系イベントは目につきやすく、SNS等で拡散もされやすい。都道府県警本部・所轄の判断が優先とはいえ、警察庁の建前としては広告規制が継続している中、万が一の事があれば、世間のみならず業界内からも叩かれて然るべき事態となってしまう。

営業を自粛はしたくない、ただバランスも取らなければならない。そんな思惑を表したかのような通達であったように思う。

三重県の通常の広告実態

ちなみに、三重県ではライターイベント・取材系イベントの実施・事前告知が通常は許可されている。しかし、今回の通達を受けて、PAA加盟社がイベントを打てなくなる中、非加盟社だけが一人勝ちするのではないか、といった懸念が広がった。

ただ、三重県ではかつて「広告宣伝の一切を禁じた後、PAA加盟社にのみそれを許す」という規制と緩和のステップを踏んだ過去がある。そして、PAA非加盟社のイベントは、現在そのほとんどがPAA加盟社を通して実施しているという事情がある。

その為、非加盟社であってもイベント実施は不可能なのではないか、といった見方もあるが、一方ではどの広告媒体も青息吐息で、加盟・非加盟を問わず、なりふり構わぬ形でイベントを行うのではないか、という二つの見方に分かれているのが現状だ。

PAA加盟社
例:ガイドワークス、プラントピア、辰巳出版、ZIZAI(スロパチステーション)、ジースクイール(アロウズスクリーン)、一撃、DMM、トリプルA(でちゃう)等

非加盟社
例:スクープTV、個人Youtuber等

所詮、抜け穴は多数

ご存じの通り広告規制関連は、常に抜け穴探しのイタチごっこが続いており、今回のこの通達に効果があるかと問われれば疑問だ。

例えば

・ライター・演者があくまでもプライベートと称せば誰も止められない
・当然ホールと代理店・演者は繋がっている
・昨年のプレイバックを強調する等、事前告知をしなくても来店するホールはいくらでも示唆できる
・ギャラは別の来店機会に上乗せするだけ

これで禁止されているはずの来店イベントが出来上がりだ。また、今回の通達には今流行りのアイドル店員は規制対象に含まれていない。それゆえ、

・派遣のアイドル店員を急遽デビューさせる
・有名ライターの友人であることをアピール(装う)
・それらを仕事としてSNSで拡散
・プライベートで有名ライターが遊びに行く

こんな形での実質イベント化も、理屈上は成り立つ。同義的な面はさておいて。

そもそもオールナイト営業ほど独自性の強いイベントを前に、広告を生業としている事業者・個人が参加を控える理由などない。出来る限りイベント化したい、金儲けがしたいというのは当然の成り行きで、それはホールとて同じだ。本気で規制したいならば、オールナイト営業自体を取り止める以外に方法などあるわけがないのだ。

そうして、結果的には例年通りオールナイトの動画・特集が溢れかえる2021年となるだろう。

オールナイト営業はそもそも必要なのか?

まずボク個人の話で言えば、大晦日は旧友・家族とともに「ガキ使」を観ながら年越しするのが10数年続く慣例行事だ。この時間はかけがえのない物だから、ホールへ行くという選択肢はない。

勿論、悠遊道の動画班としては「行くべき行事」であるが、家庭を省みずに強行する事になる以上、そんな事は悠遊道関係者の誰も望まないだろう。

一方、1プレイヤーとしては「ひぐらし2」でオールナイトをしてみたいという気持ちはある。年に一度、それも6/6や7/7のような射幸心全開のそれとは違い、特別なお祭りとして興味が沸くのは間違いない。

しかし、オールナイト営業が必要か否かと問われれば「必要ない」と答えるだろう。

なぜなら、ホール内で行われているのは特別な事など何もない、いつでも出来る小博打なだけだからだ。そして、24H営業のコンビニがそこかしこにある中では、トイレ開放の大義名分などとうに形骸化しているし、そこに社会的な意義も無ければ、三重県にのみ許されているこの状況もフェアとは言えないからだ。

オールナイトや広告規制に限らず、ぱちんこ業界における様々なルールは、もはや都道府県別にしている事自体が非常に時代遅れな部分がある。いつか大きな枠組みの再編と、より細部に及ぶ全国一律のルール制定が必要不可欠と思っている。その時、オールナイト営業を全国的に開放すべきか否かで言えば、全くその必要性が無いのだから、いずれは無くなってしかるべき行事なのだ。

しかし、そのような机上の空論は、現場の人間にとって何の意味も無い。三重県遊協やPAAの通達は出来うる限りの折衷案だと推測するし、様々な媒体が世間的にはマイノリティである特定の輪だけを盛り上げに行き、その結果世間から白い目で見られようとも、それは決して否定されるべきではないのだろう。

 

いずれにせよ、オールナイト営業が敢行された場合、それに関わる人々(プレイヤーも)は、これまで以上の最大限の感染症対策を講じて臨んで欲しい。それは新型コロナウィルスから自身や身近な人を守る為という近視眼的な意味だけではない。万が一クラスターが発生しようものなら、これまでの業界関係者や愛好家たちの努力が全て水泡に帰すバッシングを浴びかねないからだ。オールナイト営業は、それほど衆目を集める特別な行事であり、そこに参加するという事は、それだけの責務を負う事とイコールであることを忘れないで頂きたい。

そして、そんな広い視野を持つ事なく、オールナイト営業を利己にのみ利用する人々がいるならば、それがどのような立場の人間であろうと、業界をあげて排除して欲しいと願っている。


■万回転 プロフィール

  • 1978年生まれ ♂ 
  • 好物はアナログ機とリーチ目メインのスロ
  • パチプロ時代に当時タブーとされていたCR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上。
  • それを機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。時々業界人ぶるのが悪い癖

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